追放された冒険者を案内する『追放処理班』のギルド職員、裏で『ざまぁ代行屋』と呼ばれていた件。〜お望みのざまぁプランはこちらですか?〜

TGI:yuzu

文字の大きさ
24 / 40
case3 異国日本からの転移者

代行屋、奴隷に懐かれる。

しおりを挟む
 
 アンネは見違える様に可愛くなっていた。
 服の印象が人に与える効果は目を見張るものがあった。

 ワンピース姿になったアンネは自身を確認するようにくるりとターンを決める。オシャレには俺達以上に興味があるであろう、アンネは目を輝かせていた。

「よく似合ってるよ、アンネ。さあ、着替えたら早速移動しよう」

 俺の服の裾をちょこんと握りアンネは大人しく付いてくる。
 怖がっているのだろうか。大丈夫だ、と俺は頭を撫でてやる。

「特に乱暴にされる心配はない。何かあったら俺に言えばいいから」

 購入者の責任だ。所有権が奥山にあろうと、彼女を選んだ俺にも責任がある。
 今更無関係を装ってまでアンネを突き放す理由はないと思った。

 個室のドアを開き、奥山とアンネを正式に引き合わせた。

「お待たせしました。では……奥山様?」

「美しい」

「はい?」

「アンネ。なんて美しいんだ! まるで天使みたいじゃないか!」

 奥山は興奮を抑えきれずに席から立ち上がる。俺の裾をぎゅっと握って奥山を警戒する様子も、保護欲を掻き立ててくる。奥山の性癖に見事合致したようだ。

「アンネ。彼が君のご主人様だ」

 俺は、スケッチブックと鉛筆をアンネに託す。
 筆談であれば会話が可能にはなるはずだ。

 幸いにして、言語能力を備えていたアンネはすらすらと鉛筆を動かした。
 ジェスチャーや仕草を除いてアンネが意思表示をするのは初めてだ。正直なアンネの気持ちが聞けるまたとない機会に、ごくんと唾を飲み込んだ。

 書き終えたアンネはと向けて来た。内容は、




 とんでもないこと言い出した。

 □■□

 困ったな。奴隷が早速反抗期を迎えた。
 この場合どうするのが正解なんだ。

 我慢ならないと鼻を膨らませた奥山はアンネに怒鳴り散らす。

「ふざけるな! 僕が君のご主人様になるんだ!」

「そうです。いいかいアンネ。君に選択権はない。分かるだろ?」

 ゆっくりと諭す様に告げるが、態度は変わらず俺の服を離す様子はない。購入した際に奥山を見せておけば少しは対応も変わっただろうか。

「ま、まあ……いきなりの事でアンネも困惑しているのかもしれません。その前に、剣崎様へのざまぁの件の計画を立てていきましょう」

 問題を後回しにして、怒りの矛先を変える事にした。

「そ、そうだな。まずは出来る事からだ」

 お互い席についた。
 アンネはどうするのかと見ていると、何故か俺の膝に乗り始めた。

 わなわなと血管を浮かばせ怒りを募らせる奥山。
 俺だって好きでこんな事させている訳じゃない、我慢してくれ。


 俺は彼女の『歌唱』という能力について奥山に説明する。『黒竜王の呪い』という謎の効果によって沈黙デバフを永続的に貰っている状態と説明すれば簡単に納得してくれた。

「つまり、この子のデバフが解けなければ使い物にならないじゃないか」

「ひとつは黒竜王を倒してしまうというのが解決法の一つになります。こうした付与効果は大抵が術師の死亡によって解除されます。それは黒竜王についても同じです」

「いかにも強そうだが……居場所は知っているのか?」

「この国にはいません。恐らくは隣国の迷宮内部にでも潜んでいるのではないでしょうか。必然的にアンネは隣国から流れて来た奴隷なのでしょう」

 俺は膝の上に座るアンネをじいと見つめる。
 アンネはちゅっと俺の頬にキスをしてきた。

「おい」

「か、彼女なりのスキンシップです。隣国の文化に、異性の頬にキスをする挨拶の習慣がありまして今のもその一環でしょう」

 メチャクチャ嘘だがこれで騙されてくれ。
 それとアンネは一体俺の何がそこまで気に入ったんだ。

「全く。その子の為に、僕がわざわざ隣国に行くのか?」

 黒竜王を倒す以前に相当の手間がかかるのは間違いない。

 今日拾った奴隷の為に隣国に行ってドラゴン討伐。
 やっている事は完全に漫画の主人公だ。

 とはいえ、他に素質があって安上がりな奴隷はいなかった。

「解呪方法は他にないのか。

 諦め半分といった感じで奥山は呟いた。
 しかしその発言は今回に限ってはあまりに的を射たものだ。

「なんとか……なるかもしれません」

 □■□

 俺は一つの仮説を立てた。
 もしこれが成功すれば、全ての問題が丸く収まる事間違いない。

 ここからは企業秘密ですと奥山には言って、再び個室から出た。

『ご主人様、なにするの?』

 アンネは俺の行動が気になるらしい。
 進んでコミュニケーションを取ろうと筆を走らせる。

「いやだから俺はご主人様じゃないって」

 そんなやり取りをしながら俺は目的の人物を探す。
 丁度アイシャは休憩時間に入ったようで、カウンターの方にはいない。

 となると、来客室にいるはずだ。

 意を決して扉を開く。最悪奴隷商館に行った事はバレていい。
 面倒事にだけはなってくれるな、頼むから!

「奏、ちょ~とお願いがあるんだけど」

 ドアの隙間から顔だけを覗かせる。
 アイシャと奏はイラストを使ってゲームをしていた。

 典型的な言語習得用のゲームだ。
 俺も昔、英語の授業を習う時によく使っていた。

「なに、そんな改まって。なんかやらしい事?」

「いやあ……違うんだけど、その」

「ねえ。ドアの陰に誰か隠れてない?」

 バレた。ええい、なるようになれ!

 俺は扉を全開にして、アンネを見せつけた。

 その子誰、とか。どんな関係、とか。
 そんな鬼畜じみた答えが返ってくると予想して俺は目を瞑った。

 一秒、二秒。罵声は帰ってこない。

 薄らと目を開けた、そこには。

「え~なになに、この子! めっちゃ可愛い!!」

 ぷにぃ~とアンネの頬を摘まむ奏の姿。
 俺にあれこれ聞く前に、奏の琴線を刺激したらしい。

 良かった、と胸を撫で下ろした瞬間その現象は突然起きた。
 アンネの全身に見えない瘴気が一瞬宿り、消失した。

「なに、今の」

 相談開始三秒。問題解決。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

無能と追放された俺、死にかけて覚醒した古代秘術を極めて最強になる

仲山悠仁
ファンタジー
魔力がすべての世界で、“無能”と烙印を押された少年アレックスは、 成人儀式の日に家族と村から追放されてしまう。 守る者も帰る場所もなく、魔物が徘徊する森へ一人放り出された彼は、 そこで――同じように孤独を抱えた少女と出会う。 フレア。 彼女もまた、居場所を失い、ひとりで生きてきた者だった。 二人の出会いは偶然か、それとも運命か。 無能と呼ばれた少年が秘めていた“本当の力”、 そして世界を蝕む“黒い霧”の謎が、静かに動き始める。 孤独だった二人が、共に歩き出す始まりの物語。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...