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#09:Battle for the young
The defeat thoroughly ✤
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体育倉庫前。
薩摩は肩を大きく上下させ体ごと呼吸をしていた。しかし、長門は息ひとつ乱していなかった。スタミナは体格に影響される。薩摩より遙かに体の大きい長門のほうがスタミナがあるのは当然だが、その差はあまりにも歴然だった。単純なスタミナの問題ではなく、長門が並外れて頑丈でタフなのだ。
(何発かいいの入れてんのに何で効いてねーんだ……バケモノかよ。この野郎には、俺じゃ通用しねーってのかよ!)
「もうやめとけ」
長門から声をかけられ、薩摩は前髪の隙間から長門を睨みつけた。まるで敵意のない目に晒されるのが悔しかった。
対比的に長門の目が至極穏やかなのは自分の勝利を確信しているからだ。それは傲慢や慢心ではなく、経験から判断する妥当な結果だ。長門にとって薩摩は自分より体の大きな外敵に威嚇の為に本能的に牙を立てる小犬と大差なかった。
「もう分かっただろ、俺には勝てない。俺に勝てないようじゃ下総さんにも武藏にも勝てない」
「うるせえェ!」
「ふたりは強いぞ」
「うるせェんだよッ!」
目の前の男に勝てないことが悔しいのか、憧れの男に届かないことが悔しいのか、薩摩自身にももう分からなくなってしまった。ただ分かることは、目の前の男は自分よりも強いということ。分かっている、分かっているのだ。自分の運命を悟れないような小物ではない。けれども一度抜いた刀を鞘に収める方法は知らなくて。
「吐いた唾は飲めねェよ……センパイ」
薩摩はそう言って不敵にニヤッと笑った。
「俺は自分がどこまで通用するのか知りてぇんだよ!」
「俺までだ」
長門が確信めいて言い放った途端に、薩摩は長門に向かって駆け出した。
好んで痛めつけたり勝利に酔ったりする趣味はない。暴力や痛みはできれば避けてのんびり生きていたい。何処まで行けるかと問われれば、お前の足で行けるところまで行けばいいと答える。しかし武藏に対して牙を剥くというのなら、返り討ちにするのが長門に定められた使命。
「俺に負けて目が覚めたら、何で俺に勝てないのか考えてみたらいい」
「あァッ⁉」
「どれだけ強くたって自分の為にしかケンカできないヤツなんか大した男じゃない」
薩摩はめいいっぱい踏み切って大きく飛び上がり、長門へ跳び蹴りを繰り出した。長門は身を仰け反ってそれを回避した。
「じゃあアンタは何の為にケンカしてるって? 前田の為にケンカしてやってるっつーのか。ケンカは慈善事業かよ、気色悪ィ」
「俺は武藏の為になら体を張れる。自分の役目に誇りを懸けてる。お前は、自分のケンカに何を懸けている?」
薩摩は顔を上げなかった。単純にこれまでに殴られた顔が痛いからではなく、疲労でそのような余力すら無かったからではなく、長門から真っ直ぐに見詰められていたから。誇りという強い光を秘めた揺るぎない眼光。年若く短慮な彼は、それに対抗すべき手段を持ち合わせてはいなかった。
「……たかがケンカだろ。ンな大層なこと考えてられっかよ」
「軽い拳だ。そんなもの、通用しない」
薩摩はチラリと自分の拳を一瞥した後、眼球だけ動かして長門の拳を睨んだ。とても大きな拳を正直に羨ましいと感じた。何よりも強く固いと信じていたはずの己の双つの拳が、玩具に見えるほど、羨ましく大きな拳だ。
「ハッそうかもな……。でも、だからって、吐いた唾は飲めねーっつってんだろ」
薩摩はギリッと奥歯を噛み締め、頭に突き抜ける痛みを噛み締め、爪が食いこんで血が滲み出すほど拳を握り締めた。
道理や事実を解さない本物の阿呆ではないから結果は分かっている。しかし結末を理解したからといって足を止めてしまったら、最初の一歩を踏み出した意味さえも無くなってしまう。勝利や成果など残らなくてもよい。ただ無価値や無意味に成り下がるのだけは嫌だ。
ドボォッ!
薩摩の渾身の一撃が長門のボディへ深くめり込んだ。普通なら地面に蹲るような一撃だが長門は倒れなかった。何度薩摩に殴られても決して倒れない。
薩摩は「クソ」と唾棄して顔を上げた。刹那かち合った長門の眼は、水面のように静まり返っているくせに、その奥にはチロチロと揺れる微かな光を灯していた。熱と痛みを噛み殺しそのような眼をする人間には、勝てる気がしない。勝てる気がしないと自覚した瞬間に、勝敗は喫している。
「っ……!」
薩摩の拳は速く動作は俊敏であり、大柄な長門では避けるのには苦労するが、攻撃を終えて動作が停止した瞬間ならば捉えるのはそう苦労はしない。長門が拳を握りこみ、薩摩はギリッと力いっぱい奥歯を噛んだ。
ガキィンッ!
顔面に鉄球がぶち当たり、強烈な閃光に目を奪われた。視界がただただ白光に支配され、上下左右が逆さまになり、体が宙に浮いて刹那を漂う。宙を漂っている間は夢も現実もないから、痛みはよく分からないのだ。ただ自分が重力に反していることだけは体感できる。
薩摩はそのまま後方に2メートルほど吹っ飛び、背中から地面に落ちた。
ずしゃあっ!
「がっはぁっ‼」
後頭部を強かに打ちつけ、薩摩は何かを吐き出した。
立ち上がらなければならないと指令を出すが、脳が揺れて手足に力が入らなかった。どうにか踏ん張りヨロヨロと立ち上がろうとしたが、途中で膝が折れて俯せに這いつくばってしまった。
「げあっ……! クソッ……クソォ!」
ドッドッドッドッドッ。
びちゃっ。
鼓動に合わせて勢いよく鼻血が噴き出した。体がいうことを聞かないからそれを拭うこともできず、ただただ地面に向かって悪態を零した。
もう拳を握れない。もう立ち上がれない。もう目を開けられない。敵わないと悟った瞬間から、立っている意味なんてなかったんだ。
薩摩は、意識を手放した。
翌日。
新入生の教室は体育倉庫で何やら起こったらしい騒動の話で持ち切りだった。
「見たかよ、体育倉庫の血!」
「げぇーっ! マジ? オレ血嫌いなんだよ。どうせケンカだろ」
「誰がやったんだろーな。やっぱ先輩かな。三年の下総さんって人が深淵で一番ケンカが強いんだろ」
「でも俺が先輩から聞いた話じゃ、下総さんてとっくに引退したって話だったけどなあ」
騒動の当の本人・薩摩棗は、クラスメイトがそのような他人事の笑い話をしている少し離れた席で沈黙していた。彼は本日尋常ではないほど顔面を腫らして登校した。顔の筋肉を動かすと痛いので、なるべく誰とも話さないようにしていた。努めてそうしなくても物騒な騒動の翌日、絆創膏とガーゼだらけの派手な顔をしていればクラスメイトからも倦厭されて話しかけられないのだけれど。
今日の薩摩は誰とも話す必要はなかった。昨日のことをひとりで反芻するだけで敗北者の過ごし方としては充分だ。
(下総蔚留や前田武藏はあの男より強ェって……? 嘘だろ。そんなヤツこの世にいるのかよ。世の中にはどんだけ強ェヤツがゴロゴロしてんだ)
ガタッ、と薩摩は急に椅子から立ち上がった。やはり周囲の席のクラスメイトは声をかけようとはしなかった。一瞬シンと静まり、薩摩をチラチラと見るだけ。
薩摩が教室の出入り口のほうへ歩いて行き、出て行こうとすると「薩摩君!」とひとりのクラスメイトに呼び止められた。振り返ると学級委員長がそこにいた。
「どこに行くんだい。もうすぐ授業が始まるよ」
「早退」
「早退って君、まだ2限目だよ」
「このツラ見ろよ。痛くて授業なんか集中できねーよ」
薩摩はそれだけ言い残して教室から出て行った。
下駄箱にやって来た薩摩は、黙々と靴を履き替えていた。脳内ではやはり昨日のことを考えていた。何をしていても昨日の情景しか頭に浮かんでこないのだから仕方がない。
長門尤士は、強かった。自分とは比べようもないほど、想像を遙かに凌駕するほど。
中学時代は敵無しと言っても過言ではなかったし、腕っ節にかけては群を抜いていると自負があった。だからこそキングや当代のトップに位置する武藏に勇んで挑もうとしたわけだが、自分はそのふたりよりも弱いと言う長門の足許にも及ばなかった。あれよりも強い人間がいるというのだから、己の矮小を思い知るより他にない。
そういえば、喧嘩に負けて悔しくもなく復讐心も起きないのも不思議だ。敵無しと言っても必ずしも連戦連勝だったわけではない。勝ちもすれば負けるときもある。負ければ勝つまで同じことを繰り返すだけだ。これまではそうしてきたのに、これからはどうしていこう。昨日の敗北が決定的すぎて、長門の存在が圧倒的すぎて、今日から何をしたらよいのか分からない。
自分は何がしたかったのか、何を目指せばよいのか、何をすべきなのか。街灯のない夜道にひとりで置き去りにされた子どものように、どちらに進めばよいのかも、何を目印に進めばよいのかも、まったく見失ってしまった。
「じゃあね、真珠。また明日」
「また明日ねー。蔚留くんを見かけたら、真珠は先にコンビニに行ってるよって言っといてー」
聞き覚えのある声を耳にして、薩摩は顔を上げた。見覚えのある、高校生にしてはやや小柄な後ろ姿が視界に躍り出た。ステップを踏むような軽やかな足取りで、髪の毛をふわふわと左右に揺らして。
「……あ」
薩摩はつい声を漏らした。引き留めるつもりなどなかったのに何故、声を出してしまったのだろう。
小さな背中はふわっと振り返り、薩摩のほうを見た。
「あ。キミ」
真珠は薩摩を見るなり、小走りに近寄ってきた。そして派手な有様になっている薩摩の顔をマジマジと見た。
「薩摩くん、ケンカしたの?」
薩摩は素直にコクッと頷いた。真珠に避けられたり嫌がられたりすると思ったのに、近寄ってきたり普通に話しかけてきたりしたのは意外だった。薩摩は、キングの彼女だけあって、見た目よりも肝が据わっているのかもしれないなどと思いつつ、半ばボーッと足許に目を落とした。
「蔚留くんと……じゃないよね?」
真珠は不安げな顔で薩摩に尋ね、薩摩はフルフルと首を横に振った。
「二年の……長門尤士、つーヤツ」
「長門くんと⁉」
真珠は驚きながらも胸を撫で下ろした。下総が喧嘩をしたと聞くだけで卒倒しかねないほどに心配してしまう極度の強迫症の持ち主だから、長門には悪いが相手が下総ではないと聞いて安堵した。
「マジ強くて完敗っスよ。こんなんじゃとても下総蔚留なんて無理だ……」
薩摩は自嘲気味な笑みを零した。
真珠は薩摩の口調に違和感を覚えて首を捻った。真珠が記憶している先日の彼の態度はこのような雰囲気ではなかったはずだ。だから、気落ちしていると思ってしまった。
「じゃあもう、蔚留くんとケンカしない?」
薩摩は顔を上げないまま随分素直にコクッと頷いた。
「じゃあ友だちになるの?」
「友だち? ハッ、兵隊の間違いっしょ」
薩摩は、真珠の問いかけを俯いたまま鼻先で笑った。真珠は真面目な顔でフルフルと首を横に振った。
「蔚留くんはみんなのことそんな風に言わないよ。〝仲間〟って言うもの。本当は蔚留くんたちの付き合い方は真珠にはよく分からないけど……それって友だちってことでしょ?」
「仲間……」
薩摩は真珠が言ったままの言葉を床に向かってポツリと零したのち、黙りこんで反芻した。真珠には、彼が、下総たちのような人種が、その言葉に対して何を思うのか理解が及ばないけれど、いま立ち去るのは見捨てるような気がして、反応を待ってみた。
数秒後、薩摩はまた自嘲気味に笑った。
「俺は無理っスよ。俺は真っ向からケンカ売っちまった」
諦めたように言った薩摩に対し、真珠は「でも」と返した。
「勇炫くんも最初は蔚留くんとケンカしたよ」
薩摩は顔色を窺うように眼球だけ動かして真珠を見た。真珠の顔色も態度もまるで自分を引き留めるかのようだった。この人は下総に最も近しいであろう人物なのに、どうして下総に噛みつこうとした自分を突き放さないのか、その意図が分からなかった。しかし善意の他に所思がないことは見れば分かる。分からないのは、何故善意で以て接しようとするのかだ。
もしやこの人は稀少な根っからの善人という奴なのではないか、と薩摩が気づき始めた頃、真珠が口を開いた。
「薩摩くんは、蔚留くんとかみんなのこと嫌い?」
「イヤ、好きとか嫌いとかじゃなくて……」
真珠があまりにも率直な言葉で問いかけるから薩摩は答に詰まってしまった。純真な真珠にそのような簡単な道理ではないのだよと伝えたいのだが、昨日までの薩摩を突き動かしていたものだって至極単純な欲求と動機なのだ。
「じゃあ大丈夫」
真珠はニッコリと微笑んだ。
その微笑みは無視できないと、薩摩は強烈に思ってしまった。彼女は人を殴る気持ちなんて少しも理解できないだろうし、自分のことなんてよく知りもしないくせに、撥ね除けられない威力がある。何の根拠もない「大丈夫」なんて無責任な言葉は無視してしまえばいいし、蹴飛ばしてしまえばいいし、笑い飛ばしてしまえばいい。昨日までの自分ならきっとそうしたに違いない。なのに何で「ありがとう」なんて思ってしまうのだろう。
「大丈夫だよ。全部、薩摩くん次第だから」
そう言い残して、真珠は去っていってしまった。
薩摩は下駄箱に肩から凭りかかり、息をひとつ吐いた。少し話してしまったので顔面の傷がじんわりと痛んだ。
「痛ェ……」
§ § §
翌日。
晴れやかな空の下、屋上には武藏、備前、長門という深淵高校の主立った面々と、薩摩がいた。
薩摩は彼らの前に深々と頭を差し出していた。心を入れ替えたことは言葉を借りずとも一目見るだけで伝わるほど潔い態度だった。
「すんませんした」
その一言を告げたきり、何秒待っても薩摩は頭を上げず、声も漏らさなかった。その天頂は武藏に向かっていた。薩摩は武藏を深淵高校のトップだと心から認め、自分の上に立つに足る男と認め、武藏に向かって頭を下げたのだ。
備前は柵に頬杖を突いて薩摩をじっくりと観察しながら「フーン」と零した。それから長門のほうへ目を動かしてフフッと笑った。
「長門にしてはようやったもんやな」
「コレは……」
「そんだけこの一年がしぶとかったっちゅうことか」
長門は言いにくそうにモジッとした。彼は自分の勝利をこれ見よがしに自慢するような性格ではないのだ。
備前は口に咥えていた煙草を指に挟み、天を振り仰いで白い煙を吐いた。
「で、コイツどうする? 武藏。俺はオマエに従うで。オマエが俺らのアタマやからな」
「…………」
武藏は腕組みをして仁王立ちになり、薩摩の後頭部を俯瞰気味に見詰めていた。沈黙は長く続いた。
武藏は厳しい形相をして薩摩の後頭部をジッと睨んでおり、長門のほうが居ても立ってもいられない気持ちになった。「武藏……」と思わず口を開いたところ、長門の前に備前の足が伸びてきた。
「口出すな長門。これは武藏が決めることや」
長門は穏やかな性格で人一倍人間がよい。一度牙を剥いたとはいえ、後輩の薩摩の処遇を案じているだろうことは、備前には容易く推知することができた。しかし此処は手を貸すべき場面ではない。
薩摩が武藏に下るというのなら、従うというのなら、証を立てなければならない。薩摩は一度弓を引いてしまったのだから、二度と裏切らないと、二心はないと、武藏の為に戈となり剣となり如何なる敵を前にしても勇敢に戦うと、証を立てなければならない。そしてその証を武藏に認められなければならない。
「決めた」
武藏はおもむろに腕組みを解いた。
長門は武藏の決断を、固唾を呑んで見守った。いくら仲間とは言え武藏がリーダーとして号令を発するのならば、長門にはそれを覆す権利はない。
「一年薩摩ナツメ! お前を斬りこみ隊長に任命する」
武藏は薩摩をビシッと指差して高々と号令は発した。
薩摩は武藏の言葉を聞いてハッとして顔を上げた。その顔は虚を突かれたような、新入生らしい初々しさがある少々間抜けな表情をしていた。
備前は煙草を咥えたままクスクスと笑い、長門は拍子抜けしたように肩を落とした。
「オマエが難しい顔して考えてたんはソレか?」
「え。だって役割分担は大事っしょ? 団体行動なんスから」
「そーやな、大事やな。あはははは」
備前は腹を押さえて笑い、武藏は何故爆笑されているのか分からず不思議そうに首を傾げた。
長門はホッと胸を撫で下ろした。薩摩の肩にポンと手を置いて小声で「よかったな」と囁いた。薩摩は驚いたようなむず痒いような感じがしてどのような顔をしたらよいのか分からなかった。
こうして仲間となった薩摩は、一ヶ月足らずで一年生全体を配下に収めた。下総蔚留引退後、その地盤を引き継いだ前田武藏は深淵高校を率いて堅固な一枚岩を構築する。その過程に於いて、薩摩の貢献は大きかったと言える。そして深淵高校はこの後、近隣一帯の覇権校として君臨する荒高校への強力な対抗馬として名を馳せることとなるのであった。
薩摩は肩を大きく上下させ体ごと呼吸をしていた。しかし、長門は息ひとつ乱していなかった。スタミナは体格に影響される。薩摩より遙かに体の大きい長門のほうがスタミナがあるのは当然だが、その差はあまりにも歴然だった。単純なスタミナの問題ではなく、長門が並外れて頑丈でタフなのだ。
(何発かいいの入れてんのに何で効いてねーんだ……バケモノかよ。この野郎には、俺じゃ通用しねーってのかよ!)
「もうやめとけ」
長門から声をかけられ、薩摩は前髪の隙間から長門を睨みつけた。まるで敵意のない目に晒されるのが悔しかった。
対比的に長門の目が至極穏やかなのは自分の勝利を確信しているからだ。それは傲慢や慢心ではなく、経験から判断する妥当な結果だ。長門にとって薩摩は自分より体の大きな外敵に威嚇の為に本能的に牙を立てる小犬と大差なかった。
「もう分かっただろ、俺には勝てない。俺に勝てないようじゃ下総さんにも武藏にも勝てない」
「うるせえェ!」
「ふたりは強いぞ」
「うるせェんだよッ!」
目の前の男に勝てないことが悔しいのか、憧れの男に届かないことが悔しいのか、薩摩自身にももう分からなくなってしまった。ただ分かることは、目の前の男は自分よりも強いということ。分かっている、分かっているのだ。自分の運命を悟れないような小物ではない。けれども一度抜いた刀を鞘に収める方法は知らなくて。
「吐いた唾は飲めねェよ……センパイ」
薩摩はそう言って不敵にニヤッと笑った。
「俺は自分がどこまで通用するのか知りてぇんだよ!」
「俺までだ」
長門が確信めいて言い放った途端に、薩摩は長門に向かって駆け出した。
好んで痛めつけたり勝利に酔ったりする趣味はない。暴力や痛みはできれば避けてのんびり生きていたい。何処まで行けるかと問われれば、お前の足で行けるところまで行けばいいと答える。しかし武藏に対して牙を剥くというのなら、返り討ちにするのが長門に定められた使命。
「俺に負けて目が覚めたら、何で俺に勝てないのか考えてみたらいい」
「あァッ⁉」
「どれだけ強くたって自分の為にしかケンカできないヤツなんか大した男じゃない」
薩摩はめいいっぱい踏み切って大きく飛び上がり、長門へ跳び蹴りを繰り出した。長門は身を仰け反ってそれを回避した。
「じゃあアンタは何の為にケンカしてるって? 前田の為にケンカしてやってるっつーのか。ケンカは慈善事業かよ、気色悪ィ」
「俺は武藏の為になら体を張れる。自分の役目に誇りを懸けてる。お前は、自分のケンカに何を懸けている?」
薩摩は顔を上げなかった。単純にこれまでに殴られた顔が痛いからではなく、疲労でそのような余力すら無かったからではなく、長門から真っ直ぐに見詰められていたから。誇りという強い光を秘めた揺るぎない眼光。年若く短慮な彼は、それに対抗すべき手段を持ち合わせてはいなかった。
「……たかがケンカだろ。ンな大層なこと考えてられっかよ」
「軽い拳だ。そんなもの、通用しない」
薩摩はチラリと自分の拳を一瞥した後、眼球だけ動かして長門の拳を睨んだ。とても大きな拳を正直に羨ましいと感じた。何よりも強く固いと信じていたはずの己の双つの拳が、玩具に見えるほど、羨ましく大きな拳だ。
「ハッそうかもな……。でも、だからって、吐いた唾は飲めねーっつってんだろ」
薩摩はギリッと奥歯を噛み締め、頭に突き抜ける痛みを噛み締め、爪が食いこんで血が滲み出すほど拳を握り締めた。
道理や事実を解さない本物の阿呆ではないから結果は分かっている。しかし結末を理解したからといって足を止めてしまったら、最初の一歩を踏み出した意味さえも無くなってしまう。勝利や成果など残らなくてもよい。ただ無価値や無意味に成り下がるのだけは嫌だ。
ドボォッ!
薩摩の渾身の一撃が長門のボディへ深くめり込んだ。普通なら地面に蹲るような一撃だが長門は倒れなかった。何度薩摩に殴られても決して倒れない。
薩摩は「クソ」と唾棄して顔を上げた。刹那かち合った長門の眼は、水面のように静まり返っているくせに、その奥にはチロチロと揺れる微かな光を灯していた。熱と痛みを噛み殺しそのような眼をする人間には、勝てる気がしない。勝てる気がしないと自覚した瞬間に、勝敗は喫している。
「っ……!」
薩摩の拳は速く動作は俊敏であり、大柄な長門では避けるのには苦労するが、攻撃を終えて動作が停止した瞬間ならば捉えるのはそう苦労はしない。長門が拳を握りこみ、薩摩はギリッと力いっぱい奥歯を噛んだ。
ガキィンッ!
顔面に鉄球がぶち当たり、強烈な閃光に目を奪われた。視界がただただ白光に支配され、上下左右が逆さまになり、体が宙に浮いて刹那を漂う。宙を漂っている間は夢も現実もないから、痛みはよく分からないのだ。ただ自分が重力に反していることだけは体感できる。
薩摩はそのまま後方に2メートルほど吹っ飛び、背中から地面に落ちた。
ずしゃあっ!
「がっはぁっ‼」
後頭部を強かに打ちつけ、薩摩は何かを吐き出した。
立ち上がらなければならないと指令を出すが、脳が揺れて手足に力が入らなかった。どうにか踏ん張りヨロヨロと立ち上がろうとしたが、途中で膝が折れて俯せに這いつくばってしまった。
「げあっ……! クソッ……クソォ!」
ドッドッドッドッドッ。
びちゃっ。
鼓動に合わせて勢いよく鼻血が噴き出した。体がいうことを聞かないからそれを拭うこともできず、ただただ地面に向かって悪態を零した。
もう拳を握れない。もう立ち上がれない。もう目を開けられない。敵わないと悟った瞬間から、立っている意味なんてなかったんだ。
薩摩は、意識を手放した。
翌日。
新入生の教室は体育倉庫で何やら起こったらしい騒動の話で持ち切りだった。
「見たかよ、体育倉庫の血!」
「げぇーっ! マジ? オレ血嫌いなんだよ。どうせケンカだろ」
「誰がやったんだろーな。やっぱ先輩かな。三年の下総さんって人が深淵で一番ケンカが強いんだろ」
「でも俺が先輩から聞いた話じゃ、下総さんてとっくに引退したって話だったけどなあ」
騒動の当の本人・薩摩棗は、クラスメイトがそのような他人事の笑い話をしている少し離れた席で沈黙していた。彼は本日尋常ではないほど顔面を腫らして登校した。顔の筋肉を動かすと痛いので、なるべく誰とも話さないようにしていた。努めてそうしなくても物騒な騒動の翌日、絆創膏とガーゼだらけの派手な顔をしていればクラスメイトからも倦厭されて話しかけられないのだけれど。
今日の薩摩は誰とも話す必要はなかった。昨日のことをひとりで反芻するだけで敗北者の過ごし方としては充分だ。
(下総蔚留や前田武藏はあの男より強ェって……? 嘘だろ。そんなヤツこの世にいるのかよ。世の中にはどんだけ強ェヤツがゴロゴロしてんだ)
ガタッ、と薩摩は急に椅子から立ち上がった。やはり周囲の席のクラスメイトは声をかけようとはしなかった。一瞬シンと静まり、薩摩をチラチラと見るだけ。
薩摩が教室の出入り口のほうへ歩いて行き、出て行こうとすると「薩摩君!」とひとりのクラスメイトに呼び止められた。振り返ると学級委員長がそこにいた。
「どこに行くんだい。もうすぐ授業が始まるよ」
「早退」
「早退って君、まだ2限目だよ」
「このツラ見ろよ。痛くて授業なんか集中できねーよ」
薩摩はそれだけ言い残して教室から出て行った。
下駄箱にやって来た薩摩は、黙々と靴を履き替えていた。脳内ではやはり昨日のことを考えていた。何をしていても昨日の情景しか頭に浮かんでこないのだから仕方がない。
長門尤士は、強かった。自分とは比べようもないほど、想像を遙かに凌駕するほど。
中学時代は敵無しと言っても過言ではなかったし、腕っ節にかけては群を抜いていると自負があった。だからこそキングや当代のトップに位置する武藏に勇んで挑もうとしたわけだが、自分はそのふたりよりも弱いと言う長門の足許にも及ばなかった。あれよりも強い人間がいるというのだから、己の矮小を思い知るより他にない。
そういえば、喧嘩に負けて悔しくもなく復讐心も起きないのも不思議だ。敵無しと言っても必ずしも連戦連勝だったわけではない。勝ちもすれば負けるときもある。負ければ勝つまで同じことを繰り返すだけだ。これまではそうしてきたのに、これからはどうしていこう。昨日の敗北が決定的すぎて、長門の存在が圧倒的すぎて、今日から何をしたらよいのか分からない。
自分は何がしたかったのか、何を目指せばよいのか、何をすべきなのか。街灯のない夜道にひとりで置き去りにされた子どものように、どちらに進めばよいのかも、何を目印に進めばよいのかも、まったく見失ってしまった。
「じゃあね、真珠。また明日」
「また明日ねー。蔚留くんを見かけたら、真珠は先にコンビニに行ってるよって言っといてー」
聞き覚えのある声を耳にして、薩摩は顔を上げた。見覚えのある、高校生にしてはやや小柄な後ろ姿が視界に躍り出た。ステップを踏むような軽やかな足取りで、髪の毛をふわふわと左右に揺らして。
「……あ」
薩摩はつい声を漏らした。引き留めるつもりなどなかったのに何故、声を出してしまったのだろう。
小さな背中はふわっと振り返り、薩摩のほうを見た。
「あ。キミ」
真珠は薩摩を見るなり、小走りに近寄ってきた。そして派手な有様になっている薩摩の顔をマジマジと見た。
「薩摩くん、ケンカしたの?」
薩摩は素直にコクッと頷いた。真珠に避けられたり嫌がられたりすると思ったのに、近寄ってきたり普通に話しかけてきたりしたのは意外だった。薩摩は、キングの彼女だけあって、見た目よりも肝が据わっているのかもしれないなどと思いつつ、半ばボーッと足許に目を落とした。
「蔚留くんと……じゃないよね?」
真珠は不安げな顔で薩摩に尋ね、薩摩はフルフルと首を横に振った。
「二年の……長門尤士、つーヤツ」
「長門くんと⁉」
真珠は驚きながらも胸を撫で下ろした。下総が喧嘩をしたと聞くだけで卒倒しかねないほどに心配してしまう極度の強迫症の持ち主だから、長門には悪いが相手が下総ではないと聞いて安堵した。
「マジ強くて完敗っスよ。こんなんじゃとても下総蔚留なんて無理だ……」
薩摩は自嘲気味な笑みを零した。
真珠は薩摩の口調に違和感を覚えて首を捻った。真珠が記憶している先日の彼の態度はこのような雰囲気ではなかったはずだ。だから、気落ちしていると思ってしまった。
「じゃあもう、蔚留くんとケンカしない?」
薩摩は顔を上げないまま随分素直にコクッと頷いた。
「じゃあ友だちになるの?」
「友だち? ハッ、兵隊の間違いっしょ」
薩摩は、真珠の問いかけを俯いたまま鼻先で笑った。真珠は真面目な顔でフルフルと首を横に振った。
「蔚留くんはみんなのことそんな風に言わないよ。〝仲間〟って言うもの。本当は蔚留くんたちの付き合い方は真珠にはよく分からないけど……それって友だちってことでしょ?」
「仲間……」
薩摩は真珠が言ったままの言葉を床に向かってポツリと零したのち、黙りこんで反芻した。真珠には、彼が、下総たちのような人種が、その言葉に対して何を思うのか理解が及ばないけれど、いま立ち去るのは見捨てるような気がして、反応を待ってみた。
数秒後、薩摩はまた自嘲気味に笑った。
「俺は無理っスよ。俺は真っ向からケンカ売っちまった」
諦めたように言った薩摩に対し、真珠は「でも」と返した。
「勇炫くんも最初は蔚留くんとケンカしたよ」
薩摩は顔色を窺うように眼球だけ動かして真珠を見た。真珠の顔色も態度もまるで自分を引き留めるかのようだった。この人は下総に最も近しいであろう人物なのに、どうして下総に噛みつこうとした自分を突き放さないのか、その意図が分からなかった。しかし善意の他に所思がないことは見れば分かる。分からないのは、何故善意で以て接しようとするのかだ。
もしやこの人は稀少な根っからの善人という奴なのではないか、と薩摩が気づき始めた頃、真珠が口を開いた。
「薩摩くんは、蔚留くんとかみんなのこと嫌い?」
「イヤ、好きとか嫌いとかじゃなくて……」
真珠があまりにも率直な言葉で問いかけるから薩摩は答に詰まってしまった。純真な真珠にそのような簡単な道理ではないのだよと伝えたいのだが、昨日までの薩摩を突き動かしていたものだって至極単純な欲求と動機なのだ。
「じゃあ大丈夫」
真珠はニッコリと微笑んだ。
その微笑みは無視できないと、薩摩は強烈に思ってしまった。彼女は人を殴る気持ちなんて少しも理解できないだろうし、自分のことなんてよく知りもしないくせに、撥ね除けられない威力がある。何の根拠もない「大丈夫」なんて無責任な言葉は無視してしまえばいいし、蹴飛ばしてしまえばいいし、笑い飛ばしてしまえばいい。昨日までの自分ならきっとそうしたに違いない。なのに何で「ありがとう」なんて思ってしまうのだろう。
「大丈夫だよ。全部、薩摩くん次第だから」
そう言い残して、真珠は去っていってしまった。
薩摩は下駄箱に肩から凭りかかり、息をひとつ吐いた。少し話してしまったので顔面の傷がじんわりと痛んだ。
「痛ェ……」
§ § §
翌日。
晴れやかな空の下、屋上には武藏、備前、長門という深淵高校の主立った面々と、薩摩がいた。
薩摩は彼らの前に深々と頭を差し出していた。心を入れ替えたことは言葉を借りずとも一目見るだけで伝わるほど潔い態度だった。
「すんませんした」
その一言を告げたきり、何秒待っても薩摩は頭を上げず、声も漏らさなかった。その天頂は武藏に向かっていた。薩摩は武藏を深淵高校のトップだと心から認め、自分の上に立つに足る男と認め、武藏に向かって頭を下げたのだ。
備前は柵に頬杖を突いて薩摩をじっくりと観察しながら「フーン」と零した。それから長門のほうへ目を動かしてフフッと笑った。
「長門にしてはようやったもんやな」
「コレは……」
「そんだけこの一年がしぶとかったっちゅうことか」
長門は言いにくそうにモジッとした。彼は自分の勝利をこれ見よがしに自慢するような性格ではないのだ。
備前は口に咥えていた煙草を指に挟み、天を振り仰いで白い煙を吐いた。
「で、コイツどうする? 武藏。俺はオマエに従うで。オマエが俺らのアタマやからな」
「…………」
武藏は腕組みをして仁王立ちになり、薩摩の後頭部を俯瞰気味に見詰めていた。沈黙は長く続いた。
武藏は厳しい形相をして薩摩の後頭部をジッと睨んでおり、長門のほうが居ても立ってもいられない気持ちになった。「武藏……」と思わず口を開いたところ、長門の前に備前の足が伸びてきた。
「口出すな長門。これは武藏が決めることや」
長門は穏やかな性格で人一倍人間がよい。一度牙を剥いたとはいえ、後輩の薩摩の処遇を案じているだろうことは、備前には容易く推知することができた。しかし此処は手を貸すべき場面ではない。
薩摩が武藏に下るというのなら、従うというのなら、証を立てなければならない。薩摩は一度弓を引いてしまったのだから、二度と裏切らないと、二心はないと、武藏の為に戈となり剣となり如何なる敵を前にしても勇敢に戦うと、証を立てなければならない。そしてその証を武藏に認められなければならない。
「決めた」
武藏はおもむろに腕組みを解いた。
長門は武藏の決断を、固唾を呑んで見守った。いくら仲間とは言え武藏がリーダーとして号令を発するのならば、長門にはそれを覆す権利はない。
「一年薩摩ナツメ! お前を斬りこみ隊長に任命する」
武藏は薩摩をビシッと指差して高々と号令は発した。
薩摩は武藏の言葉を聞いてハッとして顔を上げた。その顔は虚を突かれたような、新入生らしい初々しさがある少々間抜けな表情をしていた。
備前は煙草を咥えたままクスクスと笑い、長門は拍子抜けしたように肩を落とした。
「オマエが難しい顔して考えてたんはソレか?」
「え。だって役割分担は大事っしょ? 団体行動なんスから」
「そーやな、大事やな。あはははは」
備前は腹を押さえて笑い、武藏は何故爆笑されているのか分からず不思議そうに首を傾げた。
長門はホッと胸を撫で下ろした。薩摩の肩にポンと手を置いて小声で「よかったな」と囁いた。薩摩は驚いたようなむず痒いような感じがしてどのような顔をしたらよいのか分からなかった。
こうして仲間となった薩摩は、一ヶ月足らずで一年生全体を配下に収めた。下総蔚留引退後、その地盤を引き継いだ前田武藏は深淵高校を率いて堅固な一枚岩を構築する。その過程に於いて、薩摩の貢献は大きかったと言える。そして深淵高校はこの後、近隣一帯の覇権校として君臨する荒高校への強力な対抗馬として名を馳せることとなるのであった。
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