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畑は我が命!
第88話 戦いの後の惨状
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すての魔獣が討伐され、戦いが終わった後には、奇妙な静寂が訪れた。
ただ風が吹き抜ける音と、戦闘の興奮冷めやらぬものたちの、わずかに荒い息遣いだけが聞こえる。
「みんな無事でよかった……魔獣を倒してくれて……ありがとうな」
駆け寄って来たミミーニャや子どもたちの頭を、やさしく撫でながら、アランは絞り出すような声で話しかける。
最初にトールが魔獣を吹き飛ばすのを目撃したとき、耳元でレンから
「この魔獣程度でトール様がお怪我されるようなことはありません。他のお子さまも同様です」
とは聞かされてはいたものの、やはり心配は心配だったのだが、子どもたちが鬼神のような戦いで魔獣を圧倒するのをみて、途中からアランは畑のことしか頭に入らなくなった。
「ブリジットもセシリアもありがとうな。それに……」
アランが目の前にいる女剣士に目を向ける。
「マレニアです」
「マレニアさんも、ありがとう。本当に助かったよ」
そう言って軽く頭を下げるアラン。
再び顔をあげたその目からは完全に――
ハイライトが失われていた。
彼は、魔獣たちが完全に沈黙したのを確認すると、ふらふらと、まるで夢遊病者のように、戦いの舞台となった畑へと歩き出した。
「………………」
声も出ない。
アランの目の前に広がっていたのは、もはや「畑」と呼ぶのも憚られるような、無残な光景だった。
丹精込めて耕した畝は踏み荒らされ、作物は根こそぎ引き抜かれたり、無惨に踏み潰されたりしている。
アランが特に愛情を注いでいた神トマトは、熟した実が地面に叩きつけられて潰れ、赤い汁が泥に混じっていた。
王都で手に入れたばかりの、新種の作物の苗が植えられていた区画も、巨大な足跡によって見る影もなく破壊されている。ファイアドレイク・ペッパーも、月光豆も……。
「畑……俺の……畑が……」
アランの声はひどくかすれ、その肩が震えていた。
「アラン……?」
「アラン様……」
ミミーニャやブリジットたちが、心配そうに声をかける。
アランが頭を抱えていると――
ザッ、ザッ、ザッ……。
規則正しい、複数の足音が近づいてきた。
アランが涙で滲む視線を上げると、そこには四体のセカンダリボディが、それぞれ何かを引きずるようにして、アランたちの元へと戻ってくる姿があった。
その「何か」とは――言うまでもなく、今回の騒動の元凶、ガイノス一行である。
「離せ! おまえら、何をする!」
ガイノスが、捕らえられた腕を振りほどこうと必死にもがいていた。
だが、見た目は華奢でも、セカンダリボディの力は異常に強く、抵抗は全く意味をなさない。
ガイノスの顔は恐怖と屈辱で歪み、鎧は泥と傷で見る影もなかった。
「いやっ! 助けて!」
リリアも、別のセカンダリボディに腕を掴まれ、引きずられている。彼女の美しい魔法使いのローブは破れ、顔は涙と土埃で汚れていた。
「は、離してください……!」
コルトも同様に、神官らしからぬ悲鳴を上げながら、無様に引きずられてくる。
そして、四人目のレンが引きずってきたのは、エルフの弓使い、シルヴィだった。
彼女は、他の三人のようにパニックを起こしてはいなかったが、その表情には明らかな不快感と、諦めの色が浮かんでいた。
豪邸の影に隠れてやり過ごそうとしていたところを、セカンダリボディにあっさりと発見され、捕縛されたらしい。
「対象四体の確保、完了しました」
セカンダリボディの一体が、プライマリのレンに淡々と報告する。プライマリのレンは、無表情に頷くだけだ。
こうしてガイノスたち四人は、アランたちと、騒ぎを聞きつけて集まってきた領民たちの前へと引き立てられた。
ただ風が吹き抜ける音と、戦闘の興奮冷めやらぬものたちの、わずかに荒い息遣いだけが聞こえる。
「みんな無事でよかった……魔獣を倒してくれて……ありがとうな」
駆け寄って来たミミーニャや子どもたちの頭を、やさしく撫でながら、アランは絞り出すような声で話しかける。
最初にトールが魔獣を吹き飛ばすのを目撃したとき、耳元でレンから
「この魔獣程度でトール様がお怪我されるようなことはありません。他のお子さまも同様です」
とは聞かされてはいたものの、やはり心配は心配だったのだが、子どもたちが鬼神のような戦いで魔獣を圧倒するのをみて、途中からアランは畑のことしか頭に入らなくなった。
「ブリジットもセシリアもありがとうな。それに……」
アランが目の前にいる女剣士に目を向ける。
「マレニアです」
「マレニアさんも、ありがとう。本当に助かったよ」
そう言って軽く頭を下げるアラン。
再び顔をあげたその目からは完全に――
ハイライトが失われていた。
彼は、魔獣たちが完全に沈黙したのを確認すると、ふらふらと、まるで夢遊病者のように、戦いの舞台となった畑へと歩き出した。
「………………」
声も出ない。
アランの目の前に広がっていたのは、もはや「畑」と呼ぶのも憚られるような、無残な光景だった。
丹精込めて耕した畝は踏み荒らされ、作物は根こそぎ引き抜かれたり、無惨に踏み潰されたりしている。
アランが特に愛情を注いでいた神トマトは、熟した実が地面に叩きつけられて潰れ、赤い汁が泥に混じっていた。
王都で手に入れたばかりの、新種の作物の苗が植えられていた区画も、巨大な足跡によって見る影もなく破壊されている。ファイアドレイク・ペッパーも、月光豆も……。
「畑……俺の……畑が……」
アランの声はひどくかすれ、その肩が震えていた。
「アラン……?」
「アラン様……」
ミミーニャやブリジットたちが、心配そうに声をかける。
アランが頭を抱えていると――
ザッ、ザッ、ザッ……。
規則正しい、複数の足音が近づいてきた。
アランが涙で滲む視線を上げると、そこには四体のセカンダリボディが、それぞれ何かを引きずるようにして、アランたちの元へと戻ってくる姿があった。
その「何か」とは――言うまでもなく、今回の騒動の元凶、ガイノス一行である。
「離せ! おまえら、何をする!」
ガイノスが、捕らえられた腕を振りほどこうと必死にもがいていた。
だが、見た目は華奢でも、セカンダリボディの力は異常に強く、抵抗は全く意味をなさない。
ガイノスの顔は恐怖と屈辱で歪み、鎧は泥と傷で見る影もなかった。
「いやっ! 助けて!」
リリアも、別のセカンダリボディに腕を掴まれ、引きずられている。彼女の美しい魔法使いのローブは破れ、顔は涙と土埃で汚れていた。
「は、離してください……!」
コルトも同様に、神官らしからぬ悲鳴を上げながら、無様に引きずられてくる。
そして、四人目のレンが引きずってきたのは、エルフの弓使い、シルヴィだった。
彼女は、他の三人のようにパニックを起こしてはいなかったが、その表情には明らかな不快感と、諦めの色が浮かんでいた。
豪邸の影に隠れてやり過ごそうとしていたところを、セカンダリボディにあっさりと発見され、捕縛されたらしい。
「対象四体の確保、完了しました」
セカンダリボディの一体が、プライマリのレンに淡々と報告する。プライマリのレンは、無表情に頷くだけだ。
こうしてガイノスたち四人は、アランたちと、騒ぎを聞きつけて集まってきた領民たちの前へと引き立てられた。
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