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僕らの革命前夜ー5
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遊大の演説は、テレビの電源を落とそうがパソコンのコンセントを抜こうが、毎朝9時に画面のあるところに必ず出てきて行われる。その内容は毎回、旧世界の悲惨さ、新世界の素晴らしさを説くものばかり。ノイローゼ気味になった雨の部屋では、スマホを含めたモニターの類いはすべて1ヶ所の物置にしまい、防音の壁で封印するということがなされた。それでも外からの放送で遊大の演説は聞こえてきた。
羨望の目で見られるのだから、食料調達をするのもつらかった。最寄りのスーパーやファーストフード店で12人分の食事を何度も頼むと、変装しようと正体がバレる。糸美は毎回買い物先を変えることで身バレを避けようとした。しかしそうすると、不気味なほど笑顔な人間を気持ち悪くなるほど見ることになる。彼女の口数は段々と減っていった。
やがて一同は家から出ない生活を選ぶようになった。朝9時になって演説が終わるまでベッドに籠り、演説が終わるとネットでソリティアをするなり仲間内でウノやトランプをして遊び、食事はすべてデリバリー。皆、新世界に来てから半月足らずでこの生活になった。
無論、こんな引きこもり生活をよしとしない者もいた。秋晴小麦だった。
ある日の早朝、グループLINEに小麦がこんな連絡をした。『今日朝8時、マンションの正面玄関に集合!』と。
「なんのつもりだ、これ」
光と糸美が自室から出てきて小麦に問いただす。
「いいから出かける準備して! その芋ジャーもお出かけ用の服に着替えて! 髪もといて! 私、既読スルーしてる男子叩き起こしに行くから!」
小麦はそう言い残して、隣の大樹が責任者の4人部屋に入った。
インターホンを1回鳴らして呼び出す。誰も出てこない。もう1回鳴らして呼び出す。やはり誰も出てこない。しびれを切らした小麦は連続でインターホンを鳴らす。
「っせえな! 1回鳴らした時点で出てこないって察しろや!」
颯天が乱暴にドアを開ける。ボサボサの頭に下はボクサーブリーフ一丁という、完全に堕ちた格好だった。
羨望の目で見られるのだから、食料調達をするのもつらかった。最寄りのスーパーやファーストフード店で12人分の食事を何度も頼むと、変装しようと正体がバレる。糸美は毎回買い物先を変えることで身バレを避けようとした。しかしそうすると、不気味なほど笑顔な人間を気持ち悪くなるほど見ることになる。彼女の口数は段々と減っていった。
やがて一同は家から出ない生活を選ぶようになった。朝9時になって演説が終わるまでベッドに籠り、演説が終わるとネットでソリティアをするなり仲間内でウノやトランプをして遊び、食事はすべてデリバリー。皆、新世界に来てから半月足らずでこの生活になった。
無論、こんな引きこもり生活をよしとしない者もいた。秋晴小麦だった。
ある日の早朝、グループLINEに小麦がこんな連絡をした。『今日朝8時、マンションの正面玄関に集合!』と。
「なんのつもりだ、これ」
光と糸美が自室から出てきて小麦に問いただす。
「いいから出かける準備して! その芋ジャーもお出かけ用の服に着替えて! 髪もといて! 私、既読スルーしてる男子叩き起こしに行くから!」
小麦はそう言い残して、隣の大樹が責任者の4人部屋に入った。
インターホンを1回鳴らして呼び出す。誰も出てこない。もう1回鳴らして呼び出す。やはり誰も出てこない。しびれを切らした小麦は連続でインターホンを鳴らす。
「っせえな! 1回鳴らした時点で出てこないって察しろや!」
颯天が乱暴にドアを開ける。ボサボサの頭に下はボクサーブリーフ一丁という、完全に堕ちた格好だった。
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