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第89話 リアル幼女じゃ火はつかないのでござる
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カザン王国の国境で、入国許可証の交付を待っているキモヲタ一行。
今日も今日とて、目をキラキラさせている子供たちに見つめられながら、キモヲタはカレーとご飯パックを温めています。
キモヲタがカレーを振る舞って以降、キモヲタは子供たちに完全に懐かれてしまいました。
子供たちの中でも一番幼いリリィは、キモヲタのことを「お兄ちゃん」と呼んで、最もキモヲタに懐いています。
「リリィ殿……どうして我輩の膝の上でカレーを食べるのでござるか」
「この方が美味しいよ!」
リリィが満面の笑顔で答えました。
「そ、そうでござるか……」
そんなキモヲタとリリィが仲良く食べている姿を見て、キーラが微妙に不機嫌になります。
「キモヲタ……その子ばっかり構ってる……」
キモヲタの膝に乗っているのが、エルミアナやセリアだったら、キーラは嫉妬の怒りをキモヲタにぶつけることができたでしょう。
しかし、相手はキーラよりもずっと幼い女の子。まさか怒りをぶつけるわけにもいかず、イライラを募らせるしかなかったのでした。
そんなご機嫌斜めなキーラに困惑するキモヲタの下に、セリアが空になったご飯パックを持ってやってきました。
「キモヲタがモテモテになって、私も嬉しい。ただカレーだけはちゃんと管理して欲しい。特に私の分……お代わりあるよね?」
お代わりのカレーを準備しながら、キモヲタはセリアに愚痴ります。
「子供にモテても全然嬉しくないのでござる。それにこの子だってきっと年頃になったら、キモヲタってキモイとか言い始めるのでござるよ」
「リリィそんなこと言わないよ! お兄ちゃんはキモくないよ! って、どうして泣いてるの!?」
キモヲタは、リリィの優しい心遣いと、こんな小さな子にまでも同情を呼んでしまう自分という存在の切なさに、思わず涙を流してしまうのでした。
「うっ……うっ……あと5年後くらいにも同じことを言って欲しかったでござる……」
そんなキモヲタをセリアは呆れて眺めていました。
「5年って……まだまだこの子は子供じゃないですか。それになぜ過去形なんですか」
「それはもう動かしようのない宿命のディスティニーの定めだからなのでござる」
よしよしと言いながらリリィがキモヲタの頭を撫でる程に、キモヲタの悲しみは深くなってしまうのでした。
ちなみに、リアル幼女にいくらよしよしされたところで、キモヲタのエロエンジンには全く火が入らないのでした。
~ 辿り着いた女 ~
「申し訳ないね、お嬢さん。この推薦状では、この列に並んでもらうしかないんだよ」
国境の検問所の前で、ローブを被った若い女性が兵士から書状を返されていました。
「あら残念ですわ。仕方ありません。ここで他の皆さんと同じように待たせていただくことに致しますわ」
そう言って女性は、兵士から番号が記された木札を受け取ると、くるりと振り返って元来た道を引き返し始めました。
エレナ・ヴァンディールが、ローブを脱ぐと、その美しい赤毛が風になびきます。彼女はアメジストのような瞳を持つ目を細めながら、舌打ちをするのでした。
「ちっ、あのボンボンの推薦状、全く使えないじゃないの! こんなことなら、あんなにサービスしてあげるんじゃなかった」
検問ではあっさりと引き下がった彼女でしたが、もう少し粘ってみた方が良かったかと少し後悔し始めていました。しかし、すぐに思い直します。
「まぁ、あそこで下手にゴネて顔を覚えられるのもマズイしね……」
エレナは女詐欺師で、アシハブア王国で詐欺を働いていたところをしくじってしまい、現在、逃亡中の身なのでした。
ルートリア連邦に逃げ延びたエレナは、途中で知り合った貴族の息子に取り入って、彼からカザン王国にある商人ギルドへの紹介状を手に入れます。そしてカザンの新天地で、今度こそ成功のチャンスを掴み取ろうと旅を続けていたのでした。
貧民街に生まれ、両親に捨てられて孤児院で育ってきたエレナ。成長すると、自分が人並以上の美貌を持っていることを自覚するようになりました。
彼女の美しさに翻弄された男を手玉にとって利用し、仕えなくなったら捨てるということを繰り返してきた結果、彼女は女詐欺師に行きついてしまったのです。
「こうなったら、なるべく早い番号を持った連中の中に入り込むしかないわね」
そうつぶやくと、エレナは入国許可証の発行を待つ人々のテントが張られた場所を歩き始めるのでした。
今日も今日とて、目をキラキラさせている子供たちに見つめられながら、キモヲタはカレーとご飯パックを温めています。
キモヲタがカレーを振る舞って以降、キモヲタは子供たちに完全に懐かれてしまいました。
子供たちの中でも一番幼いリリィは、キモヲタのことを「お兄ちゃん」と呼んで、最もキモヲタに懐いています。
「リリィ殿……どうして我輩の膝の上でカレーを食べるのでござるか」
「この方が美味しいよ!」
リリィが満面の笑顔で答えました。
「そ、そうでござるか……」
そんなキモヲタとリリィが仲良く食べている姿を見て、キーラが微妙に不機嫌になります。
「キモヲタ……その子ばっかり構ってる……」
キモヲタの膝に乗っているのが、エルミアナやセリアだったら、キーラは嫉妬の怒りをキモヲタにぶつけることができたでしょう。
しかし、相手はキーラよりもずっと幼い女の子。まさか怒りをぶつけるわけにもいかず、イライラを募らせるしかなかったのでした。
そんなご機嫌斜めなキーラに困惑するキモヲタの下に、セリアが空になったご飯パックを持ってやってきました。
「キモヲタがモテモテになって、私も嬉しい。ただカレーだけはちゃんと管理して欲しい。特に私の分……お代わりあるよね?」
お代わりのカレーを準備しながら、キモヲタはセリアに愚痴ります。
「子供にモテても全然嬉しくないのでござる。それにこの子だってきっと年頃になったら、キモヲタってキモイとか言い始めるのでござるよ」
「リリィそんなこと言わないよ! お兄ちゃんはキモくないよ! って、どうして泣いてるの!?」
キモヲタは、リリィの優しい心遣いと、こんな小さな子にまでも同情を呼んでしまう自分という存在の切なさに、思わず涙を流してしまうのでした。
「うっ……うっ……あと5年後くらいにも同じことを言って欲しかったでござる……」
そんなキモヲタをセリアは呆れて眺めていました。
「5年って……まだまだこの子は子供じゃないですか。それになぜ過去形なんですか」
「それはもう動かしようのない宿命のディスティニーの定めだからなのでござる」
よしよしと言いながらリリィがキモヲタの頭を撫でる程に、キモヲタの悲しみは深くなってしまうのでした。
ちなみに、リアル幼女にいくらよしよしされたところで、キモヲタのエロエンジンには全く火が入らないのでした。
~ 辿り着いた女 ~
「申し訳ないね、お嬢さん。この推薦状では、この列に並んでもらうしかないんだよ」
国境の検問所の前で、ローブを被った若い女性が兵士から書状を返されていました。
「あら残念ですわ。仕方ありません。ここで他の皆さんと同じように待たせていただくことに致しますわ」
そう言って女性は、兵士から番号が記された木札を受け取ると、くるりと振り返って元来た道を引き返し始めました。
エレナ・ヴァンディールが、ローブを脱ぐと、その美しい赤毛が風になびきます。彼女はアメジストのような瞳を持つ目を細めながら、舌打ちをするのでした。
「ちっ、あのボンボンの推薦状、全く使えないじゃないの! こんなことなら、あんなにサービスしてあげるんじゃなかった」
検問ではあっさりと引き下がった彼女でしたが、もう少し粘ってみた方が良かったかと少し後悔し始めていました。しかし、すぐに思い直します。
「まぁ、あそこで下手にゴネて顔を覚えられるのもマズイしね……」
エレナは女詐欺師で、アシハブア王国で詐欺を働いていたところをしくじってしまい、現在、逃亡中の身なのでした。
ルートリア連邦に逃げ延びたエレナは、途中で知り合った貴族の息子に取り入って、彼からカザン王国にある商人ギルドへの紹介状を手に入れます。そしてカザンの新天地で、今度こそ成功のチャンスを掴み取ろうと旅を続けていたのでした。
貧民街に生まれ、両親に捨てられて孤児院で育ってきたエレナ。成長すると、自分が人並以上の美貌を持っていることを自覚するようになりました。
彼女の美しさに翻弄された男を手玉にとって利用し、仕えなくなったら捨てるということを繰り返してきた結果、彼女は女詐欺師に行きついてしまったのです。
「こうなったら、なるべく早い番号を持った連中の中に入り込むしかないわね」
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