追放されたおっさん、辺境ダンジョンで【家庭菜園】始めたら、伝説の植物が育ちすぎて

帝国妖異対策局

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畑は我が命!

最終話 辺境の聖人領主アラン(39歳)

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 次の日、

「さあ、アラン様こちらへ。今日の疲れを癒しましょう」

 自分の寝室の、自分のベッドで、なぜかシルクのネグリジェ姿のブリジットが手招きしている。その眼には「何卒、お情けを!」と言わんばかりの圧があった。

 アランは親指を立てて部屋の外を指差し、出て行くように言った。 

 次の日はミミーニャが、その次の日はセシリアが、

 そして次の日、マレニアがアランのベッドに横たわっていた。

 そして次の日、再びレンガ横たわっているのを見たアラン――

「いい加減にしろぉぉぉぉっっ!!!」

 ついにアランは、我慢の限界を超えて絶叫する。

 その声は、豪邸中に響き渡ったかもしれない。

 そして翌日、アランは執務室に自称嫁を全員集めて説教をくらわすことにした。

「なんなのお前ら! 毎晩毎晩、俺のベッドに勝手に入ってきて! 俺はね。眠りを大切にするタイプの人間なの!」

 珍しいアランの剣幕に、レンもミミーニャも、ブリジットもセシリアも、そしてマレニアも顔を引きつらせていた。

 アランの説教は小一時間も続いた。

「そもそも、お前らのような、うら若き乙女たちが、俺みたいなおっさんのベッドに入ってくるもんじゃない! ここにいるみんな全員、俺の大事な仲間だし、家族みたいなもんだと思ってる。だからその……つまり、とにかくなわけだから、とりあえず俺のベッドに勝手に忍び込むのはやめてくれ」

 アランがで、強引に話をまとめようとした、

 そのとき――

「アラーン! 見て見てー! 畑に、なんか赤くて綺麗な実が、いっぱい育ってたよ!」

 犬耳少年のトールが、両手に一杯の赤い実を持って執務室に駆け込んできた。

 ご機嫌な笑顔のトールが、アランの目の前に差し出したもの。

 それはアランが王都で仕入れた『ファイアドレイク・ペッパー』の、見事に熟した赤い実だった。

 トールが摘んできた山盛りの赤い実が、その両手からポロポロと床に落ちる。

「………………え?」

 アランの動きが、ピタリと止まる。

 ファイアドレイク・ペッパー。

 それは、滋養強壮、精力増強、そして何より男性に対する『絶倫』効果が高いことが知られている、大人なら誰でも知っている有名な食材である。

 この実を食べた98歳のお爺ちゃんが、若い女性と子どもを3人も作って長生きしたという伝説は、酒場の席によく昇ってくる話である。

 もちろんアラン自身は、連日の執務での疲れをとるためにこの実を育てただけで、やましい気持ちは3割ほどしかなかった。

 結構あった。
 
 トールが手にしているファイアドレイク・ペッパーを見た、レン、ブリジット、セシリア、そしてマレニア。

 キラーン!✨

 ファイアドレイク・ペッパーのことを知らないミミーニャを除く、四人の美女たちの目が、まるで示し合わせたかのように一斉に妖しく光る!

「えっ、いや、こ、これは違くて……」

 アランが弁明に走るも、もはやそれに何の効果もなかった。

「旦那様も、ようやく私とのに本気になられたようですね」

 レンがいつの間にか隣に立ち、熱っぽい吐息でアランの耳元に囁く。

「えっ! ずるいぞ、レン! それなら先にアタシがアランの子供を産むんだからな!」

 ミミーニャがアランの腕に飛びついて、そう宣言する。

「わ、わたくしは、その後で構いませんので……ぜひ、アラン様のをいただければ……。その……アラン様もそのおつもりのようですし……」

 ブリジットが、顔を真っ赤にしながら、上目遣いで懇願してくる。

「聖なる女神ラーナリア様の意志に沿い、次代へ命を繋ぐためにも……わたくしもアラン様の子を、ぜひ授かりとうございます……!」

 セシリアが、恍惚こうこつとした表情で祈るように手を組む。

「そ、そいうことでしたら、わ、私も……できれば三人くらいは……も、もちろん順番は守るつもりです」

 マレニアまでもが、頬を染め、期待に満ちたアメジストの瞳でアランを見つめてくる!

 アランは両手を前に突き出して、必死に無駄な抵抗を続けようとする。

「ちょ、待って、聞いて! これは、そんなんじゃないから! そんなことするために育てたわけじゃないから! そんなやましい目的じゃ……な、ないから」

 だが、そんなアランの弁明も、続くトール少年の言葉が台無しにしてしまう。

「この赤い実、まだまだ沢山あったよ! とってこようか?」

 言い訳……不可能。

 アランは、迫りくる五人の美女たちの、本気の(そして色々な意味で危険な)オーラに完全に気圧され、最後の力を振り絞って叫んだ!

「あーっ! は、畑に、水やり忘れてたの思い出した! ちょっと行ってくる!」

 顔を真っ赤にしたアランは、ヒロインたちの追撃を振り切るように、猛ダッシュで玄関から飛び出し、一目散に、彼の唯一の聖域(畑)へと逃げ出すのだった。

「旦那様、お待ちください!」※レン
「アラン! この赤い実はなんなのさ! 教えて欲しいぞ!」※ミミーニャ
「アラン様、私にもぜひお情けを!」※ブリジット
「ラーナリア様の思し召しですわ! 今宵こそわたくしと夜伽を!」※セシリア
「で、できれば私もお願いします!」※マレニア

 アランの後ろ、五人の美女たちが、それぞれの想いを胸に追っていく。

 辺境の聖人領主アラン(39歳)。

 冒険者パーティを追放され、恋人と思い込んでいた女性に裏切られ、

 人間に絶望し、彷徨った末に辿り着いた辺境で、

 不思議な泉を見つけて、不思議な出会いをし、

 伝説級の野菜を育て、頼もしい仲間たちと共に魔神を追い払い、

 ついには辺境伯にまで昇りつめた男。

 そして今日、誕生日を迎えていた男。

 そんな彼のを奪うのが、いったい誰になるのか。

 それは誰にもわからない。



~ おしまい ~



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