Night Sky

九十九光

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僕ら 今、敬礼の合図をとり 三流映画の主役に成り下がったー3

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「……! 魂売行くぞ! どうやら地上に見えないボックスを設置するユニゾンの可能性がある!」

 雨が幽体離脱した霊子とともに、車両を飛び出して斥候を務める。雨は地面を潜れ、霊子は仮にボックスに閉じ込められても不可視になれば抜け出せる可能性があったからだ。

 こうして前に出た2人。空中を行く霊子は、ボックスに巻き込まれないよう距離を取りながら、乱闘する人々の顔を見る。その顔は今にも泣き出しそうな顔ばかりであり、皆望んで戦っていないことが目に見えて分かった。

 その時だった。

 雨が突然地上に弾き出され、霊子は見えない壁に阻まれた。

「……! 地面に潜れない!」

「土竜君! あれ!」

 霊子が指差す先には、1体のロイドがいた。学ランを着た女の姿のロイドであり、両脇には棒で繋がったビジーフォー人形が片脇に2体ずつついていた。真ん中の本体が、「サーサー密告ダ♪ 先生ニ言ッテヤロ♪」と歌うと、横の4体も同じように歌う、というか録音音声で繰り返す。

「魂売! 不可視になって抜け出せるか!」

「ダメ! どうやっても出れ」

 その時、見えない壁に5秒間だけ文字が出てきた。『殺し合え。生存者一人だけが出ることを許可する。』と。

《ロイド番号:_j0kfGNwIlw 素体名:尾歩学九(オッポ ガッキュウ) ユニゾン名:チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!……2名以上の人物を一辺5メートルの見えない立方体の中に閉じ込める。脱出するには立方体の中の生存者が一人にならなければならない。》

 2人は周囲の人々の状況を理解した。彼彼女らは自分が生き残るために、やりたくもない同士討ちをせざるを得ないのだと。そして考えた。自分たちも殺し合いをしなければ、ずっとこの場に閉じ込められる。

「卑怯者め!」

 雨が見えない壁を殴りつける。敵戦力を殺す覚悟はしてきた。だが味方を殺す覚悟はどうあってもできなかった。

「どうする魂売。とりあえず敵ロイドのユニゾンを伝えて」

 雨が霊子に目を向ける。その時雨は、衝撃的な光景を目にした。

 霊子は可視状態で自分の側頭部に、たまたまボックス内に落ちていた拳銃を突きつけていたのだ。
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