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<13・ブレーキを壊して。>
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初めてだ、というだけあって遥のキスは初々しいものだった。そっと唇の先と先が触れるだけの、優しいバードキスから始まる。ただそれだけなのに、肩をそっと掴む遥の手が震えているのがなんだかおかしかった。
自分よりずっと、彼の方が緊張している。
当たり前と言えば当たり前かもしれない。向こうは、自分に嫌われたくなくて必死なのだろうから。
――そんなこと、あるわけないのに。むしろ……嫌われるようなことしてるの、私の方なのに。
酷いことをしている。
酷いことを言っている。
好意に甘えて、彼を試すようなことをして、まるでそれが正しいかのように思いこませて。
――でも、嘘じゃない。嘘じゃないんだよ。私、本当に恋と友情の違いがわかんなくて……でも、違いを知りたくて。そのためなら、先に踏み越えるのもいいって思ったのは本当。遥なら、いいって。
それは彼が推しだからだろうか?それとも遥だから?かっこよくなっていたから?自分でもよくわからない。
気づけばもどかしさに、千鶴の方が彼の体を抱き寄せて強いキスを強請っていた。
「!」
直前、びっくりしたように見開かれた彼と目が合って、でもすぐに何も見えなくなった。近すぎて何もピントが合わない。むしろ、自然と瞼が下りていく。柔らかい唇の感触に集中したい。甘さをもっと貪りたい。そんな衝動に駆られて、気づけば背中が弓なりに沿っている。
――柔らかい。
きっと毎日きちんと手入れしているのだろう。カサつきがまったくなく、それでいてベタついた感覚も一切ない。少し薄めの、ぷるぷるした甘い唇。大人のキスをしていいなんて許可は貰っていないし、そもそも自分の方が唇ガサガサしてて気持ち悪いかも――なんてことを考えられたのはここまでだった。
隙間を割って、彼の舌先がそっと入り込んできたからである。優しく歯列を撫でるようにしていたかと思えば、唾液を吸われるように強く撫でられた。
「んんっ……」
キスの経験だって、ないわけじゃない。前の彼とした時のことを思い出そうとしたが、うまくいかなかった。というか、あまりにも印象がないのである。セックスが気持ちよかったのは覚えているのに、情熱的なキスをした記憶がほとんどない。そうだ、あの時は千鶴の方が、もっともっとと当たり前のように先を求めてしまっていた。キスなんかよりもっと直接的な快感がほしい、さっさと満たされてキモチよくなりたいと。
だからキスはしても、本当にささやかなもので。よくよく考えればそれが最初から終わりのサインだったのかもしれない。心と心で繋がることを、千鶴自身が投げ捨ててしまっていたのかもしれない。コイゴコロと友情の境目なんてどうせわからないから、わからないままでいいやと。だったら先に体だけ満たされてしまえば問題ないやと。
それが間違いだったのだと、今になって気づいた。だって、こうして大人のキスをしているだけで、息がどんどん上がってくるのだ。心臓が五月蝿いくらいに鳴っている。我慢できないと熱い血が脳を焼く。無意識のうちに、彼の背中に回した手に力を込めていた。
酸素が足りなくなっていくのに、それさえ心地よいなんてどうかしている。まるで麻薬ではないか。
初めてであるはずの彼はきっと見様見真似で、ものすごく上手いなんてこともないはずなのに。
――酔ってるから?お互いそういう気持ちになっちゃってるから?それとも……彼、だから?
「はっ……」
きっと一分にも満たないような時間だったはずだ。それなのに、唇と唇が離れるまでの時間がやけに長く感じた。お互いの口元を、つう、と銀色が淫靡に糸を引いている。腰を動かした時、千鶴は己の下着がじんわりと湿っていることに気付かされた。キスだけで、イキそうになったのだ自分は。こんなことってあるだろうか。
遥も遥で、息が上がっている。潤んだ目、染まった頬、とても可愛くて――それ以上に男らしい目。
ずくん、と下腹部が疼いた。
「……け、結構、キス、うまいじゃん」
強がるように千鶴は言う。
「実は、他の女の子ともチューくらいしたことあったりして?」
「……っ!」
冗談交じりで言った次の瞬間、視界がひっくり返っていた。ひょえ、とおかしな声が喉から漏れる。ソファーに押し倒されたのだと、背中に当たる柔らかいクッションの感覚と視界に入る白い天井で気づかされた。
「なんで、そういうこと言うの?冗談でも怒るよ?」
「遥……」
「俺、言ったじゃんか。小学校の時からずっとずっと、ちーちゃんのことが好きだったんだって。いいな、可愛いなって思う女の子がいなかったわけじゃない。でも、俺はいっつもちーちゃんと比べてたし……オトナになってもきっとちーちゃんは昔のちーちゃんと同じ大事なものは失ってないって、それでいてすっごくかっこよくなってるんだろうなって思ってたよ。他の人なんて、考えられなかった。もし、ちーちゃんに恋人ができて、その人と幸せになるって知ったらその時は諦めるつもりだったけど、でも」
熱い手が、髪を撫でる。己の本気を信じて欲しいと、彼の声が全力で訴えていた。
「でも、ちーちゃんは俺の前に現れてくれた……彼氏がいない状態で。醜いとか現金って言ってくれていいよ、俺は本当に嬉しかったんだから。ちーちゃんは想像していた以上にかっこよくなってて……ずっとずっと、可愛くなってた。そして、俺のことを覚えててくれて……楽しくて優しい女性になってた」
「わ、私、可愛くなんか」
「そんなこと言わないで。ちーちゃん自身でも、ちーちゃんを貶めることなんか許さないから。ちーちゃんは世界で一番可愛いよ。ずっとずっとそう思ってたし、今はあの頃よりずっとそう思ってる。本当は、今すぐ攫っちゃいたいくらいなのに……俺がどんだけ我慢してるのか、ちーちゃんはわかってくれないの?ちーちゃんを傷つけたくなくて、嫌われたくなくて、一緒にいることを許してもらいたくてずっとブレーキ踏んでるってのに……」
「……ばか」
この美貌で、よくもまあ自分みたいなガサツで美人でもない女に、こんな口説き文句が言えるものだ。あるいは、彼も酔っぱらってしまっているのだろうか。明日になったら口が滑った自分を死ぬほど後悔したりもするのだろうか。
それはそれ、と思ってしまっている自分がいる。この状況に持ち込んだのは千鶴自身。ソファーに押し倒されているからって、千鶴の力ならばその気になったらいくらでも逃げられるのにそうしていない。
結局のところ、そういうこと。ブレーキを破壊しようとしているのは、千鶴の方も同じ。
「言ったじゃん、止まれなくなってもいいって。遥と、どこまで行けるか試したい。私がめっちゃくちゃ強いってこと、遥も知ってんだろ?だったらどんと来いって。……もっとアクセル踏んじゃってよ。それとも」
その首に手を回し、ぐい、と引き寄せる。男の人としてはほっそりとした首筋に、ちゅう、と軽く吸い付いた。びくり、と遥が体を震わせたことに気付く。
きっと朝には消えている、その程度の所有印。でもいいのだ。こっちから付けにいった、その事実が何より大切なのだから。
もっともっと、アクセルが壊れてしまうくらい踏み込んで、踏み入れて。抱いて、抱きしめて、抱き着いて、奥の奥まで。
「それとも、私から攻め込む方がお好み?」
「……ちーちゃん、酔ってるでしょ」
「今更。んでもってお互い様。今はそういうことでいいじゃん、ね?大体、私マジで嫌だったら、君を蹴っ飛ばして逃げてると思わない?そうしない時点でお察しだっつの」
「もう……」
彼の手が、千鶴の胸元に伸びてくる。この角度では見えないが、ぱちり、ぱちりという音でボタンが外されていることは窺い知れた。几帳面な彼らしい。丁寧に服を脱がしてくれるつもりのようだった。
ワイシャツ、キャミソール、それからブラジャー。あっという間に上はすっぽんぽんにされてしまう。横になっているせいで、ただでさえ控えめな胸がますますぺったんこになってしまっている。
「もっと大きい方が好みだったりする?なんていうか、男って基本巨乳好きだって聞くし。あと、その……乳首だけでかいの、気にしてんだけど……」
思わずそう尋ねると、遥は声を上げて笑った。
「そんなのどうでもいいよ。だって、俺がちーちゃんのこと最初に好きになったの小学校三年生だよ?その時お互い子供体型じゃん。大人になったあとのちーちゃんがどうかなんてまったく知らなかったさ」
「それもそっか」
「そうそう。本当に好きなら、そんな見た目のことなんかどうでもいいって。まあ……好きな人だからこそ、どんなカタチでも可愛いって思うのはあるけど」
「ばっ……ひゃっ!」
馬鹿、と言おうとした声がひっくり返った。胸の先っぽを、ぴん、と人差し指で弾かれたからだ。実のところ胸も結構弱いタイプである千鶴。やんわりと乳房を包み込まれるようにして揉みこまれ、どんどん息が上がっていってしまう。時々指先が乳首を撫でるのがひどくじれったい。
「ん、んんっ……」
もっと強く、敏感な場所を責め立ててほしい。そう思うのに、恥ずかしくて口に出来ない。焦れるように、勝手に両足をすり合わせてしまう。そのたび股間の濡れた感触が強くなり、恥ずかしくてたまらなくなった。
「女の人の胸って、心臓を守るために左の方がちょっと大きいって聞いたことがあるけど本当かな?」
「し、知らなっ……わかんなっ……」
「確かめてみないとね。……声、我慢しないでよ。ちーちゃんの可愛い声、もっともっと聴きたい。ほら」
「ひゃあんっ!」
伸びてくる両手で、まるで操縦桿でも握るように両胸を同時に包まれた。けして強い力ではない。じんわりと熱く。それでいて掌の中心にぴんぴんに立ち上がった乳首がぶつかって刺激を伝えてくるのだ。たまったものではなかった。思わず抵抗するように、びくびくと足を跳ねあげてしまう。
――なんで、なんでこんな焦らすかな……!は、初めてなんじゃなかったわけ!?絶対、遥だってヨユーなんかないくせに!
やるならリードしてやるぞ、くらいの心地であったのに。いつの間にかそういうものが全部吹っ飛んで、ひたすら喘がされるばかりになっている。これではまるで、夢で見たのと同じではないか。このままでは、自分一人だけ気持ちよくされて終わりになってしまいそうである。本当は、一緒に天国に行きたいというのに。
――頭が、真っ白になる。なんで。
なんでこんなに気持ちいいのだろう。霞む視界の中、ただひたすら千鶴は考え続けていたのだった。
自分よりずっと、彼の方が緊張している。
当たり前と言えば当たり前かもしれない。向こうは、自分に嫌われたくなくて必死なのだろうから。
――そんなこと、あるわけないのに。むしろ……嫌われるようなことしてるの、私の方なのに。
酷いことをしている。
酷いことを言っている。
好意に甘えて、彼を試すようなことをして、まるでそれが正しいかのように思いこませて。
――でも、嘘じゃない。嘘じゃないんだよ。私、本当に恋と友情の違いがわかんなくて……でも、違いを知りたくて。そのためなら、先に踏み越えるのもいいって思ったのは本当。遥なら、いいって。
それは彼が推しだからだろうか?それとも遥だから?かっこよくなっていたから?自分でもよくわからない。
気づけばもどかしさに、千鶴の方が彼の体を抱き寄せて強いキスを強請っていた。
「!」
直前、びっくりしたように見開かれた彼と目が合って、でもすぐに何も見えなくなった。近すぎて何もピントが合わない。むしろ、自然と瞼が下りていく。柔らかい唇の感触に集中したい。甘さをもっと貪りたい。そんな衝動に駆られて、気づけば背中が弓なりに沿っている。
――柔らかい。
きっと毎日きちんと手入れしているのだろう。カサつきがまったくなく、それでいてベタついた感覚も一切ない。少し薄めの、ぷるぷるした甘い唇。大人のキスをしていいなんて許可は貰っていないし、そもそも自分の方が唇ガサガサしてて気持ち悪いかも――なんてことを考えられたのはここまでだった。
隙間を割って、彼の舌先がそっと入り込んできたからである。優しく歯列を撫でるようにしていたかと思えば、唾液を吸われるように強く撫でられた。
「んんっ……」
キスの経験だって、ないわけじゃない。前の彼とした時のことを思い出そうとしたが、うまくいかなかった。というか、あまりにも印象がないのである。セックスが気持ちよかったのは覚えているのに、情熱的なキスをした記憶がほとんどない。そうだ、あの時は千鶴の方が、もっともっとと当たり前のように先を求めてしまっていた。キスなんかよりもっと直接的な快感がほしい、さっさと満たされてキモチよくなりたいと。
だからキスはしても、本当にささやかなもので。よくよく考えればそれが最初から終わりのサインだったのかもしれない。心と心で繋がることを、千鶴自身が投げ捨ててしまっていたのかもしれない。コイゴコロと友情の境目なんてどうせわからないから、わからないままでいいやと。だったら先に体だけ満たされてしまえば問題ないやと。
それが間違いだったのだと、今になって気づいた。だって、こうして大人のキスをしているだけで、息がどんどん上がってくるのだ。心臓が五月蝿いくらいに鳴っている。我慢できないと熱い血が脳を焼く。無意識のうちに、彼の背中に回した手に力を込めていた。
酸素が足りなくなっていくのに、それさえ心地よいなんてどうかしている。まるで麻薬ではないか。
初めてであるはずの彼はきっと見様見真似で、ものすごく上手いなんてこともないはずなのに。
――酔ってるから?お互いそういう気持ちになっちゃってるから?それとも……彼、だから?
「はっ……」
きっと一分にも満たないような時間だったはずだ。それなのに、唇と唇が離れるまでの時間がやけに長く感じた。お互いの口元を、つう、と銀色が淫靡に糸を引いている。腰を動かした時、千鶴は己の下着がじんわりと湿っていることに気付かされた。キスだけで、イキそうになったのだ自分は。こんなことってあるだろうか。
遥も遥で、息が上がっている。潤んだ目、染まった頬、とても可愛くて――それ以上に男らしい目。
ずくん、と下腹部が疼いた。
「……け、結構、キス、うまいじゃん」
強がるように千鶴は言う。
「実は、他の女の子ともチューくらいしたことあったりして?」
「……っ!」
冗談交じりで言った次の瞬間、視界がひっくり返っていた。ひょえ、とおかしな声が喉から漏れる。ソファーに押し倒されたのだと、背中に当たる柔らかいクッションの感覚と視界に入る白い天井で気づかされた。
「なんで、そういうこと言うの?冗談でも怒るよ?」
「遥……」
「俺、言ったじゃんか。小学校の時からずっとずっと、ちーちゃんのことが好きだったんだって。いいな、可愛いなって思う女の子がいなかったわけじゃない。でも、俺はいっつもちーちゃんと比べてたし……オトナになってもきっとちーちゃんは昔のちーちゃんと同じ大事なものは失ってないって、それでいてすっごくかっこよくなってるんだろうなって思ってたよ。他の人なんて、考えられなかった。もし、ちーちゃんに恋人ができて、その人と幸せになるって知ったらその時は諦めるつもりだったけど、でも」
熱い手が、髪を撫でる。己の本気を信じて欲しいと、彼の声が全力で訴えていた。
「でも、ちーちゃんは俺の前に現れてくれた……彼氏がいない状態で。醜いとか現金って言ってくれていいよ、俺は本当に嬉しかったんだから。ちーちゃんは想像していた以上にかっこよくなってて……ずっとずっと、可愛くなってた。そして、俺のことを覚えててくれて……楽しくて優しい女性になってた」
「わ、私、可愛くなんか」
「そんなこと言わないで。ちーちゃん自身でも、ちーちゃんを貶めることなんか許さないから。ちーちゃんは世界で一番可愛いよ。ずっとずっとそう思ってたし、今はあの頃よりずっとそう思ってる。本当は、今すぐ攫っちゃいたいくらいなのに……俺がどんだけ我慢してるのか、ちーちゃんはわかってくれないの?ちーちゃんを傷つけたくなくて、嫌われたくなくて、一緒にいることを許してもらいたくてずっとブレーキ踏んでるってのに……」
「……ばか」
この美貌で、よくもまあ自分みたいなガサツで美人でもない女に、こんな口説き文句が言えるものだ。あるいは、彼も酔っぱらってしまっているのだろうか。明日になったら口が滑った自分を死ぬほど後悔したりもするのだろうか。
それはそれ、と思ってしまっている自分がいる。この状況に持ち込んだのは千鶴自身。ソファーに押し倒されているからって、千鶴の力ならばその気になったらいくらでも逃げられるのにそうしていない。
結局のところ、そういうこと。ブレーキを破壊しようとしているのは、千鶴の方も同じ。
「言ったじゃん、止まれなくなってもいいって。遥と、どこまで行けるか試したい。私がめっちゃくちゃ強いってこと、遥も知ってんだろ?だったらどんと来いって。……もっとアクセル踏んじゃってよ。それとも」
その首に手を回し、ぐい、と引き寄せる。男の人としてはほっそりとした首筋に、ちゅう、と軽く吸い付いた。びくり、と遥が体を震わせたことに気付く。
きっと朝には消えている、その程度の所有印。でもいいのだ。こっちから付けにいった、その事実が何より大切なのだから。
もっともっと、アクセルが壊れてしまうくらい踏み込んで、踏み入れて。抱いて、抱きしめて、抱き着いて、奥の奥まで。
「それとも、私から攻め込む方がお好み?」
「……ちーちゃん、酔ってるでしょ」
「今更。んでもってお互い様。今はそういうことでいいじゃん、ね?大体、私マジで嫌だったら、君を蹴っ飛ばして逃げてると思わない?そうしない時点でお察しだっつの」
「もう……」
彼の手が、千鶴の胸元に伸びてくる。この角度では見えないが、ぱちり、ぱちりという音でボタンが外されていることは窺い知れた。几帳面な彼らしい。丁寧に服を脱がしてくれるつもりのようだった。
ワイシャツ、キャミソール、それからブラジャー。あっという間に上はすっぽんぽんにされてしまう。横になっているせいで、ただでさえ控えめな胸がますますぺったんこになってしまっている。
「もっと大きい方が好みだったりする?なんていうか、男って基本巨乳好きだって聞くし。あと、その……乳首だけでかいの、気にしてんだけど……」
思わずそう尋ねると、遥は声を上げて笑った。
「そんなのどうでもいいよ。だって、俺がちーちゃんのこと最初に好きになったの小学校三年生だよ?その時お互い子供体型じゃん。大人になったあとのちーちゃんがどうかなんてまったく知らなかったさ」
「それもそっか」
「そうそう。本当に好きなら、そんな見た目のことなんかどうでもいいって。まあ……好きな人だからこそ、どんなカタチでも可愛いって思うのはあるけど」
「ばっ……ひゃっ!」
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「ん、んんっ……」
もっと強く、敏感な場所を責め立ててほしい。そう思うのに、恥ずかしくて口に出来ない。焦れるように、勝手に両足をすり合わせてしまう。そのたび股間の濡れた感触が強くなり、恥ずかしくてたまらなくなった。
「女の人の胸って、心臓を守るために左の方がちょっと大きいって聞いたことがあるけど本当かな?」
「し、知らなっ……わかんなっ……」
「確かめてみないとね。……声、我慢しないでよ。ちーちゃんの可愛い声、もっともっと聴きたい。ほら」
「ひゃあんっ!」
伸びてくる両手で、まるで操縦桿でも握るように両胸を同時に包まれた。けして強い力ではない。じんわりと熱く。それでいて掌の中心にぴんぴんに立ち上がった乳首がぶつかって刺激を伝えてくるのだ。たまったものではなかった。思わず抵抗するように、びくびくと足を跳ねあげてしまう。
――なんで、なんでこんな焦らすかな……!は、初めてなんじゃなかったわけ!?絶対、遥だってヨユーなんかないくせに!
やるならリードしてやるぞ、くらいの心地であったのに。いつの間にかそういうものが全部吹っ飛んで、ひたすら喘がされるばかりになっている。これではまるで、夢で見たのと同じではないか。このままでは、自分一人だけ気持ちよくされて終わりになってしまいそうである。本当は、一緒に天国に行きたいというのに。
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