Night Sky

九十九光

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かなしみのなみにおぼれるー14

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 その間にも遊大は吐血し、血涙を流し始める。しかし遊大は右手で握った何かを放すのをやめない。

 それどころか、勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「下の毛も生え揃ってないガキになるのはお前だ……! そんな奴に死に方を選ぶ権利があると思うな……!」

 仁は遊大の言っている意味が分からなかった。

「お前、何を言って」

 そう声に出した時に仁は気づいた。自分の声が少し高くなっていることに。

「まさかお前……! 掴んだな! 僕の体の一部の灰を! それを時間逆行させて、僕を子供に戻す気だな!」

 完全に子供の声に戻った仁が叫ぶ。

「子供……? それで済むと思うな……! 受精卵のさらに前……、精子と卵子の状態まで戻してやる……!」

 赤ん坊になり、ユニゾンを使える精神でなくなった仁を遊大が取り押さえる。それでも遊大は時間逆行をやめない。

「お前がやろうとしたことは! 親の罪を子供に着せるようなものだ! そんなめちゃくちゃがまかり通ってたまるかぁ!」

 遊大がそう叫ぶ頃には、仁は服だけを残して消えてしまった。

「……。今助けます。秋晴さん」

 息も絶え絶えな遊大は、小麦に向かって歩いていく。自分も死にそうだというのに、そんなことは一切気にしていなかった。

 そして遊大は小麦に触れた。

『遊大君』

 遊大の視界が例の鳥籠の中に変わった。目の前には小麦がいる。

「……。え?」

『これで12回目の試練だよ。おめでとう。君はすべての試練に打ち勝ったんだよ』

「……。嘘だ……」

『嘘じゃない。私は死んだ。でもそれでいいの。お陰で遊大君のユニゾンは新たな可能性を引き出せたんだから』

「待って。あと10秒。あと10秒だけ」

『泣かないで。確かにあなたは大切なものをすべて失った。けどあなたはそれをすべて取り戻す力が手に入った。それを使えばまた会える』

「そんな……! そんなこと……!」
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