二度目の世界で今度こそ俺は

開拓

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獣人国ゼルガルド王国編

#33セインの心

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 壁一面を絨毯で彩られた部屋の中央に敷かれた布団の中でセインは目を覚ました。
 体の痛みに顔を歪めながら包帯だらけの体をゆっくりと起こす。

「大丈夫か?」

 隣でセインのことを看病していたのであろうレイアに気が付き、セインはしばらく頭を抱え、今まで起こっていたことを思い出すようなそぶりをし、その後ゆっくりと口を開いた。

「サーリャは、戦ったみんなは無事ですか?」

 真っ先にでる言葉が自分ではなく他人の事というのに、レイアは少し驚いた様子だったが、すぐにセインの問いに答え始めた。

 戦いは無事勝利したこと。
 戦いから四日が経過していること。
 奴隷商スペイズを捕獲して幽閉している事。
 辛うじて命をつないだゲイルも同じく幽閉している事。
 犬族の精鋭達にも数名死者はいたが、ほとんどは同じく幽閉している事。
 こちらの戦士達の何名かが、命を失った事。

 そして……、命に別状はないが、サーリャがまだ目覚めていない事。

 セインは黙ったまま、只々話を聞いていた。
 レイアはセインの一番聞きたいであろうサーリャの状況を事細かく説明し始めた。


「つまり、命に別状はなくて、体の傷もほとんどが治癒魔法で完治していて、あとは目を覚ますのを待つのみってことですか?」

「ああ、そうじゃ」

「良かった……、なんて間違っても思えないですね。サーリャが傷ついたのは、僕のせいなんですから」

「そんなことはないじゃろう! お主は良くやったわ! 犬族族長を単身で倒せるものなぞそうそうおらんし、仮に倒すとしたら部族すべてを巻き込んだ戦じゃ! もっと大勢の者の命が失われておった! 奴隷商も捕まえられたか分からん! それに……、サーリャだってお主にそんな顔をさせたくて庇ったわけじゃないじゃろう……、お主の事が……だから……サーリャは……」

「……だからこそ、だからこそ僕は余計自分に腹が立つんですよ! 危うい戦いと分かっていながら油断し、過信し、万全を期さず、守りたい人を守れず、あまつさえ逆に庇ってもらって命を繋いでいる! 生きる事への覚悟を決意を俺は一番固めていなければ・・・・・・いや、固めていたはずだったんだ!」

「なぜそこまで……、なぜそこまで自分を追い込むのじゃ、なぜそこまで自分一人やろうとするのじゃ、周りには大勢お主のことを思ってくれる、お主を好いて頼って欲しいと思っている者だっておるじゃろう!」

「……これは、僕の中での誓いでありルールであり決意なんですよ。一度目を経験し、後悔して、二度目こそはと誓った、平凡な男のたった一つの……。僕は上手くやらなきゃいけない、上手く生きなきゃいけない、そして……守りたい人を守るんだ」

「……お主、何を言っておるのじゃ……」

 ゆっくりと布団から立ち上がり、レイアに手を差し伸べるセイン。

「レイア、スペイズのところに案内してください」
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