追放されたおっさん、辺境ダンジョンで【家庭菜園】始めたら、伝説の植物が育ちすぎて

帝国妖異対策局

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畑は我が命!

第87話 マレニア参戦!

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 荒れる畑の戦場を見つめる視線。

 ふと、マレニアは視線を動かし、少し離れた場所で、豪邸の壁に隠れるようにして震えている男――ガイノスの姿を捉えた。

 彼は、ただ怯えた目で魔獣の動きを窺い、逃げる隙を探しているだけだ。リリアとコルトも、その隣で同じように縮こまっている。シルヴィの姿は見えない。

(……見苦しい……)

 マレニアの胸に、強い嫌悪感が込み上げてきた。

 仲間を見捨てて逃げ出し、自分が招いた災厄から目を背け、保身しか考えていない男。これが、自分が一時でもリーダーと仰ぎ、Aランクを目指そうとした男の、本当の姿。

 比べて、目の前で戦っている者たちはどうだ?

 子どもですら、必死に戦っている。その身を挺して魔獣に立ち向かっている。

 元ポーターと聞いていたアランでさえ、少なくとも逃げ出すことなく、仲間たちの戦いを見守っているように見えた。

 その対比が、マレニアの中で、ガイノスへの最後の未練を完全に断ち切った。

(もう、終わりね。こんな男の下で、剣を振るう理由など、どこにもない)

 今限りでダンジョンシーカーから脱退する。そう決めたマレニアだった。

 では、自分はどうするか?

 マレニアの視線は、再び、戦場の中心――畑の近くでオロオロしているアランへと向けられた。

 アラン・タシュオル。

 かつてガイノスに「無能なポーター」として追放された男。

 しかし、今、彼の周りには、獣人の子どもたちが、聖女と女騎士が、おそらく彼のために戦っている。

 アラン・タシュオルという謎の人物への、抗いがたい興味がマレニアの中に生まれた。

 マレニアは、腰の愛剣の柄を強く握りしめる。

 マレニアの中で、行動の指針は定まった。

(――行く!)

 アメジストの瞳に強い決意を宿し、マレニアは、今まさに狂暴化モンスターと子どもたち、騎士と聖女が激戦を繰り広げる畑へと、疾風のように駆け出した。

「そこをどきなさい!」 

 マレニアは、獣人の少年が苦戦しているように見えた一体の魔獣に狙いを定めると、鋭い声と共にその戦場へ割り込んだ!

 彼女の剣技は、王都でも評判だっただけあって、洗練され、無駄がない。流れるようなステップで魔獣の爪を躱し、返す刀でその首筋を正確に斬り裂く!

 スパァンッ!

 軽い手応えと共に、魔獣の首が宙を舞った。一撃。まさに、達人の域にある剣技だ。

 だがマレニアは、その手ごたえに魔獣の強靭さが、自分の予想より遥かに上を行っていることを知る。

(こ、こんな強い魔獣だったなんて!?)

 今の一体を仕留められたのは、獣人の少年が魔獣にある程度ダメージを与えてくれていたことと、たまたま技が綺麗に決まったからに過ぎない。

 そのこと理解して、マレニアの額に汗がにじむ。

「お姉ちゃん凄いね! ぼくも頑張るぞ!」 

 そう言うやいなや、獣人の少年は次の魔獣めがけて突進していく。
 
「貴女は!?」 

 女騎士ブリジットが、突如として現れた見慣れぬ剣士に驚き、警戒する。

「話は後! まずは、この魔獣を片付けましょう!」 

 マレニアは簡潔に答え、ブリジットと背中合わせになるような位置取りで、連携を意識した動きを見せる。

 ブリジットも、マレニアのただならぬ剣気と、敵意がないことを感じ取り、一瞬の逡巡の後、頷いた。

「承知した! 援護する!」 

 聖女セシリアも、突然現れた金髪の美少女剣士に驚きつつも、彼女が味方であると判断し、回復と支援の聖魔法の詠唱を始める。
 
 ミミーニャも、新たな助勢の登場に一瞬戸惑いながらも、持ち前の順応性で、マレニアの動きに合わせて魔獣を撹乱する。

 ブリジットの圧倒的なパワーと、セシリアの強力な支援、ミミーニャの俊敏な奇襲、そして子どもたちの奮戦。

 そこに、マレニアの正確無比な剣技が加わって、残っていた魔獣たちが、次々と討伐されていく。

 アランは、畑の惨状に心を痛めながらも、その怒涛の展開に、もはや口を挟むことすらできずにいた。

(なんか、また一人増えた?)

 やがて、最後の魔獣がブリジットの剣によって両断され、畑には静寂が戻った。

 豪邸の影には、ガイノス、リリア、コルトが、まだ怯えた様子で隠れていた。

「「「ひっ!?」」」

 三人の首根っこをレンのセカンダリボディがひっつかんだ。


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