178 / 214
♯16ー5
しおりを挟む
関ではない。私たちの教育方針は、基本的にすべて自分たちで考えて作り上げたもの。何もかも教育委員会の指示で動いてるわけじゃないの」
私は顔だけ振り返り、一般の人がよくする勘違いをしていた内田庵に説明した。
愛車に乗り込んだ私は、途端に胸の中がスッとした。カッコつけていかにも教師っぽいことを口にでき、小林先生の敵討ちもできた。随分と安っぽい理由だったが、この時の私は上機嫌になっていた。
私は自宅に戻るため、知多市の西側の住宅地を抜けて、近くの田んぼや畑からやってきた乾いた泥がついたアスファルトの道を進んでいく。市の東西を行き来という役割も持つ、片側一車線のこの道では、明らかに農作物や農具を積んでいないと予想できる、きれいな車体をした車が何十台も走っていた。目の前を走る車の黒い車体は、こちらの車のフロント部分を鏡写ししている。
そんな道が終わり、普段から使っている東中北側の道を走り始める。周囲の風景は、殺風景な畑に雑木林と竹藪。道行く対向車は急にいなくなり、ともすればにぎやかだった道は急に静かになった。
私は急に現実に引き戻された感じになった。
私は確かに、内田庵の警鐘を鼻で笑うようなことを言った。だが冷静に考えれば、内田が二学期以降クラスになじむという可能性が出てきたわけではない。そもそも彼が今日の一件から立ち直ったという確証はなく、このまま人間嫌いが加速して引きこもりになる可能性だってあった。そもそも東中の三年生は、一応状況だけ言えば不登校のままである。よく考えると、話は何一つ進んでいなかった。私が内田平治に関する話で内田庵にマウントを取った気になっているだけで、東中の問題は一つも好転していなかった。閑散とした道を走っていると、そんな非常な現実が待っているのがよく分かった。
気がつくと私は、自宅アパート前の駐車場に車を停めていた。時刻は午後五時。あとは車から降りて今夜のご飯のことを考えるだけである。
だが私は、今夜の献立のことは考えなかった。
あの生徒たちの担任として、今から自分にできることはなんだろう。どうすれば本当の意味で、内田庵の鼻を明かしてやれるのだろう。
そんな大雑把なことを考えていた。たぶん何十分と、車の運転席から降りることなく、背もたれに思いっきり背中を預けながらそんなことを考えていた。
やがて私は、一つの結論に行き着いた。
私は顔だけ振り返り、一般の人がよくする勘違いをしていた内田庵に説明した。
愛車に乗り込んだ私は、途端に胸の中がスッとした。カッコつけていかにも教師っぽいことを口にでき、小林先生の敵討ちもできた。随分と安っぽい理由だったが、この時の私は上機嫌になっていた。
私は自宅に戻るため、知多市の西側の住宅地を抜けて、近くの田んぼや畑からやってきた乾いた泥がついたアスファルトの道を進んでいく。市の東西を行き来という役割も持つ、片側一車線のこの道では、明らかに農作物や農具を積んでいないと予想できる、きれいな車体をした車が何十台も走っていた。目の前を走る車の黒い車体は、こちらの車のフロント部分を鏡写ししている。
そんな道が終わり、普段から使っている東中北側の道を走り始める。周囲の風景は、殺風景な畑に雑木林と竹藪。道行く対向車は急にいなくなり、ともすればにぎやかだった道は急に静かになった。
私は急に現実に引き戻された感じになった。
私は確かに、内田庵の警鐘を鼻で笑うようなことを言った。だが冷静に考えれば、内田が二学期以降クラスになじむという可能性が出てきたわけではない。そもそも彼が今日の一件から立ち直ったという確証はなく、このまま人間嫌いが加速して引きこもりになる可能性だってあった。そもそも東中の三年生は、一応状況だけ言えば不登校のままである。よく考えると、話は何一つ進んでいなかった。私が内田平治に関する話で内田庵にマウントを取った気になっているだけで、東中の問題は一つも好転していなかった。閑散とした道を走っていると、そんな非常な現実が待っているのがよく分かった。
気がつくと私は、自宅アパート前の駐車場に車を停めていた。時刻は午後五時。あとは車から降りて今夜のご飯のことを考えるだけである。
だが私は、今夜の献立のことは考えなかった。
あの生徒たちの担任として、今から自分にできることはなんだろう。どうすれば本当の意味で、内田庵の鼻を明かしてやれるのだろう。
そんな大雑把なことを考えていた。たぶん何十分と、車の運転席から降りることなく、背もたれに思いっきり背中を預けながらそんなことを考えていた。
やがて私は、一つの結論に行き着いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる