推しの正体が幼馴染でした~人気実況者に溺愛されています~

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<10・初デートは慎重に?>

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「むむむむむむむ……」

 インターネットで検索、検索、また検索。まずは情報収集、と千鶴はレイヤードが明かしている情報だけでも集めてみようとしたのだが。
 残念ながら知恵袋でも大型掲示板でも、さほど目新しい情報はなかった。結局単純に、“彼がインドア派っぽい”ことと“あまりにもオンナの影がなさすぎてずっとゲイだと勘違いされていた”っぽいことを再確認したのみである。
 というか、元よりレイヤード、もとい遥は千鶴の推しなのだ。ファン限定動画も一通り見ているし、オンラインファンイベントも参加してきている。千鶴が知らない新しい情報など、そうそう出てくるものではあるまい。

「むむむむむむむむむむむむむむ……うう、どうしよう!どうすればいいんだぁ!?」

 前の彼氏と付き合っていた頃の件は、和歌子に話した通り。ようは、自分でデートをセッティングするようなことなどまったくの初めてなのである。
 そもそも、まだ自分は本当に遥をそういう目で見れるのかどうかわからない段階。友達からにしましょうなんて卑怯なことを言ったのは自分の方だ。あまりデートっぽいことをするのもおかしいような気がしている。
 ならば食事くらいがベターだろうか。いや、それはもう先日奢って貰ったばかりだ。彼のあの様子だと、次も自分が奢ると言い出しかねない。なんだかそれもそれで申し訳ないような。
 無論、他の用事と付随してランチでも、なら言い訳もきくが。食事だけして帰るのも代わり映えがなくてなんだかなあ、というのが本音だ。せっかくなら目新しいことがしたい。これが普通の大人の友人相手ならば、夜一杯飲むかあ!と誘ったりもするのだが。

――そういえば、遥ってお酒飲めるんだっけか?やっべ、この間それ聞いときゃよかった……。

 お酒が飲めない人間にお酒を勧めるのは論外。アルコール中毒になるならないまで行かなくても、そもそも醜態を晒すのが嫌という人もいる。あとは、単純にお酒の味が苦手という者も少なくないはずだ。
 大学時代の友人には何人か、お酒は飲めるけどビールはちょっと、という人もいた。苦くてどうしても好きになれなかったという。若い女性などだと特に、甘いカクテル系ばっかりちみちみ飲みたがるなんて人も今どき珍しくはない。
 無論、居酒屋の楽しみはお酒だけではない。お料理が美味しいお店も近年どんどん増えてはいる。そういう場所に連れていけばアルコールが苦手な人だって楽しめるだろう。が、居酒屋の雰囲気そのものが苦手なんて人もいないわけではないわけで。
 再会したばかりの男女が、いきなり居酒屋は少しハードルが高すぎるかもしれない。とすると、やっぱり食事以外で何かイベントを考えた方がいいだろうか。
 外に遊びに行くとなったら行きたいなと思う場所はいくつかなくもないのだが。



521:楽しくネットサーフィンらいふ@以下名無しがお送りします
レイヤードさん、マジで恋愛できないタイプってのもあり得るんじゃないかと個人的には思ってる。
前にファン限定動画かなんかで言ってた気がするんだけど……極端なコミュ障とアガリ症治したくてユーチューバー始めてみたんだってさ。
実は元々インドア派のぼっちで、家でゲームしたり本読んだりしてばっかりだったって



――インドア派かあ。確かにめっちゃくちゃ納得ではある。

 大型掲示板の書き込みを思い出した。彼が普段、仕事や食材の買い出しなど以外で外に出ないタイプなら――外で遊ぼうと誘うのも疲れさせてしまうかもしれない。
 きっと遥のこと、千鶴が行きたいと言えばどこにでも付き合ってはくれるだろう。が、彼が本当はやりたくないことやしたくないことに、気を使わせて参加させたいとは思わないのだ。友達として遊ぶにせよ、何にせよ。どうせなら本人も楽しいと思えることをやってみたい。
 とすれば。

――それもそれ、いきなりすぎる、とは思うけど……。

 この提案が通るかどうか、本人に尋ねてみようかと思う。
 場合によってはそれもそれで準備が必要なことだし、向こうも渋るかもしれないのだから。
 千鶴はスマホを取り出し、聴いたばかりの彼の電話番号へと連絡を入れたのだった――。



 ***



「ごめんね、いきなり尋ねちゃって」
「いいよいいよ!嬉しいよ、ちーちゃんが家に来てくれて!」

 彼は笑顔で千鶴を出迎えてくれた。
 いろいろ考えた末、千鶴はやりたいことを伝えた上で、彼の家に上がり込むことにしたのだ。
 自分に好意を持っていると知っている男の家に行く――それがどういうことを意味するのかくらい、千鶴にもわかっていることである。ひょっとしたらそういう雰囲気になるかもしれないが、それでも別に構わないと考えていた。大体、遥のことを完璧に友達としか考えていないのなら、こっちだってこうも悩んではいないのだから。
 無論、好きな女の子が家に来るからといって、それだけですぐに歓迎できる男ばかりではないだろう。というか、家に人が来ること自体を避けたい人も少なくないはずだ。それなりに過ごせるように家を綺麗に片づける必要はあるし、プライベートで見られたくないものがあるのもおかしなことではないのだから。実際、千鶴は自分のアパートに彼が来たいと言い出した場合、お断りしなければいけない状況なのは間違いなかった。なんといっても、脱ぎ散らかした衣類やら薄くてキラキラした本やら、隠さなければいけないものがあまりにも多すぎるのだから。
 遥の家は、薄緑色のオートロックのオシャレなマンションだった。二十階建てだから駅から見えるしすぐわかるよ、というのは本当のことだったらしい。自分が住んでいるボロアパートとの違いに眩暈がしたものである。

――ひょっとしてひょっとしなくてもこれ、高級マンションというやつなのでは……。

 十七階の部屋に到着するまでに、清掃業者らしき人達ともすれ違った。カウンターには、ぴしっとした黒スーツの管理会社の女性も座っていた。そして、さながら高級ホテルを思わせるようなピカピカのエントランスに廊下である。東京の一等地であることも考えるなら、どう転んでも高いのは間違いないだろう。まあ、事故物件とかそういうオチでもつけば話は違うのかもしれないが。
 実際部屋に上がらせてもらえば、一人暮らしをするには少々広い3LDKである。人気ユーチューバーの稼ぎは相当凄いものであるらしい。そういえば、最近はオンラインでテレビ出演も何度かしていたような。

――す、住む世界が違うでござる。

 彼に案内されながら廊下を進み、大きなテレビがあるリビングへ通される。ふかふかの皮張りソファーと、それとは別に可愛らしいガラステーブルと椅子が二脚。あまりの緊張ぶりに、ついつい千鶴はひっくり返った声を出してしまった。

「めっちゃ高いし綺麗な部屋……。そ、その!て、て、手を洗ってくるね!洗面所借ります!」
「いいよ。紅茶とコーヒーどっちがいい?」
「え、えっと、紅茶で!」
「おっけ」

 コーヒーも飲まないわけではないが、ここは紅茶と答えた。理由は、苦いコーヒーが飲めないのをなんとなく隠したかったからだ。
 紅茶なら何も入れずに飲めるがコーヒーはミルクと砂糖をたっぷり入れなければどうしても飲めない。まるでお子様みたいな舌だと思われそうで恥ずかしかったのである。無論、遥がそんなことで自分を馬鹿にするなんて思っていないが。

――……すっごく綺麗にしてる。一人で毎日ここ、掃除してるのか……。

 洗面所で、磨き上げられた鏡とついついにらめっこをしてしまう。コップには歯ブラシが一本立っているのみ。恐らく、ものを無駄に増やさないタイプなのだろう。洗面台の上には化粧水と日焼け止め、乳液と櫛などが最低限のみ揃えられているようだった。化粧水や日焼け止めなんかが目に見えるところに置いてあるのは、個人的にはかえって好印象だったりする。男性でも、自分の見た目や肌に気を使っている人かどうかというのは大切だからだ。

「おまたせー」

 リビングに戻ってくると、既にテーブルに紅茶が用意されていた。それから甘いクッキーが入った皿。よくよく見ればカップが置かれたソーサーの上には、追加のミルクとスティックシュガーがあるではないか。

「希望訊くの忘れたから、紅茶はミルクとか入れてないんだけど、どうする?一応、ミルクと砂糖は用意したよ。ちーちゃん甘党だから欲しいかなあって」
「え、覚えてたんだ?」
「覚えてるよ。小学校の時、ちーちゃんとよく帰り道の自販機でジュース買ってさ。一緒に近くの公園のベンチで飲んだじゃん」

 ニコニコと笑う遥。よく覚えてるなあ、と千鶴は目を丸くした。

「あそこの自販機、年中冷たいのしか置いてなかったんだけど。お茶やお水もあるのに、何がなんでもちーちゃんはそういうの買わなかった。どうせお金を使うのならば甘いものを買わなければ勿体ない!って」
「あははは、言った言った。確かに私そんなこと言ったわー」
「でしょ?で、一番よく飲んだのが、あまーいレモンティーだった。紅茶は甘くないとね!みたいなこと言ってた」

 確かにそんな話もした。なんだか懐かしくなって、カップの中に目を落とす。
 今は子供の頃とは違い、甘くない紅茶も飲めるようになっている。でも昔は、コーヒーどころか紅茶も苦いのは嫌だと駄々をこねることが多くて。散々シュガーを入れ、シロップを入れ、ジュースみたいな甘さにしようとして叱られていた記憶があるのだ。“紅茶はそういうもの”という認識がなかったのだろう。
 そんな中、あの自販機ではよそよりも甘いレモンティーを売っていて。市販の紅茶でも、あれだけは美味しく飲むことができたのである。

「ごめん、今レモンはないんだ。買っておけばよかったね」
「……ううん、いいよいいよ」

 眉を下げる遥に千鶴は首を横に振って、そっとスティックシュガーの袋をちぎった。そしてざらざらざら、と砂糖を全て投入する。紅茶に砂糖を入れるのもなんだか久しぶりだ。ミルクも足してしっかりスプーンで混ぜて、カップを口へと運んだ。

「うん、美味しい!」

 特に意図したことではなく、その言葉は自然と漏れたのである。

「紅茶美味しいよ、遥。ありがと!遥の前だからかな?」
「ちょ、ちょっとちーちゃん!」
「ふふふふふ」

 真っ赤なイチゴになった彼がなんだか可愛らしい。しばらく二人は、遠い日の思い出に記憶を馳せ、とりとめない雑談を楽しんだのだった。
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