3 / 61
■本編 (ヒロイン視点)
1-3
しおりを挟む
「まさか先生、どこかのサイトで中傷を?」
琴香はあわてて頭を振った。
「ち、違うんです! 私が読者さんの期待に、応えられてなかっただけで」
「期待、ですか」
「その……読者さんからご指摘いただいたところは、担当さんにも何度か修正を求められたところだなぁと……私だけが最後までわかってなかったんだなぁと、気づいてしまって。凹んでたところにちょうど、鳴瀬さんが」
「そうでしたか……先生、あんまり気になさらなくても」
「いえ、そうもいかないです。まだ次の作品も決まってないので……前々から実力不足を感じていたのもありまして。鳴瀬さんにもたくさんご指導いただいたのに、ほんと私……情けないったら」
鳴瀬は「そんなことは」と言いつつ、スプーンを手にしたまましばらく無言になった。
「──先生、これから時間あります? 最近のエチプチ事情には明るくないっすけど、先生のことはそれなりにわかってるつもりですからね。ネーム見てもいいし、気分転換の雑談してもいいし」
「で、でも鳴瀬さん、お仕事中じゃ」
「打ち合わせ終わって直帰です。お気遣いなく」
スマホを軽やかにタップして、鳴瀬は「これ」と画面を見せてきた。
「ここのホテル、最上階にもカフェがあるんですけど。パンケーキ食いません? 写真撮りたかったんすよ、資料になりそーだし。おかず系のパンケーキもありますよ。パフェのあとだし、それどうっすか?」
「わぁ素敵ですね。好きです、パンケーキ」
「ですよねー、俺もです。ちょい早い時間ですけど、夕飯にしちゃいましょ」
じゃ決まり、と。
とんとん拍子に話が進み、立ち上がった鳴瀬を追って琴香も慌てて席を立った。
(……さっきまではあんなに苦しかったのに)
鳴瀬さんと話せてよかった。
そう思うのと同時に、頼るとしたらやっぱりこの人しかいないと、琴香は静かに心を決めたのだった。
琴香はあわてて頭を振った。
「ち、違うんです! 私が読者さんの期待に、応えられてなかっただけで」
「期待、ですか」
「その……読者さんからご指摘いただいたところは、担当さんにも何度か修正を求められたところだなぁと……私だけが最後までわかってなかったんだなぁと、気づいてしまって。凹んでたところにちょうど、鳴瀬さんが」
「そうでしたか……先生、あんまり気になさらなくても」
「いえ、そうもいかないです。まだ次の作品も決まってないので……前々から実力不足を感じていたのもありまして。鳴瀬さんにもたくさんご指導いただいたのに、ほんと私……情けないったら」
鳴瀬は「そんなことは」と言いつつ、スプーンを手にしたまましばらく無言になった。
「──先生、これから時間あります? 最近のエチプチ事情には明るくないっすけど、先生のことはそれなりにわかってるつもりですからね。ネーム見てもいいし、気分転換の雑談してもいいし」
「で、でも鳴瀬さん、お仕事中じゃ」
「打ち合わせ終わって直帰です。お気遣いなく」
スマホを軽やかにタップして、鳴瀬は「これ」と画面を見せてきた。
「ここのホテル、最上階にもカフェがあるんですけど。パンケーキ食いません? 写真撮りたかったんすよ、資料になりそーだし。おかず系のパンケーキもありますよ。パフェのあとだし、それどうっすか?」
「わぁ素敵ですね。好きです、パンケーキ」
「ですよねー、俺もです。ちょい早い時間ですけど、夕飯にしちゃいましょ」
じゃ決まり、と。
とんとん拍子に話が進み、立ち上がった鳴瀬を追って琴香も慌てて席を立った。
(……さっきまではあんなに苦しかったのに)
鳴瀬さんと話せてよかった。
そう思うのと同時に、頼るとしたらやっぱりこの人しかいないと、琴香は静かに心を決めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ハイスペミュージシャンは女神(ミューズ)を手放さない!
汐瀬うに
恋愛
雫は失恋し、単身オーストリア旅行へ。そこで素性を隠した男:隆介と出会う。意気投合したふたりは数日を共にしたが、最終日、隆介は雫を残してひと足先にった。スマホのない雫に番号を書いたメモを残したが、それを別れの言葉だと思った雫は連絡せずに日本へ帰国。日本で再会したふたりの恋はすぐに再燃するが、そこには様々な障害が…
互いに惹かれ合う大人の溺愛×運命のラブストーリーです。
※ムーンライトノベルス・アルファポリス・Nola・Berry'scafeで同時掲載しています
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「結婚したらこっちのもんだ。
絶対に離婚届に判なんて押さないからな」
既婚マウントにキレて勢いで同期の紘希と結婚した純華。
まあ、悪い人ではないし、などと脳天気にかまえていたが。
紘希が我が社の御曹司だと知って、事態は一転!
純華の誰にも言えない事情で、紘希は絶対に結婚してはいけない相手だった。
離婚を申し出るが、紘希は取り合ってくれない。
それどころか紘希に溺愛され、惹かれていく。
このままでは紘希の弱点になる。
わかっているけれど……。
瑞木純華
みずきすみか
28
イベントデザイン部係長
姉御肌で面倒見がいいのが、長所であり弱点
おかげで、いつも多数の仕事を抱えがち
後輩女子からは慕われるが、男性とは縁がない
恋に関しては夢見がち
×
矢崎紘希
やざきひろき
28
営業部課長
一般社員に擬態してるが、会長は母方の祖父で次期社長
サバサバした爽やかくん
実体は押しが強くて粘着質
秘密を抱えたまま、あなたを好きになっていいですか……?
ホウセンカ
えむら若奈
恋愛
☆面倒な女×クセ強男の不器用で真っ直ぐな純愛ラブストーリー!
誰もが振り返る美しい容姿を持つ姫野 愛茉(ひめの えま)は、常に“本当の自分”を隠して生きていた。
そして“理想の自分”を“本当の自分”にするため地元を離れた大学に進学し、初めて参加した合コンで浅尾 桔平(あさお きっぺい)と出会う。
目つきが鋭くぶっきらぼうではあるものの、不思議な魅力を持つ桔平に惹かれていく愛茉。桔平も愛茉を気に入り2人は急接近するが、愛茉は常に「嫌われるのでは」と不安を抱えていた。
「明確な理由がないと、不安?」
桔平の言葉のひとつひとつに揺さぶられる愛茉が、不安を払拭するために取った行動とは――
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※イラストは自作です。転載禁止。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる