セブンスセブンデイズー男女七人異世界探訪ー

なぽれおんEX

文字の大きさ
2 / 22

第一話 物語は突然に。

しおりを挟む

「あーもう!どうすんのよこれ!!」

満点の星が瞬く頃。
女の怒声が二つの駆け足とともに静かな夜の森に響いた。

「んなこと言っても仕方ねえだろ!こいつ見殺しにしろってのかよ!」

それに負けじと大声を張る男。
その男の腕の中では一人の女性が抱かれていた。
ぐったりとしてこそいないが、気を失っているのか、男に身を委ねている。

「そうは言ってないけど!彼女を見かけるなり城の外壁ぶち壊して無理矢理拉致するなんて他にやり方があったでしょ!」
「ぐぬぅ…」
「それにあいつらにも顔見られてるかもしれないし!もう本当に…」

そこまで女が言いかけると、その男女はほぼ同時に何かを察知し、駆けていた足を止めた。
そしてすぐさま木陰に身を潜める。
その動きには全く無駄を感じられないほどに。

「…追っ手だと思う?」
「…あの連中なら追い付かれる可能性もあり得るが…下っ端程度じゃ流石にないだろ」
「…それあいつらなら不味いってことじゃない?」

その一言が会話を止ませた。

「……」
「…なんか言いなさいよ」
「…出てくるぞ」

男は答えを反らすように、気配のする方向へ目線を向けたまま答えた。
女は呆れたように横目でチラリと男を見てから、続いて目を向けた。
そしてガサリと草むらから気配の正体が姿を現した。

「…あら?」
「…あいつらは」

草むらから出てきたのは犬のような狐のような見た目にリスを二回り大きくしたような大きさの二体の獣だった。
それぞれ白と黒を基調とした毛並みは夜闇に埋もれることなく、艶を感じるほど美しいものだった。
そしてその獣は男女のよく知る二体でもあった。

「フィーとブラックの化身獣だったな。俺達の異常に感ずいて送り出した感じか」

そう言いながら男女は隠れていた木陰から出て、化身獣たちと対峙した。

「そうね。流石にあの子達は仕事早いわ」
「…これなら一度開けた場所まで行って連絡を取ってみるか」

男女がこれからのことを話していると化身獣の二体が顔を見合わせ、突然男の腕の中に飛び込んだ。
とっさの出来事に男は静かに慌てた。

「なんだ急に!?じゃれるなら後にしろ!」
「?…ダース、ちょっと待って」

その言葉を物ともせずに二体は男の腕の中で気を失っている少女をじっと見つめた。
その二体の異変に気づいた女がダースと呼んだ男を制止する。
二体の化身獣は一度目配せすると、自らの鼻を少女のそれぞれの頬に押し当てた。

「こいつら…勝手に力を使ってる…?」
「そうみたい。こんなこと今まであったかしら」

力の流れを察知した男女がその光景を不思議がった。
数秒ほどするとその力の流れは収まり、異変が起こった。

「うぅ…あれ…?」
「気がついたか」
「この子達が気付けしてくれたみたいね。それにしても…」
「このことはあいつらに報告だな」

少女はまだ頭が追い付いていないのか、頭に疑問符を浮かべつつ理解しようとしていた。
パニックになり暴れなかったのは彼女の胸の上に可愛らしい小動物が鎮座していたからであろうか。

「とりあえずこいつに説明するのも後回しだな。ワーシャ、もう一回寝かせてくれ」
「今話しても理解しなさそうだし、それもそうね。お嬢ちゃん、ちょっとごめんなさい」
「え…え?」

ワーシャと呼ばれた女が少女の目を覆うように手のひらをかざした。
すると少女から力が抜け、寝息を立て始めた。

「…さすが毒婦。素晴らしい仕事ぶりだ」
「…溶かされたいの?」
「やれるもんなら」

嫌味な笑顔でそう言うダースに対して、凄味を感じる笑顔で返すワーシャだった。

「それはそうと開けた場所だが…化身獣、ここまで来るのに該当する場所はあったか?」

そうダースが聞くと化身獣の二体は少女から飛び降り、先導するように走り出した。

「さすがはあの二人の化身ってところか。用意がいい」
「他の子達は脳筋だからねぇ。追いましょ」

どちらともなく二匹を追いかけるように走り出した二人。
そして四つに増えた駆ける音が夜闇に溶け込み始めたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

処理中です...