和製切り裂きジャック

九十九光

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#17ー4

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 彼は最近、愛知県警の捜査の容疑者候補にされていた。それも自分の仕事に悪影響を与えている和製切り裂きジャックの正体として。
 彼は独身の一人暮らしで、自分の名義で白い軽トラックを所有している人間だった。メディアの情報に疎い彼は、自分のような人間がこの凶悪犯の正体として疑われていることを知らなかった。そのため、三日前に警察が事情聴取と家宅捜索にやって来た時は、驚きより先に呆れが飛び出した。
 男はこの三日間、仕事のスケジュールや夜間の行動、それを証明できる人間はいるかどうかという質問を再三された。おまけに自分の軽トラックに血液反応の検査もされ、仕事もままならない状態になっていた。
 それが男に多大なストレスを与えた。好きでこの仕事と今の暮らしを選んだわけでもないのに、それを理由にありもしない疑いをかけられたのだから無理もない。捜査を担当した、自分と同い年くらいの橋本という刑事の事務的で感情のこもっていないしゃべり方も、まるで自分をバカにしているように思えて仕方がなかった。
 この日の飲み会は、男が警察から解放されたことを記念した飲み会だった。当然、金の出どころは彼の仕事仲間たち。その日の男は、三日間の拘束のうっぷんを晴らすように、ビールをジョッキで三杯飲み干した。他人の金でなければ飲めない量だった。
 そして午後九時。七時から始めた飲み会もお開きになり、男は町の南にある自宅に向かって一人で歩いていた。彼は鼻歌でも歌いたいようないい気持ちで、人通りの少ない細い住宅地の道を歩いていく。明日からまた仕事があることなど、この時の彼の頭からは抜けてしまっていた。
 その時、男の視線に変なものが飛び込んできた。
 一台の白い軽トラックが狭い住宅地の道路の路肩に駐車されていた。荷台には深緑色のカバーがかけられ、その内側にある縦長の何かを隠していた。男は仕事での経験から、脚立が二つ隠されているのだと予想した。
 このトラックが不自然なものだった。この車を使う大工や庭師などの世界では、自分たちの仕事を暗い夜に行うことの危険性は、誰かに教わらずとも理解できるものだった。手元をライトで照らしてこの時間に作業することも可能だが、コストと法律の関係上、住宅地の中でそこまでする会社はない。すっかり日の落ちたこの時間、日本中の軽トラックの多くはどこかの駐車場に駐車され、明日の朝を待っているのが普通なのだ。だからこそ彼の目には、この軽トラックがとても不自然に見えたのだ。
 男は軽トラックの後ろに身を潜めた。彼の中で、もしかしたら、という感情が襲ってきたのだ。この種の車両を使って犯行を行う人間の話を、つい最近聞かされたばかりだったからだ。
 陰から確認した道の先には、先に角を曲がっていた制服姿の女子学生がいた。学校指定のものらしいシンプルなシルエットの肩掛け鞄を持ち、男には塾帰りだと予想できた。
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