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総長の帰還
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物思いにふけっていると、パンっと突然鳴った音。
何事かと思えば、空が手を叩いた音だった。
「全員集合!すぐに集まれ!」
大きな声で周りに呼びかけ、固まっていた下っ端たちは弾かれたように向かってくる。
おお、すごい。一分もしないで全員集まっちゃったよ。しかも並んでる。並び順は先月あったはずのバトルでかな?あれ、さっき奏に呼ばれてたスキンヘッドのヨシって意外と強い。28番あたりにいる。下っ端たちが並び終われば、あとは負けてない幹部たちが小さな壇上に上がる。もし、そのバトルで幹部ともあろう奴が負けると、下っ端に逆戻りだ。ていっても、今まで幹部が負けたことなんてない。そりゃ、先代幹部から直々に指名されて総長、副総長、各隊長になる。当たり前だけど、弱いわけがない。1対1の勝負なら、情報参謀が相手だとしても下っ端じゃたった一発でさえ入れることも出来ない。
「久しぶりの総長の帰還だ。姿勢を正せ」
「「はいっ!!!」」
「「総長...?」」
あたしのことを知ってるシンたちは良い声で返事をしたが、知らないヨシたちなどは首を傾げて不思議そうな顔してる。
きっと、今まで空のこと総長だと思ってたんだろうなぁ。
まぁ、実際空の方があたしより総長向きだと思う。でも、前に空に聞いたとき、妃葵っていう総長がいてからこその俺があるって言ってくれた。相変わらず優しくて、頼りになる。不安になったとき、いつも思い出すのはその言葉だった。
「みんな久しぶり、あとははじめまして?改めて、魁皇7代目総長の黒崎妃葵です。また長い間副総長に任せていてごめんなさい。それと、あたしがいない間に新しく入った奴らはあとで上に来て」
「つーわけで、新入り全員集合な。他のやつらは適当に休んどけ」
空はいつも頼られ役。兄貴肌な彼は自ら大変な仕事を引き受けてくれる。きっと、そのことがどれだけ助けになってるかなんて想像もしてないんだろう。彼は無意識で行動を起こす。あたしにとってもそれは大きな支えである。
あたしは人前に出るのはあんまり好きじゃない。それをわかってる幹部のみんなが、チームを纏めあげてくれる。特攻隊長の颯があたしの代わりにみんなを率いてくれて、情報参謀の望夢が情報収集して、その情報を元に作戦を立てるのがあたし。あと、普段みんなを纏めてくれてるのは空でしょ?奏は親衛隊長らしく優しさで包み込んでくれるし、喧嘩でも守ってくれる。あたしの役割はあんまり総長という立場っぽくはない。でも、みんながついてきてくれるから、総長という立場にたてる。もちろん、仲間がやられたら黙ってないし、抗争の時なんかはあたしも自分の拳で戦う。でも、昔のことがあってから空たちは格段と強くなった。あたしの出る幕がないことは良いことだけど、一緒に喧嘩ができないのはちょっぴり寂しかったりする。
突然の集合も終わり、上へ上がる。
新入りの奴らが後ろを歩きながら、あたしを訝しんだ顔で見てくる。まあ、目線だけなら別にいい。このくらいなら別に気にもならない。
一応、上には三部屋ある。一部屋は幹部室、もうひとつは総長室。そして、幹部専用のトレーニングルームだ。この部屋はかなり厳しいトレーニング用のマシンばかり揃ってるから、良くいえば短期間で鍛え上げることが出来る。悪く言うならば普段から鍛えてないやつが使うと体を壊しやすい。きっと魁皇メンバーにはそんな奴いないはず、と思って今までの新入りたちに特訓メニューをさせてきた。実はあたしより年上なシンたちもこのメニューを受けたことがある。といっても、あたしが直接指示したわけではない。まだ中学生だったあたしが指示したところで威厳なんかないし、誰もいうことを聞いてくれるわけがない。それをわかっていたからこそ、前総長に特訓メニューを渡し、彼がみんなに指示をした。あの時は散々弱音を吐いていたシンたちが、今ではあたしを守ってくれる。
チームとして、仲間として、こんなに嬉しいことは他にない。
「今からここに書いてあることすべてやれ」
合わせて10人いる下っ端たちの反応はまちまち。一見、そんなに厳しくないように見えるメニューだけど、基礎に基礎を重ねてそこに応用を使ってるため実際やるとかなりきつい。
あたしの特訓メニューは広いトレーニングルームを活用したスタイルだから、このメニューを三回連続で繰り返せればそいつはかなり強い。例え一回でも休まずにきちんとやり遂げることが出来ればあたしの中では合格だ。去年は結局3分の1がクリア出来なかった。ただ、去年のメンバーはかなり努力家が多かった。いくら何でもこのメニューは可哀想と昔言われたことがあり、その時からできたルール、同じ月なら何度でも挑戦してもよい。このルールに則り、メニューをクリアするために短期間で鍛え、再度挑戦する人が後を絶たず、尚且つみんなクリアするものだから人が増え、今みたいに全員の名前を覚えられない事態に陥っている。
改めて下っ端たちの動きを見ると、今年は割と良さそうだ。
一発で合格した人しか名前覚えてないから、みんなきちんと合格してくれるといいんだけど。
何事かと思えば、空が手を叩いた音だった。
「全員集合!すぐに集まれ!」
大きな声で周りに呼びかけ、固まっていた下っ端たちは弾かれたように向かってくる。
おお、すごい。一分もしないで全員集まっちゃったよ。しかも並んでる。並び順は先月あったはずのバトルでかな?あれ、さっき奏に呼ばれてたスキンヘッドのヨシって意外と強い。28番あたりにいる。下っ端たちが並び終われば、あとは負けてない幹部たちが小さな壇上に上がる。もし、そのバトルで幹部ともあろう奴が負けると、下っ端に逆戻りだ。ていっても、今まで幹部が負けたことなんてない。そりゃ、先代幹部から直々に指名されて総長、副総長、各隊長になる。当たり前だけど、弱いわけがない。1対1の勝負なら、情報参謀が相手だとしても下っ端じゃたった一発でさえ入れることも出来ない。
「久しぶりの総長の帰還だ。姿勢を正せ」
「「はいっ!!!」」
「「総長...?」」
あたしのことを知ってるシンたちは良い声で返事をしたが、知らないヨシたちなどは首を傾げて不思議そうな顔してる。
きっと、今まで空のこと総長だと思ってたんだろうなぁ。
まぁ、実際空の方があたしより総長向きだと思う。でも、前に空に聞いたとき、妃葵っていう総長がいてからこその俺があるって言ってくれた。相変わらず優しくて、頼りになる。不安になったとき、いつも思い出すのはその言葉だった。
「みんな久しぶり、あとははじめまして?改めて、魁皇7代目総長の黒崎妃葵です。また長い間副総長に任せていてごめんなさい。それと、あたしがいない間に新しく入った奴らはあとで上に来て」
「つーわけで、新入り全員集合な。他のやつらは適当に休んどけ」
空はいつも頼られ役。兄貴肌な彼は自ら大変な仕事を引き受けてくれる。きっと、そのことがどれだけ助けになってるかなんて想像もしてないんだろう。彼は無意識で行動を起こす。あたしにとってもそれは大きな支えである。
あたしは人前に出るのはあんまり好きじゃない。それをわかってる幹部のみんなが、チームを纏めあげてくれる。特攻隊長の颯があたしの代わりにみんなを率いてくれて、情報参謀の望夢が情報収集して、その情報を元に作戦を立てるのがあたし。あと、普段みんなを纏めてくれてるのは空でしょ?奏は親衛隊長らしく優しさで包み込んでくれるし、喧嘩でも守ってくれる。あたしの役割はあんまり総長という立場っぽくはない。でも、みんながついてきてくれるから、総長という立場にたてる。もちろん、仲間がやられたら黙ってないし、抗争の時なんかはあたしも自分の拳で戦う。でも、昔のことがあってから空たちは格段と強くなった。あたしの出る幕がないことは良いことだけど、一緒に喧嘩ができないのはちょっぴり寂しかったりする。
突然の集合も終わり、上へ上がる。
新入りの奴らが後ろを歩きながら、あたしを訝しんだ顔で見てくる。まあ、目線だけなら別にいい。このくらいなら別に気にもならない。
一応、上には三部屋ある。一部屋は幹部室、もうひとつは総長室。そして、幹部専用のトレーニングルームだ。この部屋はかなり厳しいトレーニング用のマシンばかり揃ってるから、良くいえば短期間で鍛え上げることが出来る。悪く言うならば普段から鍛えてないやつが使うと体を壊しやすい。きっと魁皇メンバーにはそんな奴いないはず、と思って今までの新入りたちに特訓メニューをさせてきた。実はあたしより年上なシンたちもこのメニューを受けたことがある。といっても、あたしが直接指示したわけではない。まだ中学生だったあたしが指示したところで威厳なんかないし、誰もいうことを聞いてくれるわけがない。それをわかっていたからこそ、前総長に特訓メニューを渡し、彼がみんなに指示をした。あの時は散々弱音を吐いていたシンたちが、今ではあたしを守ってくれる。
チームとして、仲間として、こんなに嬉しいことは他にない。
「今からここに書いてあることすべてやれ」
合わせて10人いる下っ端たちの反応はまちまち。一見、そんなに厳しくないように見えるメニューだけど、基礎に基礎を重ねてそこに応用を使ってるため実際やるとかなりきつい。
あたしの特訓メニューは広いトレーニングルームを活用したスタイルだから、このメニューを三回連続で繰り返せればそいつはかなり強い。例え一回でも休まずにきちんとやり遂げることが出来ればあたしの中では合格だ。去年は結局3分の1がクリア出来なかった。ただ、去年のメンバーはかなり努力家が多かった。いくら何でもこのメニューは可哀想と昔言われたことがあり、その時からできたルール、同じ月なら何度でも挑戦してもよい。このルールに則り、メニューをクリアするために短期間で鍛え、再度挑戦する人が後を絶たず、尚且つみんなクリアするものだから人が増え、今みたいに全員の名前を覚えられない事態に陥っている。
改めて下っ端たちの動きを見ると、今年は割と良さそうだ。
一発で合格した人しか名前覚えてないから、みんなきちんと合格してくれるといいんだけど。
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