キモヲタ男爵奮戦記 ～ 天使にもらったチートなスキルで成り上がる……はずだったでござるよトホホ ～

第47話 あんな化け物のどうにかなるはずない……なりましたな！？

　青く燃える瞳を持つ黒髪の美少女と、エメラルドの瞳を持つ金髪の美女に迫られて、キモヲタは頭がフットーしてしまいました。

　いまのキモヲタは二人のお願いが脳内エロ同人変換されています。

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～ キモヲタの妄想 ～

　セリアが青みが掛かった白い胸の谷間をキモヲタに寄せ、ぷっくりとして潤うるおいのある艶つややかな唇を見せつけるように舐めまわします。

「あぁぁん❤　キ・モ・ヲ・タ❤　あんなスライムなんて、あなたのたくましい聖剣エクスカリバーでいちころよね❤　あっはぁ～ん❤」

　エルミアナがエメラルドの瞳をウルウルさせながら、やはり白い谷間をキモヲタに寄せ、ぷっくりとして濡れた桃色の唇でささやきます。

「あんっ❤　キモヲタは私の胸が好きなんでしょ？　だっていつも見ていましたよね。　あのスライムを倒してくれたら、ここに顔を埋めてもいいのですよ❤　うっふ～ん❤」

「も、もちろん、我輩に任せるでござるよ！　いくら大きかろうと所詮はスライムでござる！　我輩の聖剣……」
　
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　グイグイッ！

「キモヲタ殿！」

「ぬはっ！？　我輩は一体！？」
　
　エルミアナに肩を強くゆすぶられて、キモヲタはようやく我に返りました。

「大丈夫ですか？　あなたのスキルであのスライムを何とかできないか教えて欲しいのです」

　我に返ってみると、二人は確かにキモヲタに近寄ってきてはいましたが、その表情にエロ要素は一切なく、それどころか非常に切迫している様子。

　キモヲタの妄想はすっかりと消し飛んでしまいました。

「あの巨大スライムを？　我輩のスキルで？　うーむ、我輩のスキルから考えるとあのスライムにお尻があるようには見えないので……何とかできないかと言われても……」

　どうしたものかと、キモヲタが巨大スライムをじっと見つめながら考えていると、ふとスライムと視線が合った気がしました。

（おっ？　向こうも我輩を感知したりできるのですかな……って）

　突然、スライムの表面にたくさんの目が浮かび上がり、一斉にキモヲタへと向けられました。

「ぎょええぇえええええ！　目が！ 目が！ 目が！ 目が！ 目が一杯でござるぅぅぅ！」

　それだけではありません。悍ましい牙を生やした口も、同じように次々と浮き上がってきたのです。

「はわわわわわ！　いったいアレは何なんでござるかぁあぁ！」

　と、キモヲタが叫んだ瞬間、キモヲタの視界の中に突然メッセージが表示されました。

『フワーデ図鑑が参照できるようになりました。参照しますか？　ＹＥＳ／ＮＯ』

　キモヲタは「ＹＥＳ」と即答すると、目の前にスクリーンが現れ、そこにスライムの画像と共に解説が表示されます。

　そこには次のような解説が丸文字フォントで記載されていました。

『これはねー、ショゴタンっていう妖異だよ！　水で練ってる途中のコンクリートみたいな表面に、目や口が沢山あって気持ち悪いよね！　

　動きはノロノロノロマさんなんだけど、のんびり観察してると、槍みたいな触手が伸びてきて急に刺してくるから要注意！　

　でも基本ノロマさんなので避けるのは簡単！　槍みたいな触手は伸び始めたときには刺す位置が固定されてるの。なので動き続けてさえいれば、まず当たらないから安心して！

　体内に核石があってそれを破壊すれば、へにゃっーてなってそのまま消えちゃうんだけど、練る練るコンクリートみたいな表面はけっこう固いから、普通の武器じゃちょっと厳しいかも。

　火で焼きころすのはドラゴンブレスくらいの火力がないと難しいかな。だけど、火には敏感に反応するから誘導するのに使えるかもね！

　あと、このショゴタンからは間違いなく精神攻撃を受けることになるよ。かなりの魔法耐性か精神対抗スキルを持ってないと、頭がパーになっちゃうから気をつけて！』

「……なんだか解説が妙にくだけ過ぎてて不安でござるが、とりあえずわかったでござる」

「何かわかったのですかキモヲタ殿！」※エルミアナ
「あいつを倒せるの？」※セリア

　期待に顔を輝かせる二人に、キモヲタは自信満々に答えました。

「我輩には無理……ということがわかったでござる」

　自信満々に挫折宣言したキモヲタの目が、ふとショゴタンの微妙な動きを捉えました。

　ジワジワ。

　ジワジワ。

　ジワジワ。

　ショゴタンの表面に浮かび上がる無数の目。キモヲタはそのすべてが自分を見据えているような気がしていました。

　ジワジワ。

　ジワジワ。

　ジワジワ。

（間違いない！　あの化け物、我輩の方に向ってきているでござるぅぅぅ！）

　一見するとノロマなように見えるショゴタン。その巨大さを換算して、キモヲタは彼我の距離を推測してみました。その結果、ノロマなはずのショゴタンが意外に速く移動していることに気づいてしまったのです。

「ちょ、お二人とも！　あの化け物がこっちに気づいて近づいますぞ！　さっさと逃げましょう！」

　回れ右するキモヲタにエルミアナが声をかけます。
　
「しかし、ユリウス殿とキーラ殿が……」

　スヤスヤと眠っている二人を見て、キモヲタの足が止まりました。フワーデ図鑑の解説を信じるのであれば、いま二人を起こしたところで、どちらも正気を保っていられないかもしれません。

「仕方ないでござる。お二方！　ユリアス殿とキーラたんを連れて先に逃げてくだされ！　なんとかあの化け物の足止めをやってみるでござるよ！」

　キモヲタの言葉を聞いて、セリアとエルミアナが一切ためらうことなく、ユリアスとキーラを背負って森のなかへ消えていきました。
　
　キモヲタとしては、せめて「それではキモヲタ殿が危険です！」とか「私も残るわ！」とか、ひと言くらいあっても良かったのでは？　と、胸に切なさを感じるキモヲタ。

　もうこうなったらやるしかないと、キモヲタは腹をくくって両腕をショゴタンの方へと伸ばし【お尻痒くな～る】を発動するのでした。

「ハァァァァァ！　我が全力のお尻カイカイ攻撃でござる！」

（これでどうにかなるとは思えんでござるが……）

　そして、その結果――

　どうにかなりました。