キモヲタ男爵奮戦記～天使にもらったチートなスキルで成り上がる……はずだったでござるよトホホ～

帝国妖異対策局

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第52話　ついに誕生！キモヲタ男爵！でござる

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　キーラの目の前でパンティを広げたときには、キモヲタは頬を引っ叩ひっぱたかれることを覚悟していました。

　ところがパンティを見たキーラの瞳はキラキラと輝いて、キモヲタに最高の笑顔を見せてくれたのでした。キーラはパンティを受け取ると、そのまま走って自分の部屋に戻り、そしてすぐに戻ってきました。

「ほら見てキモヲタ！　キモヲタがプレゼントしてくれたシャンティ、すっごく履き心地がいいよ！　動きやすくて、サラサラでフワフワで、とっても気持ちいいんだよ！！」

　喜び一杯でキモヲタにパンティの履き心地を報告するキーラ。スカートを捲り上げて、キモヲタに縞パン（桃）を見せてきました。

「ここについてる小さなリボンがとっても可愛いい！　キモヲタありがとう！」

「ちょっ！　キーラたん！　パンティはそんな風に他人に見せるものではござらん！　とくに男には見せてはならんでござるよ！」
　
「そんなの当たり前だよ！？　キモヲタ以外の男の人には見せないし！　あっ、エルミアナたちにも見せてくるね！」

　大はしゃぎが止まらないキーラは、キモヲタの制止も間に合わず、ビューッと部屋を飛び出して行ってしまいました。
　
　キーラが出て行った後、キモヲタは脳内録画したキーラのパンティを脳内再生しながら、顎に手を当てて考えました。

「あのパンティは、何か理由をこじつけて我輩が洗濯するようにいたそう」

　ニチャリとした笑顔を浮かべるキモヲタなのでした。

～カレー配給～

　６００食分あったカレーでしたが、三日後には残り１００食にまで減っていました。そんなに早くカレーが減ってしまったのは、キモヲタが村の人々にカレーを振舞っていたためです。

　最初は、宿屋のおかみさんの一言から始まりました。

「なにこれ！　カレーっていうのかい？　凄く美味しいじゃない！」

　宿でお世話になっているお礼に、キモヲタがおかみさんにカレーを振る舞ったところ、たちまち宿中の人々が匂いにつられて集まってきたのです。

　あれよあれよという間に１５食のカレーが無くなってしまいました。　

　その後、村中の人々が次々とカレーを食べにやってくると、キモヲタは次々とカレーを振舞い続けることになりました。

　もともとが、オドオドしてハッキリ断れないキモヲタの性格が災いしたのは確かです。

　しかし、ショゴタンや魔王軍の襲撃で家や家族を失っている人々を見れば、いくら自分ファーストなキモヲタも、彼らに少しでも元気になって欲しいと惜しまずカレーを振る舞い続けるのでした。

「それにしても、これは本当に美味しい食べ物だね。何が入ってるんだい？　肉とイモはわかるんだけど」

　おかみさんにカレーの材料について聞かれたキモヲタは、レトルトパックに記載されている原材料名を読み上げました。

「牛肉の他に、マカ粉末、ニンニク、えっと男爵イモが入ってござるな」

「えっ！？　これって男爵が作ったイモなのかい？　えっ！？　キモヲタ……キモヲタ様は男爵様だったのかい！？」
　
　勘違いするおかみさんの言葉を耳にした酔っぱらいの一人が、キモヲタに向ってエールのジョッキを掲げます。

「男爵様！　魔族に村を壊されて苦しんでる俺たちに、こんな旨いものを振る舞ってくれてありがとう！　みんな！　キモヲタ男爵に感謝を捧げようぜ！」

　宿屋の食堂に集まっている人々が、次々にキモヲタを称える声をあげました。

「キモヲタ男爵！　化け物から村を助けてくださっただけでなく、俺たちに素晴らしい料理を分けてくださってありがとう！　お仲間の皆様もありがとう！」

「男爵様！ありがとう！　冒険者の皆さん、ありがとう！」

「キモヲタ男爵！　キーモヲタ！　キーモヲタ！　キーモヲタ！」

「「「キーモヲタ！　キーモヲタ！　キーモヲタ！」」」

「えっ、ちょ、我輩は貴族などではありませんぞ。男爵などでは……」

「「「キーモヲタ！　キーモヲタ！　キーモヲタ！」」」

　こうして――

　キモヲタ男爵という名称がここアネーシャ村で誕生しました。その名はやがて大陸中の食通の間に広まっていくことなります。

　その結果、キモヲタのあずかり知らぬところで「キモヲタ男爵カレー」なる肉野菜煮込みスープが、あちこちの高級レストランで提供されるようになるのでした。

　それは、本当のカレーを知らない貴族や商人たちの間で大変な人気を博すことになるのでしたが、キモヲタにロイヤリティ料が入ることもないのでした。

～その晩～

　大量にあったカレーが１００食まで減ってくると、キモヲタも配給にためらいを感じるようになってきました。

　このまま村に留まっていれば、いずれ全てのカレーを出しきってしまうことは明白でした。とくに子どもたちから期待に満ちた目を向けられると、絶対に断れない自信がキモヲタにはありました。

「こうなっては早々にこの村を出るしかありませんぞ！　残りのカレーは全て我輩のものでござる！」

　そう決意したキモヲタは、すぐ村を出発するようユリアスに相談することにしました。

　そうしてキモヲタがユリウスの部屋に入って２分後――

「どうしてこうなったでござる……？」

　キモヲタは、ユリウスとセリアとエルミアナに囲まれて、その真ん中で正座させられていたのでした。

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