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第1話 プロローグ ~天使との出会い~
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「デュフフフ。おお、死んでしまうとは情けないですなwww」
目の前には太ったボサボサ髪の中年男が背中に羽をつけた天使っぽいコスプレをして宙に浮いていた。
マジックで「てんし」と書かれた白いTシャツは、お腹のところでパツンパツンに膨らんでおりへそチラしている。
「はじめましてですな、田中真一殿。我輩、田中殿の転生を担当する天使ですぞ。デュフフコポォ、どうぞエンジェル・キモオタとお呼びくださいwww」
「えっと……俺は死んだのか……」
仕事からの帰り。駅の階段を上っている途中で、いきなり大勢の人が上から慌てふためいて駆け下りてきた。
歩きスマホだった俺はそのことに気づくのが遅れ、駆け下りてきた人々に突き飛ばされ階段から転げ落ちたところまでは覚えている。
「ちょwww。正確には、田中殿が目の前の階段を上る女子高生の太ももに気を取られていたのが原因ですぞwww」
「うぐっ」
「先に突き飛ばされた女子高生が倒れこんできたのを身体で受け止めて転倒したのですぞwww その一瞬で美少女のたわわな胸と髪の匂いを堪能されたようで、さすがというかうらやましい限りですなwww」
「ぐはっ」
全部お見通しなのか!? どうすればこの羞恥プレイから解放してもらえるの?
「とはいえ、田中殿のおかげでそのJKは助かったのですぞwww もし生きておられたなら月曜日の通勤がたわわなリア充になっておったかもしれませんなwww」
「マジ!?」
「やはり喰いつきますなwww しかし、残念ながらあのJKは彼氏持ちですぞ。魔法使いの田中氏には酷な事実かもしれませんが、当然ながら非処……」
「やめて! リアルでライフ0の俺に残酷な世界を突き付けるのはやめて!」
「しかし田中殿がいなければあのJKはそこで命を落とす運命だったのは本当ですぞ。いきさつはどうあれ、田中殿は彼女の命を救ったのですよ。デュフフコポォ」
「そ、そうか……」
見知らぬ女の子を守って死んだというなら、俺のつまらない人生にも少しは意味があったということか。
俺は目を閉じて、美少女が俺のために涙する姿を思い浮かべて感慨にふける。
まぁ単なる想像だけどな。
「うはっwww JKは『何かにぶつかった?』くらいの認識しかないので、田中殿は特に感謝はされておりませんぞwww」
俺はがくっと膝をついて倒れこむ。いちいち俺の心を折らないと話を進められないのかこのキモオタは……。
「しかし、女神さまはちゃんと田中殿の善行(笑)を見ておられたのですぞ。その功績を認めて田中殿の異世界への転生が認められ、我輩を遣わされたわけですな。オウフドプフォ」
そういってエンジェル・キモオタは全身からドヤッとしたオーラを拡散する。うざい。
「異世界転生か。あまり詳しいわけじゃないけど、そういうのって女神とか神様が現れて説明したりするんじゃないの? なんか怪しい……」
俺はジト目に精一杯の眼力を込めて、エンジェル・キモオタのお腹に視線を当てる。
もし天使が金髪美少女だったら、何の抵抗もなくこの信じがたい現実を受け入れていたはずだ。
「ちょっwww その冷たい視線www 女神さまは色々とお忙しい故、我輩に全てを委任されたのですな。似た者同士の方が話が進めやすいでしょうとのことですぞwww」
「いや全然似てねーよ!」
「確かに見た目は全く違っておりますな。田中殿はちょいイケメン、いわば普通+1といったところですし。しかしそれ以外は……」
ちょっと嬉しい――けど、俺は全然イケメンじゃないし背だって高くない。
むしろイケメンとキモオタを並べて、俺がどちらに属するかと通行人に質問したら十人中十一人がキモオタを指さすだろう。
エンジェル・キモオタが俺の目をジッと覗き込む。
俺の瞳の奥に何を見出したのか、キモオタは「やはり……」と呟いてデュフフと笑いを漏らした。
「な、なんだよ」
「田中殿の遺品となるPCをスキャンさせていただいたと言えば伝わりますかな。デュフコポォ」
「なっ!」
「デュフフ。これはこれは、なかなかのコレクションですな。フォカヌポウ。ふむふむジャンルも多彩。ふむ、槍男シリーズは初期のものから全て揃っているでございますな。これは我輩、田中殿への尊敬の念が止まらなくなりそうですぞ」
「……ちゃ、ちゃうねん」
「YESロリータ――」
「NOタッチ!……ってハッ!?」
「貧乳は――」
「……スッ、ステータス」
「男の娘、可愛ければ――」
「つ……付いていたっていいじゃない!」
エンジェル・キモオタは俺の顔をじっと見つめて、おもむろに「ねっ?」という表情を作った。
「どうやら、似た者同士という女神さまの判断は正しかったようですなwww」
「く、くやしい……でもどうやっても完全に否定できないって感じちゃう」
「そうビクンビクンしなくとも大丈夫ですぞ。田中殿と我輩、共に女神からキモがられている者同士、きっと善き関係を築いていけるはずですぞ。デュフフコポォ」
「えっ、俺、女神さまにキモがられてるの?」
さらっと明かされる衝撃の事実。
「デュフフ。女神さまに三白眼で見下されるのはまさに至福! 至福ですぞ! 田中殿もいつか女神さまに見下される日がくるといいですな!」
「良くねーよ! なんだよ女神に嫌われてるなんて、転生しても地獄見る未来しか見えねぇよ!」
「女神さまには『キモがられている』というだけで決して『嫌われて』はおりませんぞ。キモがられているからといっても、そうそう悲観されることはありませんぞ。なにせ我輩が遣わされたからには、田中殿には最大級の支援をさせていただきますからな!」
なんだろう……あんまり嬉しくない。
フンスと鼻息を荒くしてドヤ顔のエンジェル・キモオタを前に、俺の心はどんよりと将来の不安に曇っていく。
「デュフフフ。同志には異世界ハーレム展開プランを用意して参りましたからな!」
「同志キモオタ!……さま!」
俺の心が雲を払ってパァァァァっと輝き始めたのだった。
φ(・ω・ )φ(・ω・ )φ(・ω・ )
【 シンイチノート】
・俺はJKをかばって?死んだらしい。
・JKはかなり巨乳だったお。柑橘系かな――リンスのいい匂いがしたお。
・ちょ、同志キモオタ、割り込まないでくれ。
・どうやら俺はエンジェル・キモオタによって異世界に転生されるっぽい?
目の前には太ったボサボサ髪の中年男が背中に羽をつけた天使っぽいコスプレをして宙に浮いていた。
マジックで「てんし」と書かれた白いTシャツは、お腹のところでパツンパツンに膨らんでおりへそチラしている。
「はじめましてですな、田中真一殿。我輩、田中殿の転生を担当する天使ですぞ。デュフフコポォ、どうぞエンジェル・キモオタとお呼びくださいwww」
「えっと……俺は死んだのか……」
仕事からの帰り。駅の階段を上っている途中で、いきなり大勢の人が上から慌てふためいて駆け下りてきた。
歩きスマホだった俺はそのことに気づくのが遅れ、駆け下りてきた人々に突き飛ばされ階段から転げ落ちたところまでは覚えている。
「ちょwww。正確には、田中殿が目の前の階段を上る女子高生の太ももに気を取られていたのが原因ですぞwww」
「うぐっ」
「先に突き飛ばされた女子高生が倒れこんできたのを身体で受け止めて転倒したのですぞwww その一瞬で美少女のたわわな胸と髪の匂いを堪能されたようで、さすがというかうらやましい限りですなwww」
「ぐはっ」
全部お見通しなのか!? どうすればこの羞恥プレイから解放してもらえるの?
「とはいえ、田中殿のおかげでそのJKは助かったのですぞwww もし生きておられたなら月曜日の通勤がたわわなリア充になっておったかもしれませんなwww」
「マジ!?」
「やはり喰いつきますなwww しかし、残念ながらあのJKは彼氏持ちですぞ。魔法使いの田中氏には酷な事実かもしれませんが、当然ながら非処……」
「やめて! リアルでライフ0の俺に残酷な世界を突き付けるのはやめて!」
「しかし田中殿がいなければあのJKはそこで命を落とす運命だったのは本当ですぞ。いきさつはどうあれ、田中殿は彼女の命を救ったのですよ。デュフフコポォ」
「そ、そうか……」
見知らぬ女の子を守って死んだというなら、俺のつまらない人生にも少しは意味があったということか。
俺は目を閉じて、美少女が俺のために涙する姿を思い浮かべて感慨にふける。
まぁ単なる想像だけどな。
「うはっwww JKは『何かにぶつかった?』くらいの認識しかないので、田中殿は特に感謝はされておりませんぞwww」
俺はがくっと膝をついて倒れこむ。いちいち俺の心を折らないと話を進められないのかこのキモオタは……。
「しかし、女神さまはちゃんと田中殿の善行(笑)を見ておられたのですぞ。その功績を認めて田中殿の異世界への転生が認められ、我輩を遣わされたわけですな。オウフドプフォ」
そういってエンジェル・キモオタは全身からドヤッとしたオーラを拡散する。うざい。
「異世界転生か。あまり詳しいわけじゃないけど、そういうのって女神とか神様が現れて説明したりするんじゃないの? なんか怪しい……」
俺はジト目に精一杯の眼力を込めて、エンジェル・キモオタのお腹に視線を当てる。
もし天使が金髪美少女だったら、何の抵抗もなくこの信じがたい現実を受け入れていたはずだ。
「ちょっwww その冷たい視線www 女神さまは色々とお忙しい故、我輩に全てを委任されたのですな。似た者同士の方が話が進めやすいでしょうとのことですぞwww」
「いや全然似てねーよ!」
「確かに見た目は全く違っておりますな。田中殿はちょいイケメン、いわば普通+1といったところですし。しかしそれ以外は……」
ちょっと嬉しい――けど、俺は全然イケメンじゃないし背だって高くない。
むしろイケメンとキモオタを並べて、俺がどちらに属するかと通行人に質問したら十人中十一人がキモオタを指さすだろう。
エンジェル・キモオタが俺の目をジッと覗き込む。
俺の瞳の奥に何を見出したのか、キモオタは「やはり……」と呟いてデュフフと笑いを漏らした。
「な、なんだよ」
「田中殿の遺品となるPCをスキャンさせていただいたと言えば伝わりますかな。デュフコポォ」
「なっ!」
「デュフフ。これはこれは、なかなかのコレクションですな。フォカヌポウ。ふむふむジャンルも多彩。ふむ、槍男シリーズは初期のものから全て揃っているでございますな。これは我輩、田中殿への尊敬の念が止まらなくなりそうですぞ」
「……ちゃ、ちゃうねん」
「YESロリータ――」
「NOタッチ!……ってハッ!?」
「貧乳は――」
「……スッ、ステータス」
「男の娘、可愛ければ――」
「つ……付いていたっていいじゃない!」
エンジェル・キモオタは俺の顔をじっと見つめて、おもむろに「ねっ?」という表情を作った。
「どうやら、似た者同士という女神さまの判断は正しかったようですなwww」
「く、くやしい……でもどうやっても完全に否定できないって感じちゃう」
「そうビクンビクンしなくとも大丈夫ですぞ。田中殿と我輩、共に女神からキモがられている者同士、きっと善き関係を築いていけるはずですぞ。デュフフコポォ」
「えっ、俺、女神さまにキモがられてるの?」
さらっと明かされる衝撃の事実。
「デュフフ。女神さまに三白眼で見下されるのはまさに至福! 至福ですぞ! 田中殿もいつか女神さまに見下される日がくるといいですな!」
「良くねーよ! なんだよ女神に嫌われてるなんて、転生しても地獄見る未来しか見えねぇよ!」
「女神さまには『キモがられている』というだけで決して『嫌われて』はおりませんぞ。キモがられているからといっても、そうそう悲観されることはありませんぞ。なにせ我輩が遣わされたからには、田中殿には最大級の支援をさせていただきますからな!」
なんだろう……あんまり嬉しくない。
フンスと鼻息を荒くしてドヤ顔のエンジェル・キモオタを前に、俺の心はどんよりと将来の不安に曇っていく。
「デュフフフ。同志には異世界ハーレム展開プランを用意して参りましたからな!」
「同志キモオタ!……さま!」
俺の心が雲を払ってパァァァァっと輝き始めたのだった。
φ(・ω・ )φ(・ω・ )φ(・ω・ )
【 シンイチノート】
・俺はJKをかばって?死んだらしい。
・JKはかなり巨乳だったお。柑橘系かな――リンスのいい匂いがしたお。
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・どうやら俺はエンジェル・キモオタによって異世界に転生されるっぽい?
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