Night Sky

九十九光

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僕らの革命前夜ー10

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「いや、俺は歌はそんなに」

「何言ッテンダ。オ前、初等部デ歌ガ上手イッテ誉メラレテタジャネエカ」

 ラストバトルはハードルを上げつつタッチパネルを人陰に渡す。

「そんなに上手いのか? 聴きてえな、人陰の歌」

 王子が食いついてきた。全員の視線に根負けした人陰は、しぶしぶタッチパネルを操作する。

「ソンナ童謡ジャダメダ。モット盛リ上ガル曲ジャネエト」

 ラストバトルは人陰が選ぶ曲にダメ出しをする。こうして人陰は5分もかけてとある一曲を選んだ。T.M.Revolutionの『HOTLIMIT』だった。

 吹っ切れた人陰の歌は想像以上に上手かった。ラストバトルの下手くそな合いの手がなければ完璧だったくらいだった。

 歌い終わった人陰はその場に崩れ落ち、ウーロン茶と間違えてコーラを飲み、吐き出す。

「ミンナ! 相棒ニ拍手ヲ!」

 颯天以外の全員が拍手をした。

「この程度でこの様とは、どこまでもヘボメンタルだな」

 颯天がジンジャーエールを口に運びながらこぼす。するとラストバトルがケンカをふっかけてきた。

「ナンダソノ言イ草ハ。相棒ハ相棒ナリニ頑張ッタダロ。ソレヲバカニスル気カ? アア?」

「歌の上手さは誉めてやる。でもそこまでだ」

「ジャアテメエガ歌ッテミロヤ! 相棒ナリニノレル曲ヲヨォ!」

「誰がんな真似するか、この金魚の糞が」

「ア、分カッタゾ~。実ハオ前、歌ハ下手クソナンダナ~。天才颯天チャンデモ苦手ナコトガアルンダナ~。ソレナラ仕方ナイナ~」

 その言葉に場の空気が凍りつく。

「な、なんか注文しようか? みんなで食べられるやつ。この巨大フレンチトーストとか」

「おい、タケコプター」

 空気を変えようとした風雅を、颯天がにらみつける。

「それ、よこせ」

 タッチパネルを奪い取った颯天は、即決で一曲選んだ。AKB48の『Beginner』だった。

 人陰に勝るとも劣らずの歌唱力に、アレンジも完璧だった。何より意外な選曲に、一同は唖然としていた。これにはラストバトルも引っ込まざるを得なかった。
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