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第五話 異世界からの襲来者?
しおりを挟む「じゃあまずは一つ目の話。これはたぶんみんな気づいてると思うから簡単に言うと、計画的にしては少し力押しのごり押しって感じだった。そういう作戦だったんなら大成功だろうけど」
「少人数で行なうような話じゃないからな。言ってしまえばあれは単発式の城攻めだ」
ガイが腕を組みながら憮然と言葉をはさんだ。
そのガイの言葉に、ステラは同意を示した。
「将軍様の言う通りだね。どこぞの屋敷相手にやるならあれでいいけどこっちは障壁ありの強固な城だ。それこそ万単位の人員でもなければこの城は落とせない」
だからこそこの荒々しく強引な手口に計画性はないと説明した。
その場にいる人物たちは納得した表情を浮かべた。
それを確認したステラは話題を変えた。
「そして二つ目だけど、これは将軍様も同意見かな?」
「ではガイから見解を聞こうか」
ステラからの突然の同意の強制とクルフォルトからの急な話題振りに一瞬ぎょっとした表情を浮かべたガイだったが、すぐに顔を締めた。
「…説明は苦手なんだがなぁ」
ガイは一つ咳払いをして、話し始めた。
「…まず彼らを見て感じたのは無駄のない連携だ。それぞれがそれぞれの背中を守り、だがそれでいて攻め手を減らさない動きはまるでダンスのような」
「なぁガイ。お前が見とれるほどの二人組であることはわかったが、話が逸れているぞ」
「連け…すまん。…なぜ少数勢力と見えるのかだったな」
話の腰を折るようにそうクルフォルトに言われると、ガイはハッとしたように言葉を止め、苦々しい表情で漏らした。
「言い訳がましいことだが、完全に話が逸れていたわけでもないんだ。彼らの攻守入り混じる連携は少人数部隊の完成形と言っていいほどのものであり、役割を分ける多人数部隊の連携とは全くの別物だった。だからこそ少人数だと見た…といったところだ」
ばつの悪そうな表情ながらも自信ありげに言いきったガイに対して、とてもにこやかに話を聞いていたステラは反応した。
「正解!…なんだけどそれだと50点だよ」
「…なに?」
自信のあった解答の出鼻をくじかれ、唖然とステラを見るガイ。
その反応に満足したのか、ステラは得意気に問いかけた。
「将軍様、街に出ているハシャック様からあった昨日の報告を覚えています?」
「ネクスからの報告?たしか特に変わりなくだったか」
「そう、あの神経質なハシャック様から『変わりなく』ですよ?」
一瞬理解が追いついていなかったガイは何かに思い至った。
「…そうか!大規模な何かが動けば気の細かいあいつなら必ず感づくからこそ、あの二人組は大規模な勢力じゃないって話か」
「まぁハシャック様のことだから今日の報告で関連しそうな報告はしてきそうだけどね」
ステラは破顔しながらそう言う一方で、クルフォルトが話を進めた。
「そこは楽しみにしておこう。してステラよ、三つ目の理由はなんだ。恐らく皆もそこが一番気になっているだろう」
「たしかにそうですよね。でもこれが一番単純だったりしますよ」
「ほう?」
「先にみんなにも聞きたいんだけど、ここの壁を壊した彼らの力に覚えはある?」
ステラからの問いかけにそれぞれが答えた。
「俺はないな」
「わしもない」
「私も」
「同じくだ」
「ボクもない。それが答えだと思うよ」
ただ単純に知らない力だからこそ、別世界からの来訪者の可能性というこじつけのような話を軍師は出したが、不思議な説得力を持ってその場に染み込んでいった。
その説明に純粋な疑問としてガイが投げかけた。
「しかし他国の極秘勢力の秘術という可能性もあるだろう。それはどう考える?」
「それこそあり得ない話だよ。この国においての発言力はまさしく『力』。ボクたち七人がこの座にいることの意味を他国と言えど理解してない人間はいないよ」
「その上で、少数精鋭で殴り込みをする馬鹿はおらんということだな」
ステラの意見を後押しするようにノワーゼ老師が口を開いた。
ステラも老師の意見に同意したが、顔色は優れなかった。
「先生の言う通り!でも新進気鋭の少数精鋭が新しい力を持って現れてないって証明は現状できないから、この話は可能性の域から出てないんだけどね…」
ステラは自らがこの場の軍師として発言しているにも関わらず、持論が可能性の話から脱却できていないことにうなだれた。
だが、
「ステラよ、力はあれど、我等は神に非ずだ。すべてを見通す目なんて持てやしないさ。それでもお前さんは頑張っとるよ。安心しな」
「先生…」
ノワーゼ老師はステラを励ましつつ、口の端を上げた。
「それにな。そろそろ答えも出ようさ」
「…答え?」
そうステラが呟くと同時に、部屋の扉が勢いよくはねのけられた。
部屋からの視線がすべて扉を開けた、線の細いにこやかな青年に集中した。
「待たせた!ようやくわかったよ!」
「シャモラさん!?今までどこに…」
ステラはシャモラと呼んだ青年に食いかかる勢いで立ち上がりかけたが、それをクルフォルトが止めた。
「許せ。俺が許可した。して、成果は?」
「お待たせして申し訳ありません、陛下。そして成果ですがさきほどまで暴れまわっていた粘性水溶生物、面白いことに…」
シャモラはもったいぶるように貯めに貯めて言い放った。
「コアがなかったんですよ!」
「コアがないだと…!?」
「はい!!その上過去例を見ない生命体に研究意欲が…」
そのシャモラの一言でクルフォルトは声を荒げ、他のメンツも驚愕で顔を染めた。
ただ一人、ガイを除いて。
「…その…コアとはなんだ?」
「…あぁ」
その訝しげな顔でその新種とも思われる生命体に対して語っていたシャモラへと弱々しく質問した。
それを受けたシャモラは一瞬言葉につまり、思考に間が空くも、すぐさま状況を理解し、質問に答えた。
「コアはこの世界の生命体が必ず持っている動力源ですよぉ。まぁ将軍様には『魔石』って言ったほうが通じやすいんでしょうけど」
その答えを受け、頭の中の言葉の歯車がカチリとはまったガイは血相を変えて激高した。
「なんだと!?じゃあ魔石なしであれだけ暴れまわったのか!」
「やっとわかってくれた!そうなんですよ!」
シャモラがガイの理解が得られたことを手放しに喜んでいるかたわら、クルフォルトが呆れたように声を発した。
「…ガイは座学のほうにも力を注げ。コア云々はこの前シャモラが発表した研究文の内容そのままだぞ」
「……善処する」
ピシャリと言われ、ガイは血が昇っていた頭に冷や水を叩き込まれ、一気に静かになった。
言い放ったクルフォルトは何事もなかったように話を続けた。
「しかし暴れまわっている間にコアを消費しきった可能性はどうなんだ?」
「その件は捕獲後すぐにコアの残留を調べましたが、反応はなし…その上今現在も捕食と休眠と分裂、生命活動とも呼べる行動を繰り返していますよ」
「コアもなしに活動を続ける粘性生物は彼ら二人の撤退のタイミングから突如として現れた…もしやと思ったがやはりこれはステラの読み通りということになるかの」
考え込むように自らのあご髭を撫でながらシャモラの話を聞いていたノワーゼ老師がぼやくと同時に、部屋の扉が大きく叩かれた。
「…入れ」
「はっ!御話し中のところ、失礼いたします!」
ガイが入室を促すと、扉の先から威勢のいい応答が返ってきた。
荘厳な扉から入ってきたのは軽装の鎧をまとった一人の兵士だった。
「何用だ」
「ハシャック様より本日の定期通信が入りまして、取り急ぎお繋ぎさせていただきたくよう、指示がありましたので」
「急ぎ?…陛下」
「ちょうど城内の面子も揃っている。ネクスに繋げ」
「はっ!すぐご用意いたします!…早急に支度しろ!」
そう言い一礼した後にいそいそとローブを着た様々な年齢の魔術師たちが入室し、通信の用意に取りかかった。
それを眺めながら、クルフォルトは一人で小さく呟いた。
「さて…『姫』さらいのお仲間はどれ程のものなのか」
まるでネクスがこれから話すであろう内容があたかも姫さらいの関係者だと確信しているかのような発言は後ろで控えたメイドにしか聞こえていなかった。
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