ベスティエンⅢ

熒閂

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#23:Die schmerzlose Bestie

Never knows a stab 02

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 レイの中学生時代。
 学年も学校も異なる禮と渋撥シブハツは、毎日会うことは難しかった。まず連絡を取ろうにも相模サガミ家には厳格な父親がおり、それすら容易ではない。たまの放課後デートは貴重な機会のひとつだった。故に、その日は渋撥にとってよき日になるはずだった。可愛い年下の恋人に会うのが嬉しいなど顔には出なかったけれど。

「ハッちゃん、ごめんなさい」

 その可愛い彼女は、開口一番謝罪を口にした。
 謝罪の理由は禮の背後に並んでいる友人たちであろう。彼女たちのほとんどは禮が渋撥と交際することに反対派の人間だ。怯えた目をして此方を見てくる。近づくのが恐ろしいなら呼んでもいないのに湧いて出るな。

「……邪魔なのがゾロゾロと」

 渋撥はチッと舌打ちをした。彼はオブラートというものを知らない。
 夜子ヨルコが一歩前に進み出て禮の隣に並んだ。この少女は同年代の友人たちよりも格段に大人びており、渋撥や鶴榮ツルエに対してもいたづらに怯えることはない。

「渋撥はん。今日は美作ミマサカはんはご一緒しはらへんのどすか?」

「あ? 美作のことなんざ知らん。ツルとどっか遊び行ったで」

「えぇーッ!」

「……ウルサイ」

 少女たちは否定的な甲高い声を張り上げた。渋撥は煩わしそうに嘆息を漏らした。
 夜子は友人たちのほうへ振り返った。

「ホラみんな聞いたやろ。今日は美作はん来はらへんねやて。せやさかいお迎え呼んでお帰りやす」

 それが目当てか、と渋撥は得心がいった。少女たちが怯えながらも自分の前に立つ目的は美作だ。彼はどちらかと言えば見目がよいほうであり、愛嬌があり、女性に受けがよい。それならそれで好都合。お目当ての美作がいないのだから、少女たちは立ち去ることだろう。
 と、渋撥は考えたが、伊予イヨは眉を吊り上げて渋撥をジッと見詰めていた。

「ウチ帰らへん。禮についてく」

「ええッ⁉」

「ついてく言うたら絶対ついてく!」

 和々葉ワカバモミジは驚きの声を上げた。彼女たちは渋撥の考えどおり、美作がいないのならおとなしく帰路に就こうと思っていた。
 しかし、そもそも伊予の目的は美作ではない。それは渋撥に向けられる反抗的な目付きからも明白だ。彼女は〝王子〟の恋人として渋撥を面白くなく思っており、その邪魔をすることが目的なのだ。

「せっかく渋撥はん久し振りに禮に会わはるんやから、ワガママ言うたらあかんえ」

 夜子は言い聞かせようとしたが、伊予はきかなかった。

「いきなり出てきて禮を独占するほうがワガママや! カレシやからて禮を独占する権利はあれへん。禮は石楠の王子様、みーんなの王子様なんやから。カレシがカノジョを独占したり、友だち付き合いとやかく言うたりするのあかんと思いマスー!」

 ――それはフツー、カノジョの男友だちに対してちゃうかな。
 和々葉と椛は伊予の言い草を聞き、うーんと首を傾げた。

「横からしゃしゃり出てきてギャンギャン喧しいのォ」

「しゃしゃり出てきたのはウチのほうちゃうもん。ウチのほうが禮との付き合い断然長いんやからッ」

「それがなんぼのもんやねん」

 伊予は頬を紅潮させて必死に主張するが、対照的に渋撥は冷静だった。伊予に目も合わさず、相手にしていられないという態度だ。その侮った態度がさらに伊予の闘志を煽った。王様のように踏ん反り返っているこの大男にギャフンと言わせたい。
 伊予は自分のものよと主張するように禮と腕を組んだ。頭ひとつ分以上背が高い渋撥をビシィッと指差した。

「ウチは禮と一緒にお風呂入ったことあるんやからね!」

 渋撥は無表情のまま沈黙した。
 伊予は「ふ」と微かに息を漏らし、口に手の甲を当てて「あーはっはっ」と勝ち誇って高笑いした。やった。やってやった。何を言われても堪えず言い返してくる強面を黙らせてやった。
 夜子は困り顔。椛と和々葉も惘れて嘆息を漏らした。

「修学旅行どすな」

「伊予ちゃんだけやのォてウチらも一緒に入ったよ」

(このジャリィ💢)

 流石の渋撥も入浴発言はちょっとムカツいた。悔しがることではないと頭では分かっていても心情的には馬鹿正直に悔しい。女子中学生からいくら喧嘩を売られても物の数には入らないと思っていたが、禮に関することではそうもいかないらしい。

「親友のウチと禮との間に簡単に割っては入れると思わはらんといてくださいー。カレシなんか別れたら赤の他人なんやから」

「これ伊予!」と夜子が叱った。好き合っている恋人同士に対して明らかに言いすぎだ。
 渋撥はムスッと表情を変えた。暴君と言われる渋撥も、自分より一回りも二回りも小柄な女子中学生に手を上げない分別くらいはある。伊予への腹癒せに、禮の膝の裏を腕に乗せてかっ攫うように一気に抱え上げた。
 禮は下ろしてと足をバタバタと動かしたが、渋撥は聞き入れなかった。

「これは俺のや。トモダチ程度は引っこんどけ」

「あーッ! モラハラ発言ーッ! 禮はモノちゃうもん! そんなんやからお兄はんに禮を任せられへんの! 目ぇ離せへん! 今日絶対ふたりきりにさせへんからッ」

 渋撥は禮を軽々と片腕で支え、伊予を指差した。

「ついてくるのは勝手やけどな、勘違いすんなよ。オマエらはオマケや」

「そんなん言われんでも分かってますぅー! 誰が勘違い⁉ ウチは、お兄はんやのォて禮に付いてくのッ」

「俺らについてきて知り合いやと思われてもオマエが損するだけや」

「損?」と伊予は聞き返した。

「もしオマエらに何かあっても俺は知らん。禮以外を守ったる義理はあれへん」

 渋撥は何かを予見しているかのように確信めいていた。それが何であるか、少女たちは誰にも分からなかった。
 禮はバタバタさせていたピタッと足を停めた。

「どゆ意味?」

「禮も俺のこと〝この街で一番〟言うたやろ。一番なんかな、ええことなんか一個もあれへん。味方よりも敵のほうが多い」

 渋撥は横目で禮を見た。ピンと来ない顔をしている。誰が味方でどういうものが敵なのか知らず、考えたこともない。見抜いて選別する必要もない。生きてきた世界が異なる証拠だ。渋撥は自分と同じ感覚や価値観を禮に求めなかった。

ツルや美作がおったらアイツらはオマケまであんじょう庇うてくれるやろ。せやけど俺はそんなん知ったこちゃない。アイツは〝赤の他人〟やしな」

「分かってマスケドぉおおッ💢」

 渋撥の発言は鎮火しかけた伊予にまた薪をべてしまった。キーッとムキになる伊予を、和々葉と椛はどうどうと宥めた。




 複合型エンターテイメント施設。
 ビルひとつ丸ごと全体が娯楽施設となっており、スポーツからゲームまで何でも定額・時間制で楽しめる。地下から地上1階にかけてはメダルやアーケード機、プリクラなどといった一般的なゲームセンターに引けを取らない設備となっており、2階以上のフロアがスポーツやボーリング、ビリヤード、ダーツを楽しむスペースとなっている。
 渋撥と禮はバッティングコーナーで遊ぶという。渋撥曰く「オマケ」である少女たちには異議を唱える権利はない。
 椛はバッティング初体験。見様見真似で恐る恐るバットを構えた。ピッチングマシンから白球が飛び出したと判断した瞬間に渾身の力でバットを振るが、バットには掠りもせず通過して金網に直撃。地面に落下した白球は、ピッチングマシンの方角へ向かって傾斜した地面の上を独りでにコロコロと転がり、元いたと思われる場所に帰った。
 これを何度か繰り返し、椛は振り返って金網に泣きついた。金網の向こうには伊予と夜子がおり、椛を見守っていた。

「もう嫌や~、ウチもう疲れた~~」

「今ので20球終わったよ」と伊予。

「あか~ん。ウチ全然バットに当たらへん~~」

 椛はバットをスタンドに立ててバッターボックスから出た。
 ここは最も低速のボールを放るボックス。椛の前に伊予が挑戦していた。彼女はスポーツが得意であり、白球をサクサクと打ち返していた。それを金網の外から眺めているときは楽しそうに見えたのに。

「疲れた! ウチもうバッティングなんか絶対せえへん。当てられへんかったら何もおもろないッ」

「ちゃんと最後までボール見てへんからやよ」

「見てへんのやのォて見えへんの。伊予ちゃんも禮ちゃんも運動神経ええさかい分かれへんやろけど」

「禮と一緒くたにせんといて」と伊予は慌てて否定した。

「伊予ちゃんも禮ちゃんも体育何でもでけるやん」

「あーのーねー、禮の運動神経はちょっと異常なん。フツーにスポーツ得意~みたいなんとはぜんぜんちゃうんやから」

「そーなん?」

 伊予は真剣な顔付きだが、椛にはいまいち伝わらず小首を傾げた。椛は運動神経が人並みより劣ると自認している。彼女から見れば禮も伊予も同じカテゴリーだ。そのなかにも明確な格差が存在するとしても把握できない。

 バッティングコーナーには複数のボックスが一列に並んでおり、それぞれボールの速度が異なる。伊予たちがいたのが最も低速のボックスであり、隣のボックスへ向かうにつれボールの速度は段階的に速くなる。
 伊予たちは禮と渋撥を探してボックスをひとつずつ覗きながら移動した。
 ビシュッ、カキーンッ、ビシュッ、カキーンッ、と連続した快音が途切れることなく聞こえる。速い球に挑戦する人はやはり野球が上手いのだな、と思っていると此方にしきりにパタパタと手を振る人物が見えた。

「早く早く!」と和々葉が伊予と夜子、椛の三人を手招きで急かした。
 和々葉がいるのは椛がバットを振っていたボックスとは真逆の一番端、つまり最速のボールを放るボックスだ。

「最速って何キロ? うわ、150キロに挑戦やて」

「あら。渋撥はんが打ってはる」

「ゲッ。150キロに当ててるやん」

 夜子は暢気な声を出したが、伊予はギョッと顔色を変えた。
 金網越しにバットを振る長身の男、特徴的な白い学生服を脱いで黒いTシャツ姿になっているが間違いなく渋撥だ。

「ウチなんか80キロかすめるのがやっとやったのにぃ~」

「ほとんど全球打ちはるんよ。ほ、ほんまに人間?💧」

 椛は悔しがったが、最早比較する同じステージにすら乗っていない。あの性情と生活態度で熱心な野球少年ではないだろう。本当に人間業かと疑うレベルだ。伊予と和々葉は、驚愕を通り越して気味悪がった。
 禮は金網に齧り付くようにして渋撥のバッティングを見守っていた。わたしの彼氏すごい、かっこいい、などと当たり前に喜ぶ性格ではない。少年のように目をキラキラと輝かせてボックスの金網の扉を開いた。振り返った渋撥と目が合うと、シュタッと挙手した。

「ウチもやりたい」

 丁度規定の球数をこなした渋撥は、バットをスタンドに挿した。金網の外にいる伊予たちを親指で差した。

「禮はアイツらと一緒に80キロでも打っとれ」

「ハッちゃんと同じのがええなー」

 禮は大きな黒い瞳で見上げておねだりをするように言った。思わずいいぞと許してしまいそうになったが渋撥は押し留まった。可愛いことを言ってくれるが、ダメなものはダメだ。
 禮は渋撥が許しを出す前にスタンドからバットを一本引き抜いた。バッターボックスに立とうとする禮のバットを、渋撥がむんずと掴まえた。

「コレやったことあるんか」

「あれへんからやりたい」

 禮は精いっぱい腕を伸ばしてピッチングマシンのスタートボタンを押した。

「あれへんのやったら遅いのから始めろ」

「ウチかてボール見えてるからだいじょぶ」

「変な当たり方して顔に跳ねたら危ないやろ」

「だいじょぶやよ。体育でソフトボールやったことあるし」

 渋撥にはまったく大丈夫には思えなかった。女子校の体育レベルで150キロを放る豪腕投手はいまい。

「やめとけ。言うこと聞け」

「ヤダ」

 禮は力いっぱいぐぐぐとバットを引くが、渋撥は片手で難なく拮抗した。どうやって渋撥をバットから剥がすかに集中していると、渋撥が不意にピッチングマシンの方角を顎で指した。

「オイ。球出るで」

 え、と禮は間の抜けた声を漏らした。
 禮は渋撥が指し示した方角に目を移した。その秀逸な動体視力で以てして、白球が飛び出た瞬間がハッキリ見えた。
 ホラ、ちゃんと見えるではないか。いやいや、そのようなことを言っている場合ではない。バットを構えていなければ打ち返すことは不可能だ。硬い白球が高速で一直線に飛んできたが、禮はそれに対してまったく身構えていない。
 バッシィンッ! ――渋撥は白球が禮に到達する前に素手で掴み取った。

「……ッ⁉」

 それを目撃した伊予たちは愕然として口をあんぐりを開いた。万全に準備した体勢からバットで打ち返すだけならまだしも、否、それも並みの高校生には困難な業だが、完璧にタイミングを合わせて受け止めてしまうとは恐るべき動体視力と反応速度だ。
 当の本人の渋撥は、平然とした顔で白球をポイッと投げ捨てた。禮の二の腕を捕まえて自分のほうへ引き寄せた。その位置に突っ立ったままではまた白球に狙撃される。

「ホレ見てみぃ、必要やろ。目ぇの良し悪しやのォて禮は注意力が足りひん」

 禮は渋撥からの苦言など聞いてはいなかった。半ば呆然と渋撥の顔を見詰める。

「手ぇ痛ないの?」

「ん? あぁ、まあ、別に。全然痛ないっちゅうことはあれへんけどな」

 禮はもうバッティングへの関心を無くしたようだ。この隙に渋撥は金網のドアを開け、禮の手を引いてバッティングボックスから出た。
 金網の向こうから戻ってきた渋撥に、和々葉が頭を垂れて両手で学生服を差し出した。その様はさながら王への献上品。渋撥がバッティングボックスへ入る際に禮に預けたものだが、大方禮が和々葉へ押しつけたのであろう。
 渋撥は特に何も思うことなく和々葉の手から学生服を受け取った。その拍子に夜子と目が合った。夜子はジーッと渋撥の顔を見詰め、渋撥に気づかれても目を逸らさなかった。

「渋撥はんはえろう痛みにお強いようで。……あんまりよろしいことちゃいますなあ」

 ――妙な女や。
 同い年の娘よりも大人びているどころか、人を見透かすような目をする。自分と同世代の女か大人の女というよりも、まるで魔女でも相手にしているかのようだ。胆力は禮並みにあるのかもしれないが、禮のほうが可愛げがある。
 渋撥は夜子からフイッと顔を逸らして学生服を羽織った。夜子が何を考えて発言したのかさっぱり分からない。分からないが問い質すほどの興味もなかった。

「煙草や」

 禮にそう告げ、ひとりで喫煙コーナーのほうへと歩いて行った。
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