4 / 43
第1章 出会い
第4話 魔族の娘にコロッケをあげたら。
しおりを挟む
歩く。長居しすぎたか、そろそろ日が暮れようかとしていた。おばちゃんのコロッケ屋も店仕舞いをしていた。声をかけようかと思ったが、わざわざ手を止めさせてまで挨拶する必要もないだろう。
彼女は魔法を扱えていた。俺に角やしっぽを晒したのは偶然だろうが、他人の認識を阻害するくらい容易いだろう。姿形を人族に模する等造作もないのだ。
視界も悪くなり、行きかう人の数も減りつつある。
コツコツと道路に響くのは……二人分の足音。
「なあ」
「何かしら」
「何してるんだ」
「歩いてるわ」
「奇遇だな、俺も歩いてる」
コツコツ、コツコツ。
「なあ」
「何かしら」
「どこに向かってるんだ」
「さあ、分からないわ」
「……」
コツコツ、コツ……。
「?」
「なぁ」
「何かしら」
俺が止まったのに気づいて、ラケナリアも足を止める。
「何してるんだ」
「だから歩いて」
「いや、さっき聞いたわ、違う。なんで俺を付けてるんだ」
「言っている意味が分からないわ、同伴してるのよ。付けるとは意味が違うわ」
「……なるほど、母国語じゃない分、理解が不十分なようだから言っておく。同伴ってのは、同伴者の承諾があって初めて同伴と呼ぶんだ。俺がいつ承諾した?」
「はあ、会った時よ。それがどうかしたかしら」
何を当たり前のことを、とくだらない話に付き合わされて嘆く彼女に俺の笑顔が固まる。
「えっと、何を言ってる?」
「私お父様から聞いたことがあるわ。オモチカエリ、というのでしょう? 男が女を持ち帰るのは当然の流れだと言っていたわ」
「おい、そのくそ親父をだれか早くぶっとばしてやってくれ。それか病院に連れていけ」
「ぶっとばすために冒険者は日々戦っているのでしょう?」
ああ、それもそうか。
これまでで感覚が麻痺していたが、魔族と人族は敵同士なのだ。
彼女の父親は、これまで実際に人を殺めた事のある強大な魔人かもしれない。
「一応聞くが、泊まる宛はあるのか」
「あの、一応言うけど私は昨日野宿だったの」
くそっ、そういう事か。
「つまり、お前は俺に泊めろと言いたい訳だ」
「もし、私が魔族と知れば、普通の人はどんな顔をするかしら」
手を口に当て、眦に涙を浮かべる。素晴らしい、鬼気迫る名演技だ。
「はぁ、分かった。野暮用があるから少し待っとけよ。あ、あと必ずローブは取るなよ。隠せるなら絶対に隠せよ」
「勿論よ。やろうとすれば、魔法で隠せるから」
じゃあどうやって判別できるんだよ人族っ、とツッコミを抑え俺は冒険者ギルドに戻った。
「お疲れ様です、グラジオラスさん。依頼主さんがお見えになってますよ」
受付嬢、交代制で酒場と切り盛りするリーリアが俺を案内した。
「よかった、ようやく戻った。あれから気になって仕方なくて。どうして昨日この目で確認しなかったんだろうって後悔していたところなんだ」
酒場の椅子に座り俺を手招く男は、やはり酔っていた。少なくとも夕日の影響ではないだろう赤面した顔の男の前に渋々座る。
「で、結局何だったんだよあれは」
男は一向に引く気が無いので俺は仮面を被る事にした。演技の仮面、正しく俺がそこで実体験した事を赤裸々に話す様に。
「実はあれはな」
興味を惹く為に勿体ぶる。男は前のみりになって唇を舐めた。
俺は息を吸い、ある事実を告げた。
「コロッケ屋のおばちゃんのシルエットだったんだ」
「なんだって」
「俺が目立った収穫が無くて帰ろうとした矢先だった。丁度最後の客にコロッケを振る舞う現場を見たんだ」
「ほう、それで」
「まず角に見えたのはおばちゃんが頭に纏う三角巾、羽は背中でリボン結びした紐だった」
「……なるほど、なら尻尾はなんだ。俺は明確に揺れるのを見たぞ」
「あれは、おそらくコロッケじゃないかな」
「コロッケだと……は、そうか竹串か!」
「そう。おばちゃんは揚げたてのコロッケに竹串を刺し、一、二回振る癖がある。影は日が沈む刻が近づくにつれて長く朧げに映る。遠くに映ったおばちゃんの影が、偶然魔族に見えたんじゃないか?」
「ふむ、確かにそれなら、あり得る話か。そう、だな……分かった、依頼達成だ」
よし、と俺は陰ながらガッツポーズを取る。適当に嘯いたが、なんとか納得してもらえた。
あとは受付嬢のリーリアへと話を通し、依頼は正式に達成された事を告げられる。
「これで96連続クリアですね、快挙ですよっ」
「あーそりゃどうも」
「あの、早く昇格試験受けてくださいね? Eランクになる為には、上級冒険者と一対一の戦闘する見極め試験がありますが、昇格さえすれば討伐依頼なども出ますから」
「そうですね、えぇ、いつかそうします」
俺の常套句にリーリアは顔を曇らせた。しかし、それから僅かに顔を赤らめて。
「あの、私必ず力になりますから。なんでも、言ってくださいねっ」
純真無垢な性格は、常に俺を助けるとは限らない。
世の中はそれ程単純ではないのだ。
お辞儀をしてようやく冒険者ギルドを出る。
ローブを目深に被った少女が俺を出迎えた。
「さあて、行くわよ。夕飯が待っているわ!」
「はいはい」
俺はげんなりしながら、ある場所へと足を進めた。
「あ、そういえば貴方。名前を聞いていなかったわね」
「あぁ? あーそうか。グラジオラス=ベルリオスだ」
「ふぅん、グラスね、いい名前よ。で、グラスっ、家はこっちかしら」
「違う、今日の食材が家にない。あるのはキュウリが一本クーラーボックスに入ってるくらいだ」
「じゃあ買い出しね、楽しみだわ~っ」
「あんまり、はしゃぐなよ、目立つから。あと、くれぐれも……」
たった、と駆け足気味に先を行くラケナリアに俺は注意を呼び掛ける。
「分かってる、決して正体は明かさない。今日から私は、人族のリアちゃんよ♪」
彼女の能天気さ、いや天性の明るさが俺の人生にどう影響するのか。
危険因子であると頭では分かっていて、彼女いるとどこか人生が楽しくなるのではないかという根拠のない仮定が俺の思考を揺らしている。
「ラケナリア……花言葉は、好奇心。引く程ぴったりな名前だ」
「どうしたの、グラス! 置いていくわよ?」
「行先も知らない奴が先導するな、迷子になるだろうが~!」
これは魔族の娘にコロッケをあげたら、居候になった話である。
彼女は魔法を扱えていた。俺に角やしっぽを晒したのは偶然だろうが、他人の認識を阻害するくらい容易いだろう。姿形を人族に模する等造作もないのだ。
視界も悪くなり、行きかう人の数も減りつつある。
コツコツと道路に響くのは……二人分の足音。
「なあ」
「何かしら」
「何してるんだ」
「歩いてるわ」
「奇遇だな、俺も歩いてる」
コツコツ、コツコツ。
「なあ」
「何かしら」
「どこに向かってるんだ」
「さあ、分からないわ」
「……」
コツコツ、コツ……。
「?」
「なぁ」
「何かしら」
俺が止まったのに気づいて、ラケナリアも足を止める。
「何してるんだ」
「だから歩いて」
「いや、さっき聞いたわ、違う。なんで俺を付けてるんだ」
「言っている意味が分からないわ、同伴してるのよ。付けるとは意味が違うわ」
「……なるほど、母国語じゃない分、理解が不十分なようだから言っておく。同伴ってのは、同伴者の承諾があって初めて同伴と呼ぶんだ。俺がいつ承諾した?」
「はあ、会った時よ。それがどうかしたかしら」
何を当たり前のことを、とくだらない話に付き合わされて嘆く彼女に俺の笑顔が固まる。
「えっと、何を言ってる?」
「私お父様から聞いたことがあるわ。オモチカエリ、というのでしょう? 男が女を持ち帰るのは当然の流れだと言っていたわ」
「おい、そのくそ親父をだれか早くぶっとばしてやってくれ。それか病院に連れていけ」
「ぶっとばすために冒険者は日々戦っているのでしょう?」
ああ、それもそうか。
これまでで感覚が麻痺していたが、魔族と人族は敵同士なのだ。
彼女の父親は、これまで実際に人を殺めた事のある強大な魔人かもしれない。
「一応聞くが、泊まる宛はあるのか」
「あの、一応言うけど私は昨日野宿だったの」
くそっ、そういう事か。
「つまり、お前は俺に泊めろと言いたい訳だ」
「もし、私が魔族と知れば、普通の人はどんな顔をするかしら」
手を口に当て、眦に涙を浮かべる。素晴らしい、鬼気迫る名演技だ。
「はぁ、分かった。野暮用があるから少し待っとけよ。あ、あと必ずローブは取るなよ。隠せるなら絶対に隠せよ」
「勿論よ。やろうとすれば、魔法で隠せるから」
じゃあどうやって判別できるんだよ人族っ、とツッコミを抑え俺は冒険者ギルドに戻った。
「お疲れ様です、グラジオラスさん。依頼主さんがお見えになってますよ」
受付嬢、交代制で酒場と切り盛りするリーリアが俺を案内した。
「よかった、ようやく戻った。あれから気になって仕方なくて。どうして昨日この目で確認しなかったんだろうって後悔していたところなんだ」
酒場の椅子に座り俺を手招く男は、やはり酔っていた。少なくとも夕日の影響ではないだろう赤面した顔の男の前に渋々座る。
「で、結局何だったんだよあれは」
男は一向に引く気が無いので俺は仮面を被る事にした。演技の仮面、正しく俺がそこで実体験した事を赤裸々に話す様に。
「実はあれはな」
興味を惹く為に勿体ぶる。男は前のみりになって唇を舐めた。
俺は息を吸い、ある事実を告げた。
「コロッケ屋のおばちゃんのシルエットだったんだ」
「なんだって」
「俺が目立った収穫が無くて帰ろうとした矢先だった。丁度最後の客にコロッケを振る舞う現場を見たんだ」
「ほう、それで」
「まず角に見えたのはおばちゃんが頭に纏う三角巾、羽は背中でリボン結びした紐だった」
「……なるほど、なら尻尾はなんだ。俺は明確に揺れるのを見たぞ」
「あれは、おそらくコロッケじゃないかな」
「コロッケだと……は、そうか竹串か!」
「そう。おばちゃんは揚げたてのコロッケに竹串を刺し、一、二回振る癖がある。影は日が沈む刻が近づくにつれて長く朧げに映る。遠くに映ったおばちゃんの影が、偶然魔族に見えたんじゃないか?」
「ふむ、確かにそれなら、あり得る話か。そう、だな……分かった、依頼達成だ」
よし、と俺は陰ながらガッツポーズを取る。適当に嘯いたが、なんとか納得してもらえた。
あとは受付嬢のリーリアへと話を通し、依頼は正式に達成された事を告げられる。
「これで96連続クリアですね、快挙ですよっ」
「あーそりゃどうも」
「あの、早く昇格試験受けてくださいね? Eランクになる為には、上級冒険者と一対一の戦闘する見極め試験がありますが、昇格さえすれば討伐依頼なども出ますから」
「そうですね、えぇ、いつかそうします」
俺の常套句にリーリアは顔を曇らせた。しかし、それから僅かに顔を赤らめて。
「あの、私必ず力になりますから。なんでも、言ってくださいねっ」
純真無垢な性格は、常に俺を助けるとは限らない。
世の中はそれ程単純ではないのだ。
お辞儀をしてようやく冒険者ギルドを出る。
ローブを目深に被った少女が俺を出迎えた。
「さあて、行くわよ。夕飯が待っているわ!」
「はいはい」
俺はげんなりしながら、ある場所へと足を進めた。
「あ、そういえば貴方。名前を聞いていなかったわね」
「あぁ? あーそうか。グラジオラス=ベルリオスだ」
「ふぅん、グラスね、いい名前よ。で、グラスっ、家はこっちかしら」
「違う、今日の食材が家にない。あるのはキュウリが一本クーラーボックスに入ってるくらいだ」
「じゃあ買い出しね、楽しみだわ~っ」
「あんまり、はしゃぐなよ、目立つから。あと、くれぐれも……」
たった、と駆け足気味に先を行くラケナリアに俺は注意を呼び掛ける。
「分かってる、決して正体は明かさない。今日から私は、人族のリアちゃんよ♪」
彼女の能天気さ、いや天性の明るさが俺の人生にどう影響するのか。
危険因子であると頭では分かっていて、彼女いるとどこか人生が楽しくなるのではないかという根拠のない仮定が俺の思考を揺らしている。
「ラケナリア……花言葉は、好奇心。引く程ぴったりな名前だ」
「どうしたの、グラス! 置いていくわよ?」
「行先も知らない奴が先導するな、迷子になるだろうが~!」
これは魔族の娘にコロッケをあげたら、居候になった話である。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる