イレブン

九十九光

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エピローグ2

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からのお客に紛れて帰るように指示を出していた。おかげ様で今この場で怒られているのは私たち八人だけとなっている。

 校長の前で横一列になっている私たちに、困り果てた様子の佐久間校長が言葉を続ける。

「分かっているはずでしょう。学校祭というのは、生徒が好きなようにやって楽しむためのものじゃない。生徒の健やかな成長と、普段の学校生活ではなかなか学べない協調性を身に着けるためのもの。それを外部の方にまで嘘をついて、町内全体に迷惑をかけるようなことをして……。どうしたらそういう考えに行き着くんですか。そういう生徒の暴走を止めるのが、あなたたちの仕事でしょう」

 まあ、この校長の言葉は一言一句その通りと言えるだろう。学校祭でお勉強という、部外者が聞いたら違和感を覚えそうな言葉が平然と出てくるからこその学校教育なのである。

 そしてそんな話を聞く私の中に、恐怖心は一切なかった。一か月以上前に手書きの誓約書に名前を書いた瞬間から、ライブの結果に関係なくこうやって怒られる未来は予想できていた。その予想が予想通りになったところで、恐怖心なんてものは微塵も感じなかった。

 そんな私より肝が据わっている人もいる。学年主任の山田先生だった。

「そうやってあんたは、大事な生徒を紐で括りつけて、大人が管理しやすいだけの学校の中に閉じ込め続けるのか」

 敬語ですらない彼の言葉に、室内にいた全員が耳を疑った。彼の表情は真剣だった。

「あいつらだって人間なんだ。一人一人が別々の信じるものと確かな考えを持ってる、一人の人間なんだ。彼らが未熟なのは、そうした自分の力に気づいていない、もしくはその力のコントロールの仕方が分からないという部分だけ。我々教員がやるべき仕事は、一人一人の力を引き出し、そのコントロールの仕方を教えることだ。あれはダメだこれもダメだと言い、先生の言うことを聞けだの大人の言う通りにしろだのと言い続け、彼らから自由な発想を奪っていく。これでどうやって、三年間の中学校生活で自立の心を身に着けるんだ。義務教育も終わり、就職もできて、普通科の学校に行くかそれ以外の専門的な学びができる学校に行くかの舵取りが必須になる年に、一人一人の声に耳を傾けず、制約と裏だらけの学校生活を強制していいわけがない。」

「山田先生……! あんた一体」

「教員を辞めろというなら辞めてやりますよ。元々そういう腹積もりでいましたし。だが二つ約束してほしい。

一つ、今回の件でどの生徒にもなんのペナルティを与えない。今回の件を理由に進学や就職
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