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出会い
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近くにあった階段を登り、屋上へ出る。中へ入り進むと青空が目に入る。
いちばん奥のフェンスの近くに来て、周りを見渡すと壁際に人がいた。
黒髪青メッシュで遠目からでもわかるくらい容姿が整った奴だ。タバコを吸いながらこちらを見ている。
あんまり気配を感じないからびっくりした。
人がいるのはなんとなくわかったけれど、どこにいるのかとか細かいところまではわからなかった。こんなんでも全国を纏める暴走族の総長だから、気配には敏感なはずなんだけど。この男...んー、暴走族かな?
しばらくふたりとも無言で見つめ合っていたが、先に視線を逸らしたのはあたし。じーっと見てくるもんだから、つい逸らしてしまった。
せっかく屋上に来たけど人がいたし、気分じゃなくなったからタバコを吸うのはやめておく。ついでに天音に連絡しようと思ってたけどそれもやめる。悲しいことに内容忘れちゃったから。
今日は魁皇のみんなと遅くまで遊べるから気が緩んでるのかな。しっかりしないと。
少しの間、空を見ていた。空はいつ、どんなときでも嘘をつかないから好き。
携帯で時間を確認すると、授業が終わる10分前だった。もうそろそろ戻らなきゃと思って屋上の出入口に向かう。あの男の横通るのかぁ、なんかやだな。
そうは思いつつも普通に歩いていく。
「響」
男の横を通る時にボソッと聞こえた声。
つい反応して立ち止まり、男の顔を見る。男もこちらを見ていて視線が合う。
響ってあたしが朝出会ったあのキョウ?それともまったく関係ない人?あたしはこの男のこと一切知らないし、コイツもあたしのこと知ってるはずない。でもこのタイミングで“響”と言ったのはただの偶然とは思えない。うーん、何なんだ。あ、もしかしてキョウと同じ暴走族とか?考えても答えが出るわけないか。
互いに視線は交わっているのに、コイツ一切話そうとしない。あたしはまた先に視線を逸らした。
あの男のことを思い出しながら階段を下りる。
階段を下りた先の踊り場には見知った顔。それもさっきまで考えていたキョウがいた。
「キョウ」
「あ?ってお前か。なんでこんなところにいんだよ」
「屋上行ってたの」
「は?屋上?ひとりで?」
「うん、でも誰かいたよ。黒髪青メッシュの人」
「...そいつ俺んとこの総長だわ」
やっぱりそうだったのか。
じゃあ、あいつが言ってた響って今、目の前にいるキョウのことで合ってる?だとしたら、天音が言ってた県NO.1の暴走族ってキョウたちのところなのかな?
「ねえ、キョウたちの暴走族って県NO.1なの?」
「あぁ。つーかなんで知ってんだよ」
「理事長が言ってた」
「...ふーん。まあいいや。総長、あーそいつ凱っつーんだけど、凱となんか話したか?」
が、い?がい?凱。珍しい名前。
今更だけど、県NO.1の総長なんだよね、そいつ。
なんかチームとかの集団行動苦手そうなのに意外だ。体育祭とか燃えちゃう熱血系だったら面白いのに。
「ううん、話してない。凱、だっけ?そいつの横通るとき響って言われたんだけど、偶然?」
「いや、たぶん偶然じゃねぇな。午前中たまり場戻った時お前の話したんだよ、変な奴がいるってな」
「なに変な奴って。普通でしょ?」
「何言ってんだお前。そんなわかりやすい容姿してっから凱にもすぐバレたんだろ」
言い返そうとしたところでタイミングよくチャイムがなる。朝と帰りは出ないとダメなんだ。欠席とか早退扱いになっちゃう。早く行かないと。
「教室行くね」
「あぁ、1-2だろ?」
「そう。またねキョウ」
キョウと別れて教室に向かうところで思い出す。
この学校ってテスト重視なんだっけ。出席日数足りなくても問題ないんだった。まあいいや。今の時期はあたしが動くほどのやることはないからなぁ、暇つぶしって感じで学校来るか。キョウや凱っていう面白そうな人もいたし、ああ、放課後がすごく楽しみ。
教室についたところでちょうどチャイムがなった。
ガラガラと音を立てながらドアを開けるとみんなからの視線が痛い。いちばんきつい視線なのはまーくんだ。軽く睨まれてる気さえしてくる。おー、こわ。
「妃葵ァ、ちょっと放課後職員室まで来い」
「...えー」
「えーじゃねぇ、わかったな?」
「はーい」
今日はたまり場行くから早めに終わると助かるんだけど。まあ、まーくんのことだから長話はしないと思う。お説教ではないと信じよう。
いちばん奥のフェンスの近くに来て、周りを見渡すと壁際に人がいた。
黒髪青メッシュで遠目からでもわかるくらい容姿が整った奴だ。タバコを吸いながらこちらを見ている。
あんまり気配を感じないからびっくりした。
人がいるのはなんとなくわかったけれど、どこにいるのかとか細かいところまではわからなかった。こんなんでも全国を纏める暴走族の総長だから、気配には敏感なはずなんだけど。この男...んー、暴走族かな?
しばらくふたりとも無言で見つめ合っていたが、先に視線を逸らしたのはあたし。じーっと見てくるもんだから、つい逸らしてしまった。
せっかく屋上に来たけど人がいたし、気分じゃなくなったからタバコを吸うのはやめておく。ついでに天音に連絡しようと思ってたけどそれもやめる。悲しいことに内容忘れちゃったから。
今日は魁皇のみんなと遅くまで遊べるから気が緩んでるのかな。しっかりしないと。
少しの間、空を見ていた。空はいつ、どんなときでも嘘をつかないから好き。
携帯で時間を確認すると、授業が終わる10分前だった。もうそろそろ戻らなきゃと思って屋上の出入口に向かう。あの男の横通るのかぁ、なんかやだな。
そうは思いつつも普通に歩いていく。
「響」
男の横を通る時にボソッと聞こえた声。
つい反応して立ち止まり、男の顔を見る。男もこちらを見ていて視線が合う。
響ってあたしが朝出会ったあのキョウ?それともまったく関係ない人?あたしはこの男のこと一切知らないし、コイツもあたしのこと知ってるはずない。でもこのタイミングで“響”と言ったのはただの偶然とは思えない。うーん、何なんだ。あ、もしかしてキョウと同じ暴走族とか?考えても答えが出るわけないか。
互いに視線は交わっているのに、コイツ一切話そうとしない。あたしはまた先に視線を逸らした。
あの男のことを思い出しながら階段を下りる。
階段を下りた先の踊り場には見知った顔。それもさっきまで考えていたキョウがいた。
「キョウ」
「あ?ってお前か。なんでこんなところにいんだよ」
「屋上行ってたの」
「は?屋上?ひとりで?」
「うん、でも誰かいたよ。黒髪青メッシュの人」
「...そいつ俺んとこの総長だわ」
やっぱりそうだったのか。
じゃあ、あいつが言ってた響って今、目の前にいるキョウのことで合ってる?だとしたら、天音が言ってた県NO.1の暴走族ってキョウたちのところなのかな?
「ねえ、キョウたちの暴走族って県NO.1なの?」
「あぁ。つーかなんで知ってんだよ」
「理事長が言ってた」
「...ふーん。まあいいや。総長、あーそいつ凱っつーんだけど、凱となんか話したか?」
が、い?がい?凱。珍しい名前。
今更だけど、県NO.1の総長なんだよね、そいつ。
なんかチームとかの集団行動苦手そうなのに意外だ。体育祭とか燃えちゃう熱血系だったら面白いのに。
「ううん、話してない。凱、だっけ?そいつの横通るとき響って言われたんだけど、偶然?」
「いや、たぶん偶然じゃねぇな。午前中たまり場戻った時お前の話したんだよ、変な奴がいるってな」
「なに変な奴って。普通でしょ?」
「何言ってんだお前。そんなわかりやすい容姿してっから凱にもすぐバレたんだろ」
言い返そうとしたところでタイミングよくチャイムがなる。朝と帰りは出ないとダメなんだ。欠席とか早退扱いになっちゃう。早く行かないと。
「教室行くね」
「あぁ、1-2だろ?」
「そう。またねキョウ」
キョウと別れて教室に向かうところで思い出す。
この学校ってテスト重視なんだっけ。出席日数足りなくても問題ないんだった。まあいいや。今の時期はあたしが動くほどのやることはないからなぁ、暇つぶしって感じで学校来るか。キョウや凱っていう面白そうな人もいたし、ああ、放課後がすごく楽しみ。
教室についたところでちょうどチャイムがなった。
ガラガラと音を立てながらドアを開けるとみんなからの視線が痛い。いちばんきつい視線なのはまーくんだ。軽く睨まれてる気さえしてくる。おー、こわ。
「妃葵ァ、ちょっと放課後職員室まで来い」
「...えー」
「えーじゃねぇ、わかったな?」
「はーい」
今日はたまり場行くから早めに終わると助かるんだけど。まあ、まーくんのことだから長話はしないと思う。お説教ではないと信じよう。
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