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第1章 出会い
第8話 Eランク冒険者へ。
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冒険者ギルドの裏手にあるのが、昇格試験用の闘技場。
ここでは、冒険者がランクアップに相応しいかを見極める場として活用される。
剣術大会等、公的な利用も度々行われる為かフィールドを囲むように観客席がずらりと並んでいる。
地面は土、こうした地形条件も戦いでは重要となり得る。
「おぉ、グラジオラスか、ようやくランクアップする気になったか!」
上級冒険者が相手、と言っていたがやはりそういう事か。
「確かAランク冒険者パーティーのリーダー、グロリオサさんですよね。お世話になります」
「よせよ、同じ冒険者の仲じゃないか、堅苦しい言葉は好かんぞ?」
大きく胸元が開いた薄地のシャツに、脚のラインがはっきり分かるデニムパンツ。凡そ今から戦闘するとは思えない格好である。
冒険者になって日も浅くない俺にとって、ほとんどの冒険者が顔見知りとなる。
勿論、俺を馬鹿にする連中もいたが、この人は俺の面倒を見ようとあれこれ構ってくれた親切な部類の人族だ。かく言う俺も恨み妬むような感情は抱いていない。純粋にいい人だと感じていた。
細い身体にそぐわない大剣を肩に背負い、ニヤリと獰猛に牙を剥いた。
「さて、雑用係と揶揄されたグラジオラスの実力、見せてもらおうじゃないの」
「お手柔らかにお願いしますよ」
そう言って、俺は持参した得物を取り出した。
「なんだそれは……変わった形状の剣だな」
「これは、『刀』です。親からの譲り物ですが、今回初めて使います」
「おいおい。大丈夫かよ……悪いが、手加減はしないからな?」
「ええ、遠慮なく戦ってください。俺を、見極める為に」
そう言って、俺は臨戦態勢を取った。
刀を左腰に下げ、剣の柄にすぅ、と指を添える。頭を下げ、重心を低く保つ。
「見ない型だな、王国ラナンキュラスが推奨する二大剣派ではなさそうだ」
「生憎俺は、【神剛派】や【神水派】の使い手ではない……これは、【神装派】ですッ」
刹那、俺は刀身を抜ききった。戦いに始まりの合図はない、殺す気で戦う事こそ戦場でのマナー。彼女に手加減は不要、俺は彼女を殺すのだ。
「【神装派・第一秘刀《一閃華》】」
神速に迫る斬撃は時に、空間すら裂くという。神の領域に一歩踏み入れたこの型は、俺の斬撃を遥か遠くの物体まで飛ばし、容赦なく斬り落とす。
「なッ」
俺の殺気に勘づいたか、瞬時に刃を割って入れて斬撃を凌ぐ。グロリオサの手先に血が噴き出し、得も言われぬ衝撃が全身を襲った。
「なん……だ、今のはっ」
「全部で8つある【神装派】の型の一つです。俺が今使えるのはこれだけですが」
「凄まじい威力だった、ははっ……これだけの力を隠し持ちながら、いまだFランク冒険者だというのが信じられんな」
「昇格試験を受けていなかったので当然です。さて、試験はこれで以上ですか?」
「ふんっ、あたしがこれで納得すると思うかい? あたしを傷つけた奴はあんたが初めてなんだ。とことん遊んでやるのが礼儀ってもんじゃないか?」
「私怨が混ざってませんかね……わかりました。俺も精一杯頑張ります」
恐らく俺は、本気で警戒した彼女に五分と持たず敗北するだろう。だが、ここで逃げ帰るでは冒険者とは決していえない。格上と戦う事は、冒険以外何物でもないのだから。
「行きます」
「ああ、来い……ッ」
俺は、距離を詰める。
全身が重い、動きが鈍い。
当たり前だ、俺は冒険者になって以降、一度も剣を握っていなかったのだから。
「その、技は……っ、どこで習った!」
「親から仕込まれたんですよ、馬鹿強い親の方ですがねっ」
「言っている意味がよくわからんなっ」
「……っ、剣術マニアだった父が俺をサンドバッグにしたんですよっ」
「なるほど、それ故の強さか。しかし、その漆黒の髪に瞳……グラジオラス、あんたは極東の出身だな」
一度剣を振る度に幾重ものフェイントや駆け引きをかいくぐり、攻撃の後は防御に徹する。
大剣使いだというのに、足さばきや重心の移動で、後隙を少しも見せない。
「これなら……!」
「見え透いた、攻撃だぞ!」
俺が大上段から振りかぶるとグロリオサは剣の腹で斬撃を防ぎ、俺を吹っ飛ばした。
「悪手ですよそれは。【神装派・第一秘刀《一閃華》】」
そう、俺は【神装派】によって間合いのアドバンテージを得ている。
グロリオサと俺の間に距離が空くほど斬撃を飛ばせる俺が有利。しかもその斬撃は、不意を突いたとはいえ、グロリオサの全力の防御無くして受けきれないときた。
「厄介だな、こうも防げない攻撃とは……!」
悪態づくが、その実彼女は少し嬉しそうだった。得体のしれない強敵を前にした歴戦の猛者の様だ。
かく言う俺は、ただのFランク冒険者なのだが。
「【神装派・第一秘刀《一閃華》】」
「だが、あたしはその攻撃を既に攻略した。
【神剛派・上式】ッッ!!!」
【神剛派】、王国ラナンキュラスが推奨する二大剣派が一つ。
【神水派】が技ならば、【神剛派】はその逆、力を以て武を制する型。
上式、下式、前式、後式、横式と5つある型のうち、上式は最も威力ある型になる。
「《剛鬼》ィィッ!!!」
水平に放った《一閃華》の斬撃は、《剛鬼》によって破壊され、地面に強烈な罅が入った。
「嘘、だろ……」
「ふん……っ、久しぶりに型を出した。見事だ、合格をくれてやろう。それともまだやるか?」
「い、いや……あの、やめておきますね」
俺はカチコチに固まりながら全力で戦いの終了を懇願した。
あの一撃を食らったら俺は原型すら留めず血肉と化していただろう。
「Eランク、冒険者か……」
「喜ばしい事じゃないか、素直に喜びやがれ、このっ」
「急に馴れ馴れしいですね、なんですか、ちょっと、俺ににじり寄らないでくださいっ」
「なぁに、あたしとグラジオラスの仲じゃないか、ちょっと肩を組むくらいっ」
「ぐぁ、胸……胸で窒息する」
俺、グラジオラス=ベルリオスはこの日、Eランク冒険者へと昇格を果たした。
これが、人族の理解の一歩に繋がるなら、俺はいつか、冒険者と肩を並べ戦う事になるはずだ。
ここでは、冒険者がランクアップに相応しいかを見極める場として活用される。
剣術大会等、公的な利用も度々行われる為かフィールドを囲むように観客席がずらりと並んでいる。
地面は土、こうした地形条件も戦いでは重要となり得る。
「おぉ、グラジオラスか、ようやくランクアップする気になったか!」
上級冒険者が相手、と言っていたがやはりそういう事か。
「確かAランク冒険者パーティーのリーダー、グロリオサさんですよね。お世話になります」
「よせよ、同じ冒険者の仲じゃないか、堅苦しい言葉は好かんぞ?」
大きく胸元が開いた薄地のシャツに、脚のラインがはっきり分かるデニムパンツ。凡そ今から戦闘するとは思えない格好である。
冒険者になって日も浅くない俺にとって、ほとんどの冒険者が顔見知りとなる。
勿論、俺を馬鹿にする連中もいたが、この人は俺の面倒を見ようとあれこれ構ってくれた親切な部類の人族だ。かく言う俺も恨み妬むような感情は抱いていない。純粋にいい人だと感じていた。
細い身体にそぐわない大剣を肩に背負い、ニヤリと獰猛に牙を剥いた。
「さて、雑用係と揶揄されたグラジオラスの実力、見せてもらおうじゃないの」
「お手柔らかにお願いしますよ」
そう言って、俺は持参した得物を取り出した。
「なんだそれは……変わった形状の剣だな」
「これは、『刀』です。親からの譲り物ですが、今回初めて使います」
「おいおい。大丈夫かよ……悪いが、手加減はしないからな?」
「ええ、遠慮なく戦ってください。俺を、見極める為に」
そう言って、俺は臨戦態勢を取った。
刀を左腰に下げ、剣の柄にすぅ、と指を添える。頭を下げ、重心を低く保つ。
「見ない型だな、王国ラナンキュラスが推奨する二大剣派ではなさそうだ」
「生憎俺は、【神剛派】や【神水派】の使い手ではない……これは、【神装派】ですッ」
刹那、俺は刀身を抜ききった。戦いに始まりの合図はない、殺す気で戦う事こそ戦場でのマナー。彼女に手加減は不要、俺は彼女を殺すのだ。
「【神装派・第一秘刀《一閃華》】」
神速に迫る斬撃は時に、空間すら裂くという。神の領域に一歩踏み入れたこの型は、俺の斬撃を遥か遠くの物体まで飛ばし、容赦なく斬り落とす。
「なッ」
俺の殺気に勘づいたか、瞬時に刃を割って入れて斬撃を凌ぐ。グロリオサの手先に血が噴き出し、得も言われぬ衝撃が全身を襲った。
「なん……だ、今のはっ」
「全部で8つある【神装派】の型の一つです。俺が今使えるのはこれだけですが」
「凄まじい威力だった、ははっ……これだけの力を隠し持ちながら、いまだFランク冒険者だというのが信じられんな」
「昇格試験を受けていなかったので当然です。さて、試験はこれで以上ですか?」
「ふんっ、あたしがこれで納得すると思うかい? あたしを傷つけた奴はあんたが初めてなんだ。とことん遊んでやるのが礼儀ってもんじゃないか?」
「私怨が混ざってませんかね……わかりました。俺も精一杯頑張ります」
恐らく俺は、本気で警戒した彼女に五分と持たず敗北するだろう。だが、ここで逃げ帰るでは冒険者とは決していえない。格上と戦う事は、冒険以外何物でもないのだから。
「行きます」
「ああ、来い……ッ」
俺は、距離を詰める。
全身が重い、動きが鈍い。
当たり前だ、俺は冒険者になって以降、一度も剣を握っていなかったのだから。
「その、技は……っ、どこで習った!」
「親から仕込まれたんですよ、馬鹿強い親の方ですがねっ」
「言っている意味がよくわからんなっ」
「……っ、剣術マニアだった父が俺をサンドバッグにしたんですよっ」
「なるほど、それ故の強さか。しかし、その漆黒の髪に瞳……グラジオラス、あんたは極東の出身だな」
一度剣を振る度に幾重ものフェイントや駆け引きをかいくぐり、攻撃の後は防御に徹する。
大剣使いだというのに、足さばきや重心の移動で、後隙を少しも見せない。
「これなら……!」
「見え透いた、攻撃だぞ!」
俺が大上段から振りかぶるとグロリオサは剣の腹で斬撃を防ぎ、俺を吹っ飛ばした。
「悪手ですよそれは。【神装派・第一秘刀《一閃華》】」
そう、俺は【神装派】によって間合いのアドバンテージを得ている。
グロリオサと俺の間に距離が空くほど斬撃を飛ばせる俺が有利。しかもその斬撃は、不意を突いたとはいえ、グロリオサの全力の防御無くして受けきれないときた。
「厄介だな、こうも防げない攻撃とは……!」
悪態づくが、その実彼女は少し嬉しそうだった。得体のしれない強敵を前にした歴戦の猛者の様だ。
かく言う俺は、ただのFランク冒険者なのだが。
「【神装派・第一秘刀《一閃華》】」
「だが、あたしはその攻撃を既に攻略した。
【神剛派・上式】ッッ!!!」
【神剛派】、王国ラナンキュラスが推奨する二大剣派が一つ。
【神水派】が技ならば、【神剛派】はその逆、力を以て武を制する型。
上式、下式、前式、後式、横式と5つある型のうち、上式は最も威力ある型になる。
「《剛鬼》ィィッ!!!」
水平に放った《一閃華》の斬撃は、《剛鬼》によって破壊され、地面に強烈な罅が入った。
「嘘、だろ……」
「ふん……っ、久しぶりに型を出した。見事だ、合格をくれてやろう。それともまだやるか?」
「い、いや……あの、やめておきますね」
俺はカチコチに固まりながら全力で戦いの終了を懇願した。
あの一撃を食らったら俺は原型すら留めず血肉と化していただろう。
「Eランク、冒険者か……」
「喜ばしい事じゃないか、素直に喜びやがれ、このっ」
「急に馴れ馴れしいですね、なんですか、ちょっと、俺ににじり寄らないでくださいっ」
「なぁに、あたしとグラジオラスの仲じゃないか、ちょっと肩を組むくらいっ」
「ぐぁ、胸……胸で窒息する」
俺、グラジオラス=ベルリオスはこの日、Eランク冒険者へと昇格を果たした。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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