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本編
第4話 王都大橋完成祝賀会(↗↘)
しおりを挟むこの国の王都は、高い塀と堀に囲まれている。
緊急時には大門を閉じ、最悪の場合には橋を落としてしまえば外部からの接触が不可能になる。
そんな大事な大橋が、新たに生まれ変わった。
オレが王城に来る前に計画が立案され、3年かけて完成したらしい。
工事自体は、オレが王城に来て半年くらい経った頃から始まったので約2年!
着工するまで1年も掛けるなど、それだけ力を入れていたのか入れていたのかが判る大事業だ!
そしてこの度、完成披露祝賀会に参加するようにお達しが来た・・・なんでやねん!
オレ、関係ないじゃんと思ったら、参加メンバーに名前があった。
そういえば、魔道具課に入った頃、何か真新しい設計図と企画書を渡された事があったなぁ・・・
未だ何も書き込まれていない、真っ新な図面と書類。
意見を聞きたいから、思い付くまま書き込んでくれと言っていたな。
書いてあたのは最低限の公式だけで何も書き込まれていなかった。
だから、きっと顔を立ててくれたんだろうと思う・・・
幾つかは適当な公式を追加したり、書き込んだりしたけど大したことは書かなかった気が・・・
・・・あれ?
何かダメ元で、開発中の術式とか公式を書きまくった様な気がしてきた・・・
・・・やらかしたかな?!
まぁ、後で完成した設計図と書類を見せてもらおう
どちらにせよ魔道省魔道具課の一大事業だったらしく、全員参加が義務付けられたのでオレも参加義務があるらしい。
彼女の同伴者として恥ずかしくない様、式服を新調し、ダンスの練習をさせられたよ・・・
そして1か月が経過し、当日がやって来た。
今思えば、オレの幸せ最高潮だったあの日・・・
彼女は、赤いドレスがとてもよく似合っていた。
いつもは可愛い彼女が、その日は美しい淑女に変身していた。
何もせずに、隣に居てくれるだけで良いと言われていた俺は、只々彼女を見つめていただけだった。
名前を呼ばれて返事をした気がする。
何かを言われ、お辞儀をした気がする。
艶やかな黒髪がふわりと舞い、真紅のドレスが翻る・・・
夢か現か幻か・・・そんな一夜だった・・・
彼女の姿しか記憶に留めていなかった・・・
一夜明け、此処彼処から聞こえた噂話に冷や水を浴びせられた。
『王女殿下と伯爵様の、なんとお似合いな事!』
『ご結婚が決まれば、我が国は安泰だな!』
『一刻も早く、ご結婚の日時を発表して欲しいものだ!』
伯爵?
伯爵って、誰だ?
結婚?
何処かの伯爵と、結婚の話が出ているのか・・・?!
オレ達の婚約は、只の口約束・・・
正式なモノでは無い事に、今更ながら気が付いた・・・
貴族、ましてや王族なら正式に書面にて報告の義務がある。
オレは平民だから、後ろ楯や後見人の署名も必要だ。
オレは、どうしたら良いのだろうか。
彼女の為に・・・オレの為に・・・何をすれば良いのだろうか。
毎晩、悪夢がオレを襲う。
哀しそうな彼女の眼。
誰かに引きずられていく彼女。
助けを求めて手を伸ばす彼女。
何かを叫んでいる彼女。
そして、誰かに説得され項垂れる彼女。
泣いて、泣いて、泣いて、何かを決心した彼女。
立ち上がり、前を向く彼女。
優雅にして清楚に咲く花の様な、凛とした美しい彼女がそこに居た。
そこにオレの姿はない。
初めはオレに助けを求めていた彼女が、自分の力で立ち上がった。
そこにオレの姿は・・・無い・・・
1か月も経つと、オレの腹は決まった。
オレは、覚悟を決めた方が良いのだろう。
少しずつ、少しずつ、城から消える準備をする。
官舎の荷物は整理しよう。
いつでも旅に出られる様に!
幾つか作るのを頼まれていたな。
数が増えない前に、さっさと作ってしまおう。
開発中の魔道具は常に頭の隅に入れ、閃き次第取り掛かろう。
臨時窓口は、今までの覚え書きを見易く作り直して、いつでも引き継げるように。
研究室も、少し片づけよう。
素材や部品が入っている物に、見出しを付けておくか・・・
料理長と約束していた、北の大森林への旅は予定を組んでしまおう。
オレがいる間に行けると良いけど、料理長の休みが取れるかが問題だな。
あとは・・・
==========
2018年9月16日
アルファポリス投稿
もっちり道明寺♪作
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