和製切り裂きジャック

九十九光

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#25ー5

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「パソコンだけゴミ袋にでも入れて血がつかないようにしたんだろ」
 氷川が苦し紛れに放った反論も、山下は野球でフライボールを受けるように対処した。
 そこから家の周辺に、長時間の静寂が訪れた。再び小雨が降り出し、玄関前に立ちつくす十三人の耳元で小さな銃声を響かせた。捜査員たちの中でも、道路に近い者ほど濡れる体の面積は増えていった。この雨でまったく濡れていないのは山下と氷川だけだった。向かいのアパートや近くの家々からは、大家の家の異変に気づいた住人がやって来て、興味津々といった様子で、山下の推理ショーを遠巻きに観戦していた。
 そして、風船が破裂したような勢いで、氷川がさらなる抵抗に出た。
「動機がない! 確かに妹の楓ちゃん関係で接点は多かったけど、それと住居以外はなんの話もしなかった! 賃貸トラブルもない! 俺には橋本さんを殺す理由がないんだ!」
「あんた、なんで橋本隆のことは『橋本さん』と呼ぶのに、妹の橋本楓のことは『楓ちゃん』と呼ぶんだ?」
 山下のこの発言に氷川の背筋が凍りついた。
 これも湯浅の見落としていた部分だった。兄のことは大して会話もしない仲だと言って他人行儀に呼ぶのに、妹のほうは下の名前に『ちゃん』をつけて呼んでいる。電話越し込みで氷川と何度も会話している湯浅は気づかなかったが、一度しか会話していない彼の娘は、二度目の会話をする前には怪しいと感じていたと言っていた。
「証言があったぞ。あんたの家にある支援団体関係の写真、橋本兄妹と映ってる写真一枚だけらしいな。ほかの写真は一つも飾ってないのに、どうしてその写真だけ見えるところに飾ってあるんだ?」
 氷川はこの山下の言葉に反論しなかった。捜査員たちには、触れられると一番不利になる部分を触れられて言い逃れに手詰まりを感じているように見えた。
 山下は改めて家宅捜索の令状を氷川に見せて、この事件の動機に関する核心を突きにかかった。
「あんたなんだろ。橋本楓のストーカーは。パソコンを調べればすぐに分かる。兄を殺してやると決意するほど好きだった女なんだから、死んだなんてだけで盗聴した音声記録を消したりしないだろ」
 氷川智成が橋本隆を殺した理由は、ねじ曲がった愛情の暴走による逆恨み。流しの男に愛していた女性の殺害を許した、でき損ないの兄に怒りを感じたから。
 一週間前、湯浅の娘は山下に、今回の犯行の動機に関するこのような予想を説明していた。警察関係者以外の人間の意見のため完全に鵜呑みにするのは危険だったが、そう考えれば自然だと山下も考えた。この動機がなくとも、あの部屋の配置と周囲の状況、そこに誘導できる氷川の立場を考えれば、彼が犯人であることは間違いなかった。
 山下も氷川も、残り十一人の捜査員たちも、何もしゃべらなかった。様子を見に道路の前に集まる見物人たちの足音と、降り注ぐ小さな五月の雨の音、家の奥から聞こえる犬の
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