和製切り裂きジャック

九十九光

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#6-1

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#6(一人称)


 二月二十日の朝、私はリビングのソファに座って中日新聞の朝刊を目にして驚いていた。
『和製切り裂きジャック 男子中学生を手にかける』
 その日の一面にはこんな見出しが飾られていた。もし私が漫画のキャラクターだったら、「男ぉ?」という吹き出しを作っておでこにしわを寄せていただろう。
 和製切り裂きジャックは過去二回の犯行で女性を殺してきた。私はそれで、このシリアルキラーの正体は女性を殺すことに喜びを感じる男の殺人鬼だと思っていた。しかし今回の事件では過去二人の被害者とはかけ離れた特徴の人物が殺された。仮に私の推測が正しいとすると、今回の事件との矛盾が生じてしまう。一応、新聞に載っている被害者の顔写真は、丁寧に化粧してウィッグをかぶせて笑顔を浮かべれば女の子に見えなくもない、かわいい童顔だった。この特徴で、暗がりの中で女の子と勘違いして殺した可能性もあったが、仮にそうだとしてもおかしな点が出てくる。釣り人が釣りたい魚と違う魚を釣っても家に持ち帰らないように、間違えて殺した相手が男子中学生だと気づいたら、普通なら陰部を切ったり釘を刺したりしないはずだ。無理矢理今までの私の仮説を突き通そうとすれば、和製切り裂きジャックが自分の正体をこの中学生に知られてしまい、その口封じで殺した。そして、ただ殺して放置するのは自分の美徳(どんな美徳だよ)に反するので、今まで通り異常な遺棄の仕方をした。だいぶ苦しい言い訳だがこんなところだろう。
 私がそんなことを新聞に顔を近づけながら考えていると、突然新聞紙が私の手を離れて急に天井に向かって浮上した。新聞を追いかけるように顔を上げると、パパが不機嫌そうな顔でこっちを睨みつけている。
 新聞が欲しければちゃんと声に出せばいいのにと、こっちも不満な旨を伝えようとパパの背中を睨みつけてやる。するとダイニングキッチンの向こうで朝ご飯の準備をするママが手招きしている。立ち上がってそちらに行くと、ママは私の耳元でこう言った。
「今はあんまりパパを怒らせないほうがいいわよ。仕事のことで機嫌よくないみたいなの」
「ああ。部下の刑事のことね」
 どうやら橋本とかいう刑事と何かあったらしい。子供みたいに単純な喜怒哀楽だ。
 パパが橋本という若い刑事さんの教育係をしていることは知っていた。お金さえもらえればそれでいいという感じの、パパが嫌いなタイプの人間らしく、前に見せてもらった写真の顔は結構イケメンだったのを覚えている。嵐の松潤がめちゃくちゃ不愛想な顔をしたみたいな顔で写っていて、表情筋と演技力が豊かなら役者にもなれそうなルックスだった。
 そんなことより、今私が知りたいのはより詳しい今回の被害者の情報だ。新聞やネットニュースをはじめとした公共の情報網では、被害者の人物像や裏の顔がわかるような情報は基本載らない(加害者の情報は捕まってから数週間経てばやることもあるのだが)。事件
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