イレブン

九十九光

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♯7ー1

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 六月八日の水曜日。ここから三日間。東中では部活動と四時間目よりあとの日程をすべて取り潰して家庭訪問を行うことになる。私も本来の給食の時間中に行った帰りのホームルームで生徒を追い返した。湯本や伊達など、素行の悪さが目立つ生徒たちが「イエーイ!」という露骨なリアクションを返し、ノーリアクションなのは内田と今田くらいである。腹立たしい気持ちがお腹の中からふつふつと湧き上がってきそうだ。

それから一時間ほどの間に、私は持参したコンビニ弁当を食べ、この日回る家とそこでの確認事項を整理し、気持ちの整理もままならないまま車に乗って出かけた。この間、私はどの先生とも会話はしなかった。この時の東中は、私と同じように家庭訪問の準備で忙しい人と、今年の二学期にある学校祭のゲスト探しに駆り出されている人のどちらかに分かれているからだ。

 東中周辺の住宅地は学校の東側に広がっており、名鉄巽が丘駅周辺の巽が丘地区、私の自宅近くにある八幡新田駅周辺の八幡地区、その二つの間に挟まれている鍋山地区に分かれ
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