15 / 18
いざ勝負
しおりを挟む
最初の奴はひとり。正面から右手を突き上げつつ向かってきた。
そういうときはたいていどこかしらに隙が出てくる。コイツの場合は腹だ。
目の前に迫ってきた拳をしゃがんで避け、ミートしなかったことで体勢を崩したその隙に立ち上がり、相手が避けきれないとわかっていて鳩尾に拳を入れる。
「うぐァっ...う、ぁ...」
そのまま倒れ込み、鳩尾をやられたことで横隔膜の動きが一瞬止まったのか、呼吸困難に陥ってる。少し眺めていれば呼吸はできるようになったっぽいが立ち上がれなさそうだ。
ここに倒れられると危ないなぁなんて考えていれば、シンとマコがやって来て運んでいった。きっとハナが気を利かせて先に頼んでおいてくれたのかもしれない。って言っても腹殴っただけだからなあ、大したことじゃないよね。
たったひとりやられたくらいで残りの9人は少し狼狽えてる。こんなんで大丈夫かな。
「次は誰?一人ずつじゃつまらない。みんなでかかってきなよ」
少し挑発すれば、すぐにいらつきが伝わってくる。
次に動いたのは3人。
向こうは戦力が増えるし、こっちは早く倒せて一石二鳥だね。ああ、強い奴と戦った方が楽しいし、それも加えたら一石三鳥かな?
ひとりは正面、ひとりは背面、ひとりは左側面。あたしは敵に背後は見せたくない。くるりと体の向きを変えて左側面にいた奴を正面にする。そんなことしてても、何か考えがあるのかなかなか動こうとしない。
よし、それならこっちから行くよっと。
腰を落とし、素早く一番近い正面の奴の前に行けば驚いた様に目を見開き、一歩後ずさる。これじゃいくら何でも行動が遅い。状況判断も悪い。すぐに拳を構え、左頬をガツンと殴る。視界の端で左右の奴らが動くのが見えた。ふーん、一応作戦なのかな。ふたりは拳を作り、思いっきり振りかぶっている。こんな遅い攻撃が本当に当たると思ってるのかな?わざとじゃないよね?
またしゃがんで避けてそのまま両手を握り締め、立ち上がる勢いでふたりともの顎を殴る。顎は脳震盪起こしやすいからちょっとやばいかも、なんて呑気に考えていたらそのままふたりとも倒れ、頭の上で星がぐるぐる回ってる。ふいに横から気配を感じ、とっさに軽く回し蹴りをすれば、脇腹に直撃したようでさっき正面にいて左頬を殴った奴が倒れていた。
下っ端が動けないことがわかるとシン達の他にも手の空いた奴らが来て、運んでくれる。ハナのところへ連れていき、湿布だとかすぐに出来る応急処置を施してくれている。
残りは6人。
やっぱりたかが10人程度じゃこんなものなのかな。
「このレベルであたしに勝とうとしてたの?冗談じゃないよ、魁皇ナメてんの?」
「ひ...」
「もういいよ、勝負にならない。全員まとめて相手になるからさ、早く来いよ」
少しは期待したんだけどなぁ...。
声を低くして睨んだだけでこのザマ。おかしいな、そんなビビるほどのことしてないよね。ほんとに空が認めたんだよね?信じられないんだけど。
「うわあああああっ!!」
「おらァ!いくぞ!」
「っしゃー!!!!」
半分くらいの奴が妙な雄叫びをあげながら残り6人が同時に向かってくる。仲が良いのかわからないけど、みんな並んで来てくれるから戦いやすい。これも直さなきゃ。あーあ、直さなきゃって思うくらいには育てたいと思ってるんだなぁ。みんなまだ技術とか実力はないけど、体のつくりが平均より上なのは見てわかる。だからこそ、かな。甘くはしない。いくらでも強くさせるから、早くあたしを認めてよ。それまでは容赦しない。
とりあえず目の前にいる6人の真ん中ふたりのうち左片方の顔面、今度は鼻に当たるようにしながら殴り、そのまま左に流す。仲間が倒れてきたことで姿勢を崩し、視線がそっちに向くところでもう片方の奴の腹に膝蹴りし、くの字になったところで頭のてっぺんに肘をいれる。そしてそのまま右を向き、別のふたりと対峙する。片方の膝を軽く蹴り、体勢を崩してる間にもうひとりを左拳で思いっきり殴り、その後蹴り飛ばす。蹴り飛ばしたことで空間ができさらに戦いやすくなった。さっきの膝を蹴った奴が体勢を直す頃に、こめかみに向かってつま先を叩きつける。4人やったはずだけど、最初の奴のは軽くだったから多分復活してる。だからこれで3人沈んだ。残りは3人。
倒したいけど、潰したくはない。数少ない魁皇の戦力だから。急所を狙ってるから痛いだろうし、傷もついてるはずだけど、骨は折れてないと思う。それに少し休めば治るくらいの怪我のはず。
こんなろくでもない総長だけど、仲間だけは大切だから。
「どうする?降参する?」
「...」
くるんと回転し、反対を向けばただただ固まっている3人が目に入る。今更だけど、この勝負背中をついたら負けだったっけ。あ、だからシンたちが運んでいったのか。なら、もう十分だろうしこの3人には一番手っ取り早い方法でいっか。そう思ってひとりひとりに足をかけて倒した。この時点で背中をついたから負けってのはわかるけど、この3人だけこんなんじゃちょっと不公平だし、1人ずつ拳骨入れればいいかな。
そう思ってわりと強めに頭を殴った。
そういうときはたいていどこかしらに隙が出てくる。コイツの場合は腹だ。
目の前に迫ってきた拳をしゃがんで避け、ミートしなかったことで体勢を崩したその隙に立ち上がり、相手が避けきれないとわかっていて鳩尾に拳を入れる。
「うぐァっ...う、ぁ...」
そのまま倒れ込み、鳩尾をやられたことで横隔膜の動きが一瞬止まったのか、呼吸困難に陥ってる。少し眺めていれば呼吸はできるようになったっぽいが立ち上がれなさそうだ。
ここに倒れられると危ないなぁなんて考えていれば、シンとマコがやって来て運んでいった。きっとハナが気を利かせて先に頼んでおいてくれたのかもしれない。って言っても腹殴っただけだからなあ、大したことじゃないよね。
たったひとりやられたくらいで残りの9人は少し狼狽えてる。こんなんで大丈夫かな。
「次は誰?一人ずつじゃつまらない。みんなでかかってきなよ」
少し挑発すれば、すぐにいらつきが伝わってくる。
次に動いたのは3人。
向こうは戦力が増えるし、こっちは早く倒せて一石二鳥だね。ああ、強い奴と戦った方が楽しいし、それも加えたら一石三鳥かな?
ひとりは正面、ひとりは背面、ひとりは左側面。あたしは敵に背後は見せたくない。くるりと体の向きを変えて左側面にいた奴を正面にする。そんなことしてても、何か考えがあるのかなかなか動こうとしない。
よし、それならこっちから行くよっと。
腰を落とし、素早く一番近い正面の奴の前に行けば驚いた様に目を見開き、一歩後ずさる。これじゃいくら何でも行動が遅い。状況判断も悪い。すぐに拳を構え、左頬をガツンと殴る。視界の端で左右の奴らが動くのが見えた。ふーん、一応作戦なのかな。ふたりは拳を作り、思いっきり振りかぶっている。こんな遅い攻撃が本当に当たると思ってるのかな?わざとじゃないよね?
またしゃがんで避けてそのまま両手を握り締め、立ち上がる勢いでふたりともの顎を殴る。顎は脳震盪起こしやすいからちょっとやばいかも、なんて呑気に考えていたらそのままふたりとも倒れ、頭の上で星がぐるぐる回ってる。ふいに横から気配を感じ、とっさに軽く回し蹴りをすれば、脇腹に直撃したようでさっき正面にいて左頬を殴った奴が倒れていた。
下っ端が動けないことがわかるとシン達の他にも手の空いた奴らが来て、運んでくれる。ハナのところへ連れていき、湿布だとかすぐに出来る応急処置を施してくれている。
残りは6人。
やっぱりたかが10人程度じゃこんなものなのかな。
「このレベルであたしに勝とうとしてたの?冗談じゃないよ、魁皇ナメてんの?」
「ひ...」
「もういいよ、勝負にならない。全員まとめて相手になるからさ、早く来いよ」
少しは期待したんだけどなぁ...。
声を低くして睨んだだけでこのザマ。おかしいな、そんなビビるほどのことしてないよね。ほんとに空が認めたんだよね?信じられないんだけど。
「うわあああああっ!!」
「おらァ!いくぞ!」
「っしゃー!!!!」
半分くらいの奴が妙な雄叫びをあげながら残り6人が同時に向かってくる。仲が良いのかわからないけど、みんな並んで来てくれるから戦いやすい。これも直さなきゃ。あーあ、直さなきゃって思うくらいには育てたいと思ってるんだなぁ。みんなまだ技術とか実力はないけど、体のつくりが平均より上なのは見てわかる。だからこそ、かな。甘くはしない。いくらでも強くさせるから、早くあたしを認めてよ。それまでは容赦しない。
とりあえず目の前にいる6人の真ん中ふたりのうち左片方の顔面、今度は鼻に当たるようにしながら殴り、そのまま左に流す。仲間が倒れてきたことで姿勢を崩し、視線がそっちに向くところでもう片方の奴の腹に膝蹴りし、くの字になったところで頭のてっぺんに肘をいれる。そしてそのまま右を向き、別のふたりと対峙する。片方の膝を軽く蹴り、体勢を崩してる間にもうひとりを左拳で思いっきり殴り、その後蹴り飛ばす。蹴り飛ばしたことで空間ができさらに戦いやすくなった。さっきの膝を蹴った奴が体勢を直す頃に、こめかみに向かってつま先を叩きつける。4人やったはずだけど、最初の奴のは軽くだったから多分復活してる。だからこれで3人沈んだ。残りは3人。
倒したいけど、潰したくはない。数少ない魁皇の戦力だから。急所を狙ってるから痛いだろうし、傷もついてるはずだけど、骨は折れてないと思う。それに少し休めば治るくらいの怪我のはず。
こんなろくでもない総長だけど、仲間だけは大切だから。
「どうする?降参する?」
「...」
くるんと回転し、反対を向けばただただ固まっている3人が目に入る。今更だけど、この勝負背中をついたら負けだったっけ。あ、だからシンたちが運んでいったのか。なら、もう十分だろうしこの3人には一番手っ取り早い方法でいっか。そう思ってひとりひとりに足をかけて倒した。この時点で背中をついたから負けってのはわかるけど、この3人だけこんなんじゃちょっと不公平だし、1人ずつ拳骨入れればいいかな。
そう思ってわりと強めに頭を殴った。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路
八代奏多
恋愛
公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。
王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……
……そんなこと、絶対にさせませんわよ?
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる