龍×龍

結城 凛月ーきじょう りつきー

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結果と反感

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結果、一応10人全員が合格することは出来た。
それに関してはとりあえず一安心だけど、彼らのあたしを見る目は変わらない。うーん、どうしたら総長だということを認めさせられるのか。
...やっぱり拳で直接じゃないとダメかな?
最近はすごく平和で抗争なんてなかった。そのせいで身体がなまってるからちょうどいいかもしれない。もし、言葉で聞く耳を持たないなら身体にわからせる。それが魁皇のやり方だ。
「空さん。本当にこの人が総長なんすか?」
「あ?当たり前だろ。俺はコイツの言うことしか聞かねぇ」
「でも俺ら信じられねぇっす!こんな細い腕で本当に喧嘩できるんすか?負ける気しないっす!」
みんなで階段を降りてるとき、予想通りの発言で、やっぱりあたしのことを総長だと思えないらしい。このままだとあたしより先に空がキレそう。空は優しいから。
端正な顔立ちでいつもは少し厳ついくらいなのに、今はめちゃくちゃ眉間にシワよってるし、青筋も浮かんでピクピクしてる。大人も震え上がりそうな顔だ。
「空」
「...んだよ」
あたしの言葉に耳を傾け、怒りを押し殺してくれる。
実際のところ、これが総長と副総長の関係だ。でも、次にあたしの言いたいことが伝わっちゃったのか、かなり怖い顔だったのが突然ニヤリと笑って、その顔のまま目線を交わらせてくる。
「久しぶりに拳で語っちゃおうか」
「総長直々にか?」
「もちろん。空がやったってあたしのこと認めてくれるわけじゃないでしょ?」
空を見て少しびくついている下っ端を横目に、あたしはまーくんのところへ行く。
下っ端たちがトレーニングルームでメニューをこなしてる頃、彼はずっと様子を見ていてくれた。一緒に来たくせに放置して悪かったかな、とか思っていたけれどなんだか楽しそうだし、武勇伝好きなマコと話が盛り上がっていた。今は大部屋にいるみたいだから、そこへ向かう。その部屋はあたしがヨシと対峙していたときにシン、マコ、ハナ、マサたちがいたと思われる部屋で、簡単に言えば遊び部屋だ。一応半分はトレーニングルームのようになっているが上ほど厳しくなく、普通のジムのような機械がほとんどで、バトルが近い時期以外に自らやる人はあまりいない。残り半分は麻雀や将棋、リバーシなどなぜか(先代が置いていった)ボードゲームが多く揃っている。みんなそこで遊ぶことが多いが、飽きた奴らは大抵、外にあるバスケットコートで試合をしている。でも、港の近くにあるこの倉庫のバスケットコートは、地面が砂だ。ボールは跳ねない。楽しそうに見えていっちばんきついのがこれだ。足元が砂で安定しないから足腰は鍛えられるし、ドリブルが出来ないということはパスしか出来ないわけだから、周りを見て自分で状況判断をしないといけない。つまり判断力がつく。しかもバスケはファールが厳しい。魁皇メンバーは掟と同じようにスポーツのルールは守る真面目さんが多い。遊びでもたいてい審判がいる。審判からファールを貰わないためには相手の動きを目で見て、体で対応するしかない。その動きを少し変えれば、近距離戦で相手の攻撃を避けるという防御に見せかけて、避けつつ的確に急所を狙うという攻撃に変換することが出来る。遊ぶだけで鍛えられる。大変だけど、意外と人気なのがこのバスケ。
「どうした?」
「やっぱりここにいた。ハナいる?」
「すぐそこにな。ハナー、総長が呼んでるぞ」
「あら、どうしたの総長?」
「これから新入りの下っ端10人と喧嘩をするから怪我したときようの準備しといてほしいんだ。頼めるかな?」
「全然いいわよォ。でも、それはちょっと可哀想だわ。貴女ひとりと下っ端10人でしょ?勝ち目ないじゃない」
ドアを開けて中を覗き込めばまーくんはすぐにいた。よく見ると魁皇メンバーと麻雀をしていて役満で上がったっぽい。ニコニコ笑顔でハナを呼んでくれた。
「俺らの総長様にたかだか10人で挑もうなんて腑抜けすぎじゃねぇか?この俺が待ちくたびれるほど待った奴だぜ?これだから理解出来ねぇばかはめんどくせぇんだよ」
「もう、マサったらそんな言い方しかできないの?確かにそうかもしれないわよ、でも言ったら面白くないじゃないの」
ふたりとも愉しそうな顔をしている。
総長というとみんな強いイメージがあるみたいだけど、あたしは強さだけで総長になったわけじゃない。もちろん強さだって必要だけどそれだけじゃ総長は務まらない。上の人間になればなるほど、力だけでは従わない奴を無理やりにでも従わせなきゃいけない。頭も必要だし、言葉も態度も相手に合わせて変えられる臨機応変さが必要になる。あたしは全部、七桜くんから教わった。
「妃葵」
「奏?どうしたの」
「ん?上で颯と望夢と一緒に事の成り行きを見守ってたんだけどね、やっぱりこうなったのかぁ、と思って」
「丁度いい。幹部全員が審判でやるか」
考えて見たら幹部部屋にいたって暇か。奏はなんとなくわかるけど颯と望夢も見てるのは意外だった。颯なんか興味なさそうな顔してるのに。望夢は勉強してそうだしなあ。
「偶数だよな?んじゃ俺も審判な」
後ろから声が聞こえたかと思えば、まーくんは審判に立候補する。合わせて5人だし、うん。大丈夫だね。
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