キモヲタ男爵奮戦記 ~ 天使にもらったチートなスキルで成り上がる……はずだったでござるよトホホ ~

帝国妖異対策局

文字の大きさ
90 / 239

第90話 パパ気持ちひぃいぃのぉおお❤……治癒でござるからね!?

しおりを挟む
 カザン王国の国境検問所で入国許可証の発行を待っている人々。

 その中に、キモヲタのことを「お兄ちゃん」と呼んで慕っているリリィとその家族がいました。

 リリィの父親が「明日には入国許可証が発行される」と家族に話しているのを聞いたリリィは、キモヲタにお礼を言いに行くことにしました。

 キモヲタに花をプレゼントしようと思ったリリィは、ここで友達となった子どもたちと共に花を摘みに行くことにしました。

 両親や周囲の大人から、街道からを離れてはいけないと言われていた子どもたちは、ちゃんとその言いつけを守っていました。

 少し森に入ったものの、ちゃんと大人たちの姿が見える場所でリリィたちは花を探していたのです。

 しかし、たまたま運が悪かったことに、人間の群れを観察していた魔物が潜んでいたのでした。

 サソリのような姿をしたこの魔物は、獲物が近づいてくるまで何日でも辛抱強く待ち続けるクラグ・スティンガーと呼ばれる怪物です。全身が緑色で牛ほどのサイズがありました。

 山や森で生活している人であれば、このクラグ・スティンガーの緑のカモフラージュを簡単に見破ることができるのですが、街の人間にとってはそうではありませんでした。

 クラグ・スティンガーは、目の前を通ったリリィにその大きな尻尾の棘を突き立てました。尻尾はリリィの足を貫き、彼女は悲鳴を上げて地面に倒れてしまいます。

「キャァアアアアアアア!!」

 リリィと一緒にいた女の子の悲鳴で、クラグ・スティンガーはその動きを一瞬だけ止めました。それを見た男の子が、勇気を振り絞ってリリィの身体を引き摺って逃げ出そうとします。

 せっかくの獲物を逃すまいと、クラグ・スティンガーは大きなハサミでリリィの右足を強く掴みました。その結果、リリィの小さな足が引きちぎられてしまいす。

「イヤァァアアアアア!!」

 リリィの悲鳴が森の中に響き渡りました。

 クラグ・スティンガーがもう片方のハサミでリリィを掴もうとしたその時――

「ヤァァァッ!!」
 
 怪物の後方から飛び出してきたエルミアナが、クラグ・スティンガーのハサミをレイピアで何度も貫いて、これを砕きました。

 怪物は苦悶の声を発しながら、エルミアナに尻尾の先にある針を突き立てようと、その巨大な尾を振り上げます。

「ハッ!」

 その瞬間、セリアが飛び出してきて、居合抜きでクラグ・スティンガーの尾を切り落としました。

「うらぁあああ!」
 
 さらにユリアスが、クラグ・スティンガーの頭部にクレイモアを振り下ろして止めを刺します。

 グシャッと深いな音を立てて、そのきりクラグ・スティンガーは動かなくなりました。

「リリィ!」

 リリィの悲鳴を聞いた父親が駆けつけてきました。父親は娘を抱き上げると、その痛々しい姿を見て呻き声を漏らします。

「ユリアス殿! 何事でござるか!?」

 さらに遅れてドタドタと走ってきたキモヲタ。

 クラグ・スティンガーの遺骸を見て一瞬怯んだものの、そのすぐ前で父親に抱かれているリリィの姿を見て驚愕します。

 リリィの右足は膝から先が失われていて、その太ももは赤黒く腫れあがっていました。顔は真っ青に青ざめて、息絶え絶えの状態です。

「クラグ・スティンガーの毒にやられたのでしょう。このままではすぐに死んでしまいます」

 エルミアナの言葉を聞いて、父親の顔が青ざめます。

「そんな!」
 
「キモヲタ殿、すぐに治療を!」

「わかったでござる! それでリリィの右足はどこでござるか!?」

 男の子が、クラグ・スティンガーの死体を指差して言いました。

「あいつがリリィの足を引きちぎって食べたんだ!」

「リリィ! うそっ!? うそうそうそよ! リリィイイイイイ!」

 リリィの母親が到着して少女の惨状を見るやいなや、絶叫してそのまま意識を失ってしまいました。

 父親に抱かれたまま、リリィが閉じていた目をうっすらと開きます。その瞳には、もう何も映っていませんでした。 

「そんな! リリィ! まさか! そんな! リリィ! リリィ!」

 必死で父親が呼びかける中、リリィの唇から微かな声が漏れ出てきました。

「お兄ちゃん……お花……見つからなかった……ごめんね……」

 その言葉を最後にリリィは息を大きく吐くと、そのまま目を閉じ――

「ぬおおおおおお!」

 リリィの目が閉じらる前に、キモヲタはその左足を掴んで声を張り上げます。

「【足ツボ治癒】フルバーストぉおおお!!」

 リリィの足を掴んだキモヲタの手から強烈な緑色の光が放たれ、それがリリィの全身を包み込みました。

「轟け雷鳴! 響け足裏! 我が必殺の【足ツボ治癒】!」

 グリグリグリンッ!

 キモヲタがリリィの足裏に親指を押し込むと、リリィの身体がビクンビクンと跳ね上がります。

 腕の中で暴れるリリィの身体を押さえながら、父親はその奇跡を目の前にしていました。

「足の腫れが消えた! 傷も消えてる!」

 絶叫する父親の腕の中で、リリィが目を開きました。

「パ……パパ……」

「リリィ! お前生きて! 生きてるんだな!」

「あなた! リリィ!」

 リリィの母親が目を覚まし、リリィと父親の傍に駆け寄ります。

「ご両親どの! 大変なのはここからですぞ! パパ殿はリリィたんをしっかりと支えるでござる!」

 グリグリグリンッ!

 リリィを包む光は一層輝きを増しました。とくに失われた右足に強烈な光が集まっていました。

「ひぎぃいいいいい❤ いやぁあああああ❤」

 絶叫して背中を逸らすリリィに、父親が真っ青になって叫びます。

「どうしたリリィ! 痛むのか!」

 リリィは一生懸命に首を振ります。

 グリグリグリンッ!

「違うのぉぉおおおお❤ パパぁおあああああ❤」

 リリィがアヘ顔ダブルピースで震えながら、父親に叫びます。

 グリグリグリンッ!

「パパ気持ちひぃいぃのぉおお❤ らめらめらめぇええ❤」
 
 アヘ顔ダブルピースで快感に打ち震えるリリィの姿を見て、驚愕する両親と周りの人々。

 いつの間にかリリィの右足が元通りになっていることには、キモヲタ以外の誰も気がつかなかったのでした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...