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♯1ー10
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「そうだね、内田君。ちょっと気が早いかもしれないけど、卒業後の進路とかって、何か希望はある?」
「いえ、特にありません」
「……。部活はどうしようか? 受験の都合で、半年くらいしかできないけど」
「興味ありません」
「……。友達は」
「いりません」
うん。予想はしていたけど、この少年、こちらから振った話をことごとく断ち切っていく。元々人との会話に興味がなかったとはいえ、ここまで極端に拒否されると案外傷つく。
「内田。友達いらないって言ったけど、友達は一人くらいは作ったほうがいいわよ。学校で出会った人っていうのは、これからの人生で一番強く印象に残る人になるんだから」
すると小林先生が内田平治のさっきの答えに、一般論に近い言い分で説得しにかかった(私も高校一年生の時、当時の担任から似たようなことを言われた覚えがある)。
やはり学校というのは生徒が新しい人間関係を築き上げることを推奨するものなのかと、この時の私は内心改めて考えた。
というのも、学校のクラス分けというのは、仲がよすぎる生徒同士をわざと別のクラスに分断するように行っているのだ。こうすることで、その生徒たちがずっと自分たちだけのグループで生活するのを避け、新しいクラスで新しい人間関係を築くことを自然と促しているのである。
そして内田平治は、この回りくどささえ感じる我々の涙ぐましい努力を知ってか知らずか、こんな言葉を口にした。
「前の学校でも同じこと言われましたけど、僕は人間が嫌いなんです。どうして嫌いなものにわざわざ近づいて、好きだっていうふりをして友達にならないといけないんですか」
すぐに信子さんが、「平治。なんてこと言うの」と小声で叱りつけた。
でも確かに彼の言う通りだ。一人でいたいって思っている人に無理矢理プライベートで親しい人間を作れなんて、お酒の飲めない人に無理矢理ビールを勧めるようなものだ。仲間とわいわいするのが好きじゃない私にはよく分かる。
だが、人とのコミュニケーションを一定レベルでできるようにすることは、義務教育の目標の一つだ。小林先生は黙ってはいない。
「そうは言うけどさ、仲のいい友達っていうのは、この時期にしか作れないものだよ。大人
「いえ、特にありません」
「……。部活はどうしようか? 受験の都合で、半年くらいしかできないけど」
「興味ありません」
「……。友達は」
「いりません」
うん。予想はしていたけど、この少年、こちらから振った話をことごとく断ち切っていく。元々人との会話に興味がなかったとはいえ、ここまで極端に拒否されると案外傷つく。
「内田。友達いらないって言ったけど、友達は一人くらいは作ったほうがいいわよ。学校で出会った人っていうのは、これからの人生で一番強く印象に残る人になるんだから」
すると小林先生が内田平治のさっきの答えに、一般論に近い言い分で説得しにかかった(私も高校一年生の時、当時の担任から似たようなことを言われた覚えがある)。
やはり学校というのは生徒が新しい人間関係を築き上げることを推奨するものなのかと、この時の私は内心改めて考えた。
というのも、学校のクラス分けというのは、仲がよすぎる生徒同士をわざと別のクラスに分断するように行っているのだ。こうすることで、その生徒たちがずっと自分たちだけのグループで生活するのを避け、新しいクラスで新しい人間関係を築くことを自然と促しているのである。
そして内田平治は、この回りくどささえ感じる我々の涙ぐましい努力を知ってか知らずか、こんな言葉を口にした。
「前の学校でも同じこと言われましたけど、僕は人間が嫌いなんです。どうして嫌いなものにわざわざ近づいて、好きだっていうふりをして友達にならないといけないんですか」
すぐに信子さんが、「平治。なんてこと言うの」と小声で叱りつけた。
でも確かに彼の言う通りだ。一人でいたいって思っている人に無理矢理プライベートで親しい人間を作れなんて、お酒の飲めない人に無理矢理ビールを勧めるようなものだ。仲間とわいわいするのが好きじゃない私にはよく分かる。
だが、人とのコミュニケーションを一定レベルでできるようにすることは、義務教育の目標の一つだ。小林先生は黙ってはいない。
「そうは言うけどさ、仲のいい友達っていうのは、この時期にしか作れないものだよ。大人
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