和製切り裂きジャック

九十九光

文字の大きさ
101 / 166

#18ー1

しおりを挟む
#18(一人称)


『和製切り裂きジャック ついに捕まる』
 四月十八日の中日新聞の朝刊には、そう見出しが書かれた別刷りの新聞紙が折り込みチラシのように入っていた。
 私はその記事を自宅のリビングで読み、驚愕を通り越して唖然とした。あれほど世間を騒がせた和製切り裂きジャックの正体は、東大や早稲田などの名門大学卒のインテリでも、犯罪者や捜査官たちの心理に精通した警察や司法の人間でも、トヨタみたいな大企業で働くエリートサラリーマンでも、長身の美男子でも小柄な若い女性でも金髪幼女でもなく、鈴木芳夫という、千種区内に住む無職の四十三歳の男だというのだ。
 新聞に載っていたカラー写真の彼は、首から上の写真だけで相当な肥満体形だということがわかり、頭の毛はうちのパパよりも深刻なことになっているが、あご髭はまったく剃られていない。一重瞼のしかめっ面みたいな真顔で写っており、メラビアンの法則では確実にマイナスに振り向きそうな男だった。
 昨日の夜九時頃、千種区本山の住宅地で、後ろから塾帰りの女子高生を絞殺しようとしたところを通りがかった近隣住民の男性に取り押さえられる。その後、大急ぎで駆けつけた県警本部の人間と鑑識が彼の軽トラックや自宅を捜査。トラックの荷台全面から血液反応が出て、自宅からは和製切り裂きジャックによって殺された被害者たちの財布、免許証に生徒手帳に学生証、半分白骨化した彼の父親の遺体が見つかり、殺人等の罪で逮捕。これが新聞に載っていた、和製切り裂きジャックの逮捕劇だった。
 だが驚くべきところはそこではない。この鈴木芳夫が語った連続殺人の動機が、誰も想像していなかった内容だったのだ。
 和製切り裂きジャックはシリアルキラーではなく、ただの強盗殺人犯だというのだ。
 新聞に載っている本人の証言曰く、『去年の暮れに父親が死んだ。それを役所に申請すると年金が入らなくなるから黙ってた。それで父親がいなくなったから、お金のほとんどを酒とパチンコに費やしたら、今年の初めにはほとんどなくなった。だから人を殺してお金を盗って、それをまたギャンブルに使った。そのまま死体を放置したらばれるかもしれないって思ったから、わざとバラバラにしてお金が目当てじゃないって思わせて、自分が怪しまれないようにしてた』というのが、名古屋市(主に千種区と名東区の普通の人)を恐怖のどん底に陥れた連続殺人犯、和製切り裂きジャックの真相だという。頭がいいのか悪いのか。どうしたらその発想に行きつくのかよくわからない思考回路だ。
 とにかくこれが事実だとするならば、和製切り裂きジャックに関する一つの謎が解明できる。一月二十二日から二月十六日と、最後の未遂事件までの四月の間の、事件が起きなかった空白期間だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...