GIGA・BITE

鵤牙之郷

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第2話【超獣誕生】

#4

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「な、何があったんだ?」


 鎧を身につけ、大きな白い目を輝かせる怪物。そんな怪物が、先程とは打って変わって、人間のような仕草を見せる。頭を撫でながら、青年の声でぶつぶつ呟いているのだ。

「あぁ、何かクラクラする……ん? はぁっ!?」

 薄緑の装甲を纏った怪物が、傷だらけになった“人間”達を見て驚いている。これほど奇妙な光景があるだろうか。



「えっ、何してるんですか? って言うか、ここどこ?」

 体は怪物のままだが、その声、仕草は紛れもなく人間のメロのものだった。
辺りをキョロキョロと見回し、よくよく見ると自分の体にも大きな異変が起きていることに気付き、メロは悲鳴を上げる。



 ドライバーが若者から手を離し、メロの方へ走り出す。その恐ろしい形相を見てメロがまた叫ぶ。相手の攻撃を手で受け止め会話を試みるが、その腕力にドライバーが悶えている。
 人間の心が戻っても、体は怪物のまま。不本意ながらその怪力で目の前の男を苦しめてしまい、思わず「ごめんなさいっ!」と謝った。

 ここで、自分の左手首から突然声が聞こえ、メロはまた悲鳴を上げた。

『落ち着け! 事情は追って話す』

「腕輪が喋ったぁ! あれ、俺こんな腕輪してたっけ? って、うわぁっ!」

 立て続けに驚くことが続き、男を押さえる手の力が緩んだ。その隙に男は攻撃しようともがいている。



『いいか、お前は今、彼等と戦う力を持っている』

「彼等? ぞ、ゾンビのこと?」

『うぅん、まぁそれで良い。ゾンビだ。今のお前は容易に彼等を仕留められる。だが同時に……』

 攻撃してきた男の両手を、メロが慌てて掴んで押さえた。男が蹴りを入れようとしているが、メロも両腕を精一杯伸ばしており、ギリギリ攻撃を回避している。
こんな状況では腕輪から聞こえる声に集中出来ない。



『大事な話だ、ちゃんと聞け!』

「ちょっと、色々渋滞しててわからないんだけど!」

『取り敢えずソイツを蹴飛ばせ!』


 言われるがまま腹に蹴りを入れると、男がスッと吹き飛ばされていった。腕輪の声の言う通り、自分にとんでもない力が宿っていることをメロは認識した。


「出来た!」

『よしよし、よくやった! じゃあ話を戻すが、今のお前なら、ゾンビを弱毒化出来るかもしれない。体に蓄積された——』

「じゃくどくって何!? 難しい言葉わからねぇよ!」
『何でだよ! 学校で教わったろ!』
「俺の成績、下から数えた方が早いし……あっ、もう1人向かって来てる!」

 ドライバーに続いて、青年のトキシムも起き上がった。再び休戦し、メロを仕留めるべく一斉に襲いかかる。
腕輪の声に助けを乞おうとすると、
『もう! 博士うるさいっ! ごめんね~、今から言う通りにやって!』

 今度は高めの女性の声が聞こえてくるではないか。次々に巻き起こる事態に混乱するメロだったが、
「よくわからないけど、めっちゃ綺麗な声がする!」

 彼は独自の感性で落ち着きを取り戻した。

 こうしている間にも、2人の男達はメロに向かってくる。慌てて男達の攻撃を避け距離を取る。

 メロが落ち着いて話を聞ける状態になるのを待っていたかのように、再び腕輪から女性の声が聞こえてきた。それも、先程とは少し違った印象の話し方で。

『え~? 綺麗な声~? ありがとう、すっごい嬉しいな! そんな君に、やってもらいたいことがあるから、よ~く聞いてね?』

「はい!」

『ありがと~! じゃあ、左手を下に向けて、腕輪を上から2回押してほしいな!』

「腕輪を2回? や、やります!」

 向かってきた男達のパンチを躱しつつ彼等から離れると、女性に言われた通り、左手を下げ、腕輪の上部を2回押し込んだ。

《GIGA・BITE!》

 腕輪に電流が流れ、機械音声が鳴った。

「何か言ってます!」

『よしっ! じゃあ噛むのと爪を刺すのと、手のひらをぶつけるの、どれが良い?』

「え、怖っ。……じゃ、じゃあ、手のひら! 手のひらで!」


 言いながら自分の手のひらを見る。すると、変異した自分の手のひらに、円形の模様があるのが確認出来た。おそらくこれをぶつければ良いのだとメロは理解した。


『オッケー! それじゃあ思いっきり、手のひらぶつけちゃおう!』
 前方から向かって来る男達。手前にワイシャツを着た若い男、その少し後ろ、やや右側からドライバーが向かって来る。狙いを定めると、メロも2人に向かって駆け出し、右手を若者の胸に、次いで左手を怪力の男の胸に当てた。掌底打ちに似た技だ。


 メロの攻撃を受けたトキシム達は、糸が切れた人形のようにその場に倒れ込んだ。恐るおそる指でつついてみたが、動きだす気配はない。

 一件落着。安心して力の抜けたメロはそのまま座り込んだ。
安心したのは良いが、メロの体は怪物のまま。地面に散らばったガラスの破片に、うっすらと自分の顔が映し出される。
「え? こ、これ……俺なの?」
 体がプルプルと震えだす。他のゾンビよりも異様に変化した自分の顔。強靭な筋肉。信じがたい光景に、とうとうメロは意識を失って倒れてしまった。

「メロ!」

 倒れる寸前、メロの耳には、自分の名を呼ぶ声が確かに届いていた。
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