龍×龍

結城 凛月ーきじょう りつきー

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教室

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「それにしても、魁皇総長にその容姿はなぁ」
「やっぱりまーくんもそう思う?」
「あぁ。でもこれ黒染めだろ。この学校だと逆に目立っちまうかもな」
理事長室を出てから、教室までの道のりが意外と長いらしく、話さないわけがなかった。
ていうかほんとおかしいよねこの学校。
なんで黒髪が目立つの?ダサい格好したのが失敗だ。前の学校が真面目すぎたのかな。
「それ、伊達だろ?」
「うん」
「外してみ」
ん?なんでだろ。まあいっか。
ぶ厚いメガネを外すと視界が映える。あー、よく見える。いつもの世界だ。
「...なんだお前、結構可愛い顔してんじゃん」
「何言ってるのまーくん。冗談やめてよ」
「マジでいってんのそれ?」
「え?」
「お前、なんでそんな格好してんの?」
突然真剣に話し出したまーくん。
あれ、今の会話で真面目になるところあったかな。
「なおく、あ、えっとね初代に言われたの」
「初代?まさか宮城 七桜さんのことか?」
「ん?うん、そうだよ」
「あの最凶と言われた...知り合いか?」
「天音から聞いてないの?初代は天音の兄貴だよ」
「うーわ、初耳なんだけどそれ。あいつ絞める」
ありゃりゃ、これ言っちゃダメなパターンだった?
いや、まあ大丈夫だろう。どうにかなる。
まーくんの顔引きつってたなぁ。七桜くんってそんなに怖い人だったのかな?あたしの前ではだいたいは優しかったから。稽古の時とかは厳しかったけど。
七桜くんたちのこと同じ苗字だし、気づくと思ってた。あ、でも天音は誤魔化しそう。天音は自分自身を見られないことがいちばん嫌いだから。七桜くんの名前出したらチームのみんなの態度が変わったりするのが怖かっただろうし。だから言わなかったのかな?
「初代と天音が兄弟で天音が叔父ってことは、初代も叔父?」
「そう」
七桜くんが長男、あたしの父親が次男、天音がさらにその弟で三男だ。
「...まじか。世の中狭ぇな」
天音が子供っぽいのに対してまーくんはなんだかジジくさいぞ。
「まあ、その容姿なら初代が変装させる理由もわかる気がするよ。血のつながりがあるなら尚更だな」
「...ふーん?」
「お前にゃわかんねーか」
ガハハと豪快に笑う。やっぱりジジくさい。
天音と大して変わらないはずだから、30くらいなんだろうけど、どっちかっていうと父親より爺さまに近いかもしれない。
そういえば、校舎内きれい。
カラフルな髪の不良ばっかりいる学校なのに、なんで校舎内はきれいなんだろう。
周りを見渡してるといつの間にか教室が近かったらしい。男子の大きな笑い声と、ギャルの甲高い声が聞こえる。
「んじゃ俺が呼ぶまで待ってろ。呼んだら入って来いよ」
「はーい」
ガラガラと大きな音を立てながら、まーくんは中に入っていく。さっきまでガヤガヤしてて煩かったのに、まーくんが入った瞬間静かになったんだけど。
「転入生を紹介する。妃葵、入ってこい」
顎でクイッとされたので、その位置まで歩く。
またざわざわし出した。なんなの、小学生みたい。
「自己紹介するか?」
「いや、いいよ」
「そうか。えー、コイツは黒崎 妃葵だ。席はまあ、空いてるところどっかしら適当に座っていいから」
うーん、仲良くなれそうにないなぁ。
「なにあの女、ダサくね」
「黒髪おさげで分厚いメガネとか時代遅れすぎんだろ」
「なにあれーきもいんですけどー」
「あのメガネとかまじやばいんだけど」
クスクス笑ってるし、声も普通に聞こえるし、容姿だけで判断するとかやっぱり小学生だ。
まあ、この容姿じゃさすがに近寄ろうとは思わないよね。
「窓際のいちばん後ろ座ってもいい?」
「...あー、まあアイツあんまり学校来てねぇしいいぞ、勝手に座っちまえ」
「うん?まあいいや、座るね」
やっぱりここがいちばん良い席だ。
前の学校でも常に窓際の一番後ろだったから、ここがいちばん落ち着く。まさかこの学校でも違う意味で浮くとは思わなかったけど。
まーくんの話が終わって、1限目までの休み時間。
すごく色んなところから視線を感じる。あー、やだやだ。注目されるの嫌いなんだよなぁ。
「ねぇ、あの席って佐伯くんのとこだよね、あの女大丈夫なの?」
「この学校来たばっかで知らねーんじゃね?」
「あ、そっか。まあ、バレたとき痛い目に合うのはあの女だからいいよね。佐伯くん超怖いもん」
「そうだな、あいつはマジで恐ろしいよ」
なんかこっち見ながらコソコソ話してるやつもいる。離れてるし、周りが煩いから何話してるかまでは聞こえないけど。
そのあとすぐに授業が始まった。
正直眠くてずっと寝てたから内容は一切わからない。起きたら4限目が終わってた。
大してお腹も減ってないのでまた寝ることにする。いつの間にか授業の時間だったみたいで、起きたら6限目始まる直前だった。ん?なんでみんなちゃんと席についてるんだろ。さっきまでの授業では遊んでたりしてたのに。
「おし、始めっぞー」
ああ、まーくんだ。みんなの顔引きつってる。
もしかしなくてもまーくんは怖がられてるのね。
真剣に話聞いてるみんなを見てるとほんと笑いこらえるの辛い。さっきまでの態度どこいったよ。でも、なんだかずっと寝てたから体痛いし、飽きちゃった。
屋上とか行ってみたいな、今から行こう。
周りが静かなせいで割と大きめにガタッと音を立てつつ、椅子から立ち上がる。
「どうした?」
答えるのもめんどくさい。
もうなにもかもめんどくさくなったあたしはひらひらと手を振って教室を出た。
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