Night Sky

九十九光

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仇花すっかり舞い散る季節ー7

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「ちょっとちょっとー! 何バッタさん殺してるのー!? 遊大君こっち来てー!」

 呼びつけられた遊大に、ぐちゃぐちゃになったバッタを生き返らせるように頼む。しかし遊大は、バッタの体をもとに戻すことはできても、命を吹き返すようなことはできないと説明した。

「かわいそうなバッタさん。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。君も手合わせて」

 小麦は即興でバッタの墓を作り、バッタを殺した男の子にお参りするよう言ったが、男の子はそれを無視してどこかに行ってしまった。

「下等な昆虫の命を大事にだなんて。なんて俗世にまみれた人たちなんでしょう。お里が知れますね」

 また遠目で様子を見ていた金髪の男の子が呟いた。

「皆さん子供との触れ合いが苦手なようですね。こういうのは小難しいことは考えずに、自然なスキンシップから始めるのがいいんですよ」

 そう言って糸美は、手近にいた別の男の子を抱き抱えた。男の子はどこか恍惚とした表情で抱かれていた。

「ほら、小難しいことは一旦置いておいて、こうやって物理的な距離を縮めて」

 突然抱いている男の子が、糸美の胸を鷲掴みにする。遊大と王子が唖然とした。

「お姉さん……」

「ま、待ってください! そんな急に」

 男の子の指は、手は、動くのをやめない。

「お願いだからやめてください! 皆さんが見てます!」

 男の子は胸を揉むのをやめない。

「い、今やめれば怒らないから! お願いだからやめてくださ」

「お姉さん……」

 男の子が糸美の話を遮って、彼女の耳元に何やら囁く。その話が一通り終わると、糸美が顔を赤くした。

「あ、あなたいくつですか!? どこでそんな言葉を……! ……。ギャアァァァァァ! 男根が! 男根が大きくぅぅぅぅぅ!」

 糸美はユニゾン持ちの男の子を放り投げて、運動場の隅に逃げ出してしまった。

《別度管者(ベッド クダモノ) ユニゾン名:クルミ☆ポンチオ……性への興味関心が異常に高く、性的な成長が異常に早い。また、老化で生殖能力を失わない。DNAを接種させることで、一定時間相手を同じ状態にできる。》

「この程度のことで動揺して取り乱すだなんて。お里が知れますね」

 糸美の醜態を見て、やはり達観する金髪の男の子が呟いた。
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