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第23話 犬耳族のキーラとユコリンエマエヘマ!
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衛士の言葉を聞いたキモヲタは、ヘナヘナと腰が抜けて地面に尻をつきました。
キモヲタはこの亜人少女が以前、川辺で自分を襲ってきたケモミミ少女であることを確信したのです。
「どうしてこんな酷い事に……」
衛士は再びキモヲタを引き起こしながら、亜人少女の話を続けます。
「俺は取調官との雑談中に聞いただけだが、どうも川辺で動けなくなったところを巡回中の人類軍部隊に捕えられたようでな。それが運の悪いことにモリトール隊っていう、人類至上主義の狂信者部隊だったんだ。それで連中に拷問をされてあんなことになったらしい」
「か……川辺で動けなくなって……でござるか……」
(ま……まさか我輩のスキルで動けなくなっていたときに……)
キモヲタの顔は青ざめ、身体に大きな石を乗せられたかのような胸苦しさを感じました。
「お、おいどうした? 顔色が悪いぞ、大丈夫か?」
「……この娘にするでござる」
「はっ? 何言ってんだ? どんな怨みを買ったのか知らんが、この子はお前のことを殺す気満々みたいだぞ?」
そう言って衛士が亜人少女を指差すと、少女は顔に憎悪を浮かべてキモヲタに飛び掛かろうとするのでした。
ガシャンッ!
大きな音を立てて檻が揺れるのにビビリはしたものの、キモヲタの目は少女の頭にある血の塊が痛々しい傷痕に向けられているのでした。
「奴隷紋を入れれば、殺されることはないのでござろう?」
「それはそうだが、この調子じゃ、こいつはアンタに逆らい続けるかもしれねぇ。それでアンタは奴隷紋を使って無理やり従わせることになる。それはお互いにとってかなり負担になると思うんだが……」
「そうでござろうな。けど……えっと……その……放っておけないのでござるよ」
自分が原因で、この亜人少女が残酷な運命を辿ることになったかもしれないとは言えず、キモヲタは俯いてしまいました。
そんなキモヲタを見た衛士は、深くため息を吐いた後、キモヲタに向かって言いました。
「あんたには何か事情があって、何かを覚悟して決めたってことは分かった。そもそも客が購入を決めたってのに、俺がとやかく言う話でもないからな。それじゃこの娘でいいんだな?」
「この娘でお願いするでござる」
「分かった。じゃぁ手続きしに行こう」
そう言って衛士は奴隷契約の準備をするために、キモヲタを案内しようとしました。
歩き始める前に、衛士はキモヲタを振り返って言いました。
「……この子は、別に俺と何の縁もゆかりもない。ないんだが、この子がここに来ることになった経緯には同情してるし、これからどうなるのか全く関心がないわけじゃない……それだけは覚えておいてくれ」
キモヲタは、衛士の目をしっかりと見据えて応えました。
「心得たでござるよ」
衛士はキモヲタの目を見て、フッと微笑むと再びキモヲタの先導して歩き始めるのでした。
~ 奴隷契約後 ~
無事に亜人少女の奴隷契約手続きが終わり、なんとか少女のうなじへ奴隷紋の印が施され、その後キモヲタに引き渡されることとなりました。
そこからカリヤット行きの乗合馬車に辿り着くまでの道のりは、とても長いものとなりました。
「フーッ! この白豚! オーク野郎! ボクに触るな!」
道中、両手を縛られたケモミミ少女が、ロープを引っ張るキモヲタに対して抵抗を続けたからです。
「触ってるのはロープでお主ではないでござるわ! だいたいお前のような貧乳に我輩は全く興味がないのでござる! 貧乳はステータス!? はぁあああ! 負け犬の遠吠えでござるわぁあ!」
「うるさいっ! このドフトゥ! ドフトゥ!」
「やかましいのはお主でござろうが! このツルペタ! フルフラット甲板! えぇい! さっさと来るでござる!」
女の子に対してここまでキレるのは、キモヲタにとって初めてのことでした。普段のキモヲタは、美人やカワイイ女の子には絶対に強気に出れないどころか、一瞬でハイパー土下座を決めるようなヘタレを自他共に自認しているほどです。
この言い合いにしても、最初のうちはキモヲタがオドオドとキョドリながら、なんとか犬耳族の少女を宥めようと努めていました。
「フーッ! ドフトゥ! ユコリンエマエヘマ!」
しかし、少女のこの罵倒が切っ掛けとなって、キモヲタが怒りを爆発させることになったのでした。
先の言葉を翻訳すると、
「おまえ! このオーク野郎! 家畜しか相手に出来ない童貞野郎!」
となります。大変お下品な発言です。それでも、もしこれが日本語で罵倒されていたなら、キモヲタは「お、お、女の子がそんなこと言ってはいかんでござる!」とでも返してオドオドし続けていたことでしょう。
しかし、その罵倒が魔族語であった為に、キモヲタは少女の罵倒を次のように聞き取ってしまったのです。
「おまえ! このオーク野郎! ユーコリンしか相手に出来ない童貞野郎!」
ユーコリンは、前世でキモヲタが一番推しだったVtuber。キモヲタにとって、ユーコリンはまさに神に等しい存在でした。
彼女の配信で中傷コメントを目にしたときは、あらゆる複垢を使って中傷コメントに反論し、反論し過ぎてアカウントが凍結されるのはいつものこと。また凍結されたらされたでその中傷が愚かで的外れで間違っているかを、ゆっくりボイスの長編解説動画を作って投稿するほどでした。
「この下郎が……我が神聖にして侵すべからずユーコリンに対して何たる不敬、何たる罵詈雑言。たとえ天や運営が許しても、この我輩は絶対に許さんでござるぞぉおおおおお!」
こうしてキモヲタは、少女の傷に対する負い目もすっかりとどこかへ消し飛んで、ユーコリンを侮辱した犬耳族の少女に対して一切の容赦も躊躇もなくしてしまったのでした。
「ワーギャー! ギャー!」※少女
「おおおおおでござるぅっぅ」※キモヲタ
大声で罵り合う二人が乗合馬車の待合場所に到着したのは、最後の馬車が収容所を出発した後のことでした。
キモヲタはこの亜人少女が以前、川辺で自分を襲ってきたケモミミ少女であることを確信したのです。
「どうしてこんな酷い事に……」
衛士は再びキモヲタを引き起こしながら、亜人少女の話を続けます。
「俺は取調官との雑談中に聞いただけだが、どうも川辺で動けなくなったところを巡回中の人類軍部隊に捕えられたようでな。それが運の悪いことにモリトール隊っていう、人類至上主義の狂信者部隊だったんだ。それで連中に拷問をされてあんなことになったらしい」
「か……川辺で動けなくなって……でござるか……」
(ま……まさか我輩のスキルで動けなくなっていたときに……)
キモヲタの顔は青ざめ、身体に大きな石を乗せられたかのような胸苦しさを感じました。
「お、おいどうした? 顔色が悪いぞ、大丈夫か?」
「……この娘にするでござる」
「はっ? 何言ってんだ? どんな怨みを買ったのか知らんが、この子はお前のことを殺す気満々みたいだぞ?」
そう言って衛士が亜人少女を指差すと、少女は顔に憎悪を浮かべてキモヲタに飛び掛かろうとするのでした。
ガシャンッ!
大きな音を立てて檻が揺れるのにビビリはしたものの、キモヲタの目は少女の頭にある血の塊が痛々しい傷痕に向けられているのでした。
「奴隷紋を入れれば、殺されることはないのでござろう?」
「それはそうだが、この調子じゃ、こいつはアンタに逆らい続けるかもしれねぇ。それでアンタは奴隷紋を使って無理やり従わせることになる。それはお互いにとってかなり負担になると思うんだが……」
「そうでござろうな。けど……えっと……その……放っておけないのでござるよ」
自分が原因で、この亜人少女が残酷な運命を辿ることになったかもしれないとは言えず、キモヲタは俯いてしまいました。
そんなキモヲタを見た衛士は、深くため息を吐いた後、キモヲタに向かって言いました。
「あんたには何か事情があって、何かを覚悟して決めたってことは分かった。そもそも客が購入を決めたってのに、俺がとやかく言う話でもないからな。それじゃこの娘でいいんだな?」
「この娘でお願いするでござる」
「分かった。じゃぁ手続きしに行こう」
そう言って衛士は奴隷契約の準備をするために、キモヲタを案内しようとしました。
歩き始める前に、衛士はキモヲタを振り返って言いました。
「……この子は、別に俺と何の縁もゆかりもない。ないんだが、この子がここに来ることになった経緯には同情してるし、これからどうなるのか全く関心がないわけじゃない……それだけは覚えておいてくれ」
キモヲタは、衛士の目をしっかりと見据えて応えました。
「心得たでござるよ」
衛士はキモヲタの目を見て、フッと微笑むと再びキモヲタの先導して歩き始めるのでした。
~ 奴隷契約後 ~
無事に亜人少女の奴隷契約手続きが終わり、なんとか少女のうなじへ奴隷紋の印が施され、その後キモヲタに引き渡されることとなりました。
そこからカリヤット行きの乗合馬車に辿り着くまでの道のりは、とても長いものとなりました。
「フーッ! この白豚! オーク野郎! ボクに触るな!」
道中、両手を縛られたケモミミ少女が、ロープを引っ張るキモヲタに対して抵抗を続けたからです。
「触ってるのはロープでお主ではないでござるわ! だいたいお前のような貧乳に我輩は全く興味がないのでござる! 貧乳はステータス!? はぁあああ! 負け犬の遠吠えでござるわぁあ!」
「うるさいっ! このドフトゥ! ドフトゥ!」
「やかましいのはお主でござろうが! このツルペタ! フルフラット甲板! えぇい! さっさと来るでござる!」
女の子に対してここまでキレるのは、キモヲタにとって初めてのことでした。普段のキモヲタは、美人やカワイイ女の子には絶対に強気に出れないどころか、一瞬でハイパー土下座を決めるようなヘタレを自他共に自認しているほどです。
この言い合いにしても、最初のうちはキモヲタがオドオドとキョドリながら、なんとか犬耳族の少女を宥めようと努めていました。
「フーッ! ドフトゥ! ユコリンエマエヘマ!」
しかし、少女のこの罵倒が切っ掛けとなって、キモヲタが怒りを爆発させることになったのでした。
先の言葉を翻訳すると、
「おまえ! このオーク野郎! 家畜しか相手に出来ない童貞野郎!」
となります。大変お下品な発言です。それでも、もしこれが日本語で罵倒されていたなら、キモヲタは「お、お、女の子がそんなこと言ってはいかんでござる!」とでも返してオドオドし続けていたことでしょう。
しかし、その罵倒が魔族語であった為に、キモヲタは少女の罵倒を次のように聞き取ってしまったのです。
「おまえ! このオーク野郎! ユーコリンしか相手に出来ない童貞野郎!」
ユーコリンは、前世でキモヲタが一番推しだったVtuber。キモヲタにとって、ユーコリンはまさに神に等しい存在でした。
彼女の配信で中傷コメントを目にしたときは、あらゆる複垢を使って中傷コメントに反論し、反論し過ぎてアカウントが凍結されるのはいつものこと。また凍結されたらされたでその中傷が愚かで的外れで間違っているかを、ゆっくりボイスの長編解説動画を作って投稿するほどでした。
「この下郎が……我が神聖にして侵すべからずユーコリンに対して何たる不敬、何たる罵詈雑言。たとえ天や運営が許しても、この我輩は絶対に許さんでござるぞぉおおおおお!」
こうしてキモヲタは、少女の傷に対する負い目もすっかりとどこかへ消し飛んで、ユーコリンを侮辱した犬耳族の少女に対して一切の容赦も躊躇もなくしてしまったのでした。
「ワーギャー! ギャー!」※少女
「おおおおおでござるぅっぅ」※キモヲタ
大声で罵り合う二人が乗合馬車の待合場所に到着したのは、最後の馬車が収容所を出発した後のことでした。
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