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<24・ふたりきりの世界>
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少女達の顔は、長い前髪で隠れてしまって窺い知ることはできない。
ただ紙のように白い顔色と、青紫色に染まった唇は到底生きた人間のそれには見えなかった。振り返るなり、逃げ出すなりしてしまいたい。そんな気持ちを抑えて、梟は足に力を入れてそこに立ち続けた。
逃げるだけではない。自分から、立ち向かっていかなければ運命は開かれない。
確かめなければ。自分達がしていることが、本当に正しい手順なのか。
『じゃまだよ、じゃま』
自分がやっていることは邪魔になっているのか。そんな梟の質問に、少女達は答える。
『せっかく、まきちゃんがときはなってくれたのに。わたしたち、やっとじゆうになれるところ、なのに』
「……まきちゃん、っていうのは……千代田真姫か。六年生の」
少女達は答えない。だが、他に該当する人物も思い当たらないし、恐らく間違ってはいないのだろう。
やはり、自分の予想は正しかった。
六年生の千代田真姫は、ここでおまじないを試して――恐らくそれだけではない何かをしてしまった。多分人形を、拾うなりなんなりしてしまったのだ。彼女を責めることはできない。不幸な要因がいくつも重なった結果の悲劇だったのだろう。
七不思議を反転させて、殆どの七不思議を安全な“おまじない”に変えてしまったことで、封印の要たる人形にかかる負担が大きくなってしまった。きっとそれで、結界が時間をかけて劣化し始めていたのだろう。それでおそらく――七不思議のうち六つを見なければ発見できないはずの人形を、千代田真姫は偶然発見してしまった。あるいは、“剥がれて”落ちてしまったのかもしれない。そういうことに敏い人間が、学校の関係者にいなかった可能性が高いだろう。長年の伝統として封印を守ってきたものの、その信憑性を本気で信じている人間が、時間とともに減っていってしまっていたのかもしれない。
『わたしたち、ずっとゆるせなかったの』
少女ががさがさに乾いた唇で、紡ぐ。
『ゆるせなかった』
『くるしかった』
『かなしかった』
『おそろしかった』
『いまいましかった』
『こわかった』
『そういうモノをぜんぶ、どうにかしてしまいたかった』
『したにも、うえにも、どこにもいけない。そんなわたしたちがいきついたのが、このばしょ』
『どこにもいけないなら、もうすきなようにしていいよねって、みんなではなしあった』
『だれがいなくなっても、だれがしんでも、かんけいないよね。だって、わたしたちはしんだのに、のうのうといきてるやつらがいけないんだものね』
『いきてるってだけでうらやましいし、にくたらしいし、ふつうっていうだけでねたましい。わかるでしょ、そういうきもち』
『だからここで、このふじねみやのちで、じゆうになんでもしてやりたかったのに』
『このがっこう、きらい。だいきらい。わたしたち、こんなすがたにされちゃった』
『おまじないってなに?いきてるやつらのおねがいなんか、わたしたち、かなえたくないよ』
『だいきらい、みんな、だいきらい』
『わたしたちのことなんかかんがえない、ふつうに、しあわせにいきているやつらがきらい』
『まきちゃん、ありがとう。じゆうになれた。だから』
『じゃましないで、ふくろうくん。あなたも、わたしたちとおなじはず。あなたは、わたしたちの、なかまだよね?』
二つの口が繰り返し繰り返し、拙い言葉で己の主張を紡ぐ。
それは、梟が予想していたことがほぼほぼ正しかったことを証明するものだった。この土地に流れ込んできていた多くの報われない人間たち、あるいは精霊などの意思。それらが大きなうねりとなり、この土地の人々を長年苦しめていた事実。そうやって“自由にしていた”“なんでもしてやっていた”彼らを封印したのがこの学校であったのだ。彼らを、可能な限り害の少ない七不思議に変えることによって。
だがそうやって力任せに姿を変えられ、弱体化させられた“鬼”達の不満は計り知れないものだった。ましてや、近年その七不思議が“おまじない”という、生きた人間の願いを叶えるという、本来の鬼の意思とは真逆のものに変えられてしまってからは尚更に。
彼らはずっと待っていたのだろう。その結界が、脆くなる時を。
再び封印が解かれ、自由に悪意を撒き散らせる時が来ることを。
「……俺がやっている邪魔っていうのは、七不思議を回っている行為のことか?それがどうして邪魔になる?」
『ぜんぶのななふしぎにあうと、にんぎょうがみつかる。くさびがまたもとどおりにされたら、わたしたち、じゆうではいられなくなる。それはこまるの。あなたたちも、つばめくんも、よけいなことばっかり』
「……なんだと?」
つばめ、なんて珍しい名前の人間が他にいるとは思わない。まさか、と梟は目を見開いた。
――まさか、この学校のどこかで……燕も俺達と同じことをしていたってのか?あいつが?人形を見つける手段として、おなじことを思いついた?
あるいは偶然、七不思議のいくつかに遭遇しただけなのか。
いずれにせよ、希望が生まれた。もし、燕が自分達の知らないところで、いくつかの七不思議を潰してくれていたとしたら。
既に、状況はリーチがかかっている可能性さえある。
なんせ自分達は今まで燕にまるで遭遇できる気配がないのだ。燕が自分達とは離れた場所で七不思議に遭遇していたとしたら、それは自分達がまだ体験していないものである可能性が高い。
『わるいことを、すきなように、すきなだけ。じょうしきも、りんりも、いきているひとも、しんでいるひとも……ぜんぶまぜこぜで、だいこんらん。そうなったら、きっとたのしいよね』
くすくすくす、と二人の少女の嗤い声が響く。
『そうなったら。すこし、ふしぎなちからをもっているひとも。さべつされないよ。しいたげられないよ。いじめられないよ。そのほうが、あなたにとってもきっとしあわせ。わたしたちもとってもしあわせ。ねえ、ふくろうくん』
まるで、母が子を諭すよう。
優しい声で、少女達は梟に告げる――甘言を。
『このせかいは、ほんとうに、あなたがしあわせになれるせかいなの?』
ああ、きっと。この“鬼”達は、梟が今までどんな人生を歩んできたかを知っているのだろう。
自分の霊能力なんて、大したものではない。けれど、そんな“大したもの”ではない力さえ、人は恐れ慄くものだ。超能力で言えばわかりやすいだろうか。目の前で超能力を使う人間が現れた時、人はまず信じないところから入る。その人物を説得しようと実演してエスカレートしていけば、信じる頃には恐怖心がそれを上回り“バケモノ”という罵倒に変わるだろう。
人間は無意識に、自分達があらゆる文化と知識の頂点である事以外を受け入れられないイキモノである。
理解できないものは、無いものと思いたい。それが己の心を守る一番簡単で確実な手段だと知っているからだ。自分が理解できないことなど起きていない、相手がそう見せているだけのペテン師だと決めつければ己の正義を保つこともできる。その自己保身の心と行動は、誰にも責められるものではないだろう。人間の本能とも言うべきものなのだから、どうしようもないことである。
だから。
幽霊の類も、そうなのだ。予知能力もそう。
梟が何かを見たと言っても、梟が嘘つきだと決めつけた方が見えない人間にとっては遥かに楽なのである。幼いうちに梟はそれを理解し、以降は危険が及ばない限り、余計なものが見えても口にしないようにすることに決めたのだ。
たとえ、親戚のおばさんの後ろに真っ黒な影が見えても。
イライラと佇むおじいさんの腰に、のっぺらぼうのおばけが抱きついていたとしても。
そして、それらの誰かが、もうすぐ車に撥ねられて死ぬであろうビジョンが見えてしまうことがあっても、だ。
嘘つき。
気持ち悪い。
ばけもの。
それらの言葉を浴びせられるくらいなら、沈黙する方がどれほど梟にとっても楽なことであるか。それらを包み隠さず話しても、誰にも咎められない世界ならどれほど肩の力を抜いて生きられるか。そう思わなかったことが、ないわけではない。
それでも、だ。
「……お前らは、根本的に誤解してるなあ」
梟は、笑った。心の底から、言うなれば――憐れむような笑みで。
「幸せになれる世界?……お生憎様、俺はもう幸せだっつーの」
「梟さん?」
「だって、そうだろ」
隣に佇む英玲奈の手を握って、梟は宣言した。
「馬鹿弟がいて一緒に馬鹿やって!気が強いけど心配性な母さんと、オタクだけどすっげー理解力のある父さんと、馬鹿弟の友達の英玲奈ちゃんと、いろんな奴らと!そういう奴らが一緒にいて、今生きてるこの世界……俺には充分それで最高に楽しいんだよばーか!誰かを踏みつけて面白がるほど落ちぶれたつもりもねーっつーの!!」
大体な、と。梟は続ける。
一番肝心なことを。
「独りじゃないなら何でもできる!お前らは……お前らだってそうだったのにな!なんで思わなかったんだ。二人なら、世界だって変えていけるってよ!!」
一瞬。少女達の表情が硬直した、ように見えた。動揺を誘えたのかどうかはわからない。ただ、チャンスがあるなら今しかないだろうと思われた。七不思議通りなら、自分は彼女らの力でどこぞに連れて行かれて、英玲奈は斬り殺されて終わるという話ではないか。その通りになってやるつもりなどまったくないのである。
梟は目の前の蛇口に飛びついた。このトイレの蛇口はかなり大きめに作ってあり、蛇口の向きがぐるんと真上に向けて回せるようになっているのだ。ゆえに梟は、蛇口を真上に向けたところで一気に開栓し、英玲奈がいる方に飛び退いた。
「くらえ!」
凄まじい水の噴射が、少女の片方を直撃する。自分が干渉したモノにある程度の霊力が付与されるというのが本当ならば、これだって多少なりに効果は見込めるはずだ。水は“聖水”としてモノを清める行為に長年使われてきたものである。ただの水道水でも、多少なりに効果はある――と信じたい。
『ギャッ!』
「英玲奈ちゃん、今だ!逃げるぞ!」
「う、うん!」
梟はその隙に、英玲奈の手を握って女子トイレを飛び出した。外にはまだマリコさんが彷徨いているかもしれないが、今はそんなことを言っている場合ではない。
――燕が体験した分がカウントされてるってなら、残りの七不思議は思った以上に少ないはず!なんとか、燕とコンタクトを取る方法はないのか……!?
ただ紙のように白い顔色と、青紫色に染まった唇は到底生きた人間のそれには見えなかった。振り返るなり、逃げ出すなりしてしまいたい。そんな気持ちを抑えて、梟は足に力を入れてそこに立ち続けた。
逃げるだけではない。自分から、立ち向かっていかなければ運命は開かれない。
確かめなければ。自分達がしていることが、本当に正しい手順なのか。
『じゃまだよ、じゃま』
自分がやっていることは邪魔になっているのか。そんな梟の質問に、少女達は答える。
『せっかく、まきちゃんがときはなってくれたのに。わたしたち、やっとじゆうになれるところ、なのに』
「……まきちゃん、っていうのは……千代田真姫か。六年生の」
少女達は答えない。だが、他に該当する人物も思い当たらないし、恐らく間違ってはいないのだろう。
やはり、自分の予想は正しかった。
六年生の千代田真姫は、ここでおまじないを試して――恐らくそれだけではない何かをしてしまった。多分人形を、拾うなりなんなりしてしまったのだ。彼女を責めることはできない。不幸な要因がいくつも重なった結果の悲劇だったのだろう。
七不思議を反転させて、殆どの七不思議を安全な“おまじない”に変えてしまったことで、封印の要たる人形にかかる負担が大きくなってしまった。きっとそれで、結界が時間をかけて劣化し始めていたのだろう。それでおそらく――七不思議のうち六つを見なければ発見できないはずの人形を、千代田真姫は偶然発見してしまった。あるいは、“剥がれて”落ちてしまったのかもしれない。そういうことに敏い人間が、学校の関係者にいなかった可能性が高いだろう。長年の伝統として封印を守ってきたものの、その信憑性を本気で信じている人間が、時間とともに減っていってしまっていたのかもしれない。
『わたしたち、ずっとゆるせなかったの』
少女ががさがさに乾いた唇で、紡ぐ。
『ゆるせなかった』
『くるしかった』
『かなしかった』
『おそろしかった』
『いまいましかった』
『こわかった』
『そういうモノをぜんぶ、どうにかしてしまいたかった』
『したにも、うえにも、どこにもいけない。そんなわたしたちがいきついたのが、このばしょ』
『どこにもいけないなら、もうすきなようにしていいよねって、みんなではなしあった』
『だれがいなくなっても、だれがしんでも、かんけいないよね。だって、わたしたちはしんだのに、のうのうといきてるやつらがいけないんだものね』
『いきてるってだけでうらやましいし、にくたらしいし、ふつうっていうだけでねたましい。わかるでしょ、そういうきもち』
『だからここで、このふじねみやのちで、じゆうになんでもしてやりたかったのに』
『このがっこう、きらい。だいきらい。わたしたち、こんなすがたにされちゃった』
『おまじないってなに?いきてるやつらのおねがいなんか、わたしたち、かなえたくないよ』
『だいきらい、みんな、だいきらい』
『わたしたちのことなんかかんがえない、ふつうに、しあわせにいきているやつらがきらい』
『まきちゃん、ありがとう。じゆうになれた。だから』
『じゃましないで、ふくろうくん。あなたも、わたしたちとおなじはず。あなたは、わたしたちの、なかまだよね?』
二つの口が繰り返し繰り返し、拙い言葉で己の主張を紡ぐ。
それは、梟が予想していたことがほぼほぼ正しかったことを証明するものだった。この土地に流れ込んできていた多くの報われない人間たち、あるいは精霊などの意思。それらが大きなうねりとなり、この土地の人々を長年苦しめていた事実。そうやって“自由にしていた”“なんでもしてやっていた”彼らを封印したのがこの学校であったのだ。彼らを、可能な限り害の少ない七不思議に変えることによって。
だがそうやって力任せに姿を変えられ、弱体化させられた“鬼”達の不満は計り知れないものだった。ましてや、近年その七不思議が“おまじない”という、生きた人間の願いを叶えるという、本来の鬼の意思とは真逆のものに変えられてしまってからは尚更に。
彼らはずっと待っていたのだろう。その結界が、脆くなる時を。
再び封印が解かれ、自由に悪意を撒き散らせる時が来ることを。
「……俺がやっている邪魔っていうのは、七不思議を回っている行為のことか?それがどうして邪魔になる?」
『ぜんぶのななふしぎにあうと、にんぎょうがみつかる。くさびがまたもとどおりにされたら、わたしたち、じゆうではいられなくなる。それはこまるの。あなたたちも、つばめくんも、よけいなことばっかり』
「……なんだと?」
つばめ、なんて珍しい名前の人間が他にいるとは思わない。まさか、と梟は目を見開いた。
――まさか、この学校のどこかで……燕も俺達と同じことをしていたってのか?あいつが?人形を見つける手段として、おなじことを思いついた?
あるいは偶然、七不思議のいくつかに遭遇しただけなのか。
いずれにせよ、希望が生まれた。もし、燕が自分達の知らないところで、いくつかの七不思議を潰してくれていたとしたら。
既に、状況はリーチがかかっている可能性さえある。
なんせ自分達は今まで燕にまるで遭遇できる気配がないのだ。燕が自分達とは離れた場所で七不思議に遭遇していたとしたら、それは自分達がまだ体験していないものである可能性が高い。
『わるいことを、すきなように、すきなだけ。じょうしきも、りんりも、いきているひとも、しんでいるひとも……ぜんぶまぜこぜで、だいこんらん。そうなったら、きっとたのしいよね』
くすくすくす、と二人の少女の嗤い声が響く。
『そうなったら。すこし、ふしぎなちからをもっているひとも。さべつされないよ。しいたげられないよ。いじめられないよ。そのほうが、あなたにとってもきっとしあわせ。わたしたちもとってもしあわせ。ねえ、ふくろうくん』
まるで、母が子を諭すよう。
優しい声で、少女達は梟に告げる――甘言を。
『このせかいは、ほんとうに、あなたがしあわせになれるせかいなの?』
ああ、きっと。この“鬼”達は、梟が今までどんな人生を歩んできたかを知っているのだろう。
自分の霊能力なんて、大したものではない。けれど、そんな“大したもの”ではない力さえ、人は恐れ慄くものだ。超能力で言えばわかりやすいだろうか。目の前で超能力を使う人間が現れた時、人はまず信じないところから入る。その人物を説得しようと実演してエスカレートしていけば、信じる頃には恐怖心がそれを上回り“バケモノ”という罵倒に変わるだろう。
人間は無意識に、自分達があらゆる文化と知識の頂点である事以外を受け入れられないイキモノである。
理解できないものは、無いものと思いたい。それが己の心を守る一番簡単で確実な手段だと知っているからだ。自分が理解できないことなど起きていない、相手がそう見せているだけのペテン師だと決めつければ己の正義を保つこともできる。その自己保身の心と行動は、誰にも責められるものではないだろう。人間の本能とも言うべきものなのだから、どうしようもないことである。
だから。
幽霊の類も、そうなのだ。予知能力もそう。
梟が何かを見たと言っても、梟が嘘つきだと決めつけた方が見えない人間にとっては遥かに楽なのである。幼いうちに梟はそれを理解し、以降は危険が及ばない限り、余計なものが見えても口にしないようにすることに決めたのだ。
たとえ、親戚のおばさんの後ろに真っ黒な影が見えても。
イライラと佇むおじいさんの腰に、のっぺらぼうのおばけが抱きついていたとしても。
そして、それらの誰かが、もうすぐ車に撥ねられて死ぬであろうビジョンが見えてしまうことがあっても、だ。
嘘つき。
気持ち悪い。
ばけもの。
それらの言葉を浴びせられるくらいなら、沈黙する方がどれほど梟にとっても楽なことであるか。それらを包み隠さず話しても、誰にも咎められない世界ならどれほど肩の力を抜いて生きられるか。そう思わなかったことが、ないわけではない。
それでも、だ。
「……お前らは、根本的に誤解してるなあ」
梟は、笑った。心の底から、言うなれば――憐れむような笑みで。
「幸せになれる世界?……お生憎様、俺はもう幸せだっつーの」
「梟さん?」
「だって、そうだろ」
隣に佇む英玲奈の手を握って、梟は宣言した。
「馬鹿弟がいて一緒に馬鹿やって!気が強いけど心配性な母さんと、オタクだけどすっげー理解力のある父さんと、馬鹿弟の友達の英玲奈ちゃんと、いろんな奴らと!そういう奴らが一緒にいて、今生きてるこの世界……俺には充分それで最高に楽しいんだよばーか!誰かを踏みつけて面白がるほど落ちぶれたつもりもねーっつーの!!」
大体な、と。梟は続ける。
一番肝心なことを。
「独りじゃないなら何でもできる!お前らは……お前らだってそうだったのにな!なんで思わなかったんだ。二人なら、世界だって変えていけるってよ!!」
一瞬。少女達の表情が硬直した、ように見えた。動揺を誘えたのかどうかはわからない。ただ、チャンスがあるなら今しかないだろうと思われた。七不思議通りなら、自分は彼女らの力でどこぞに連れて行かれて、英玲奈は斬り殺されて終わるという話ではないか。その通りになってやるつもりなどまったくないのである。
梟は目の前の蛇口に飛びついた。このトイレの蛇口はかなり大きめに作ってあり、蛇口の向きがぐるんと真上に向けて回せるようになっているのだ。ゆえに梟は、蛇口を真上に向けたところで一気に開栓し、英玲奈がいる方に飛び退いた。
「くらえ!」
凄まじい水の噴射が、少女の片方を直撃する。自分が干渉したモノにある程度の霊力が付与されるというのが本当ならば、これだって多少なりに効果は見込めるはずだ。水は“聖水”としてモノを清める行為に長年使われてきたものである。ただの水道水でも、多少なりに効果はある――と信じたい。
『ギャッ!』
「英玲奈ちゃん、今だ!逃げるぞ!」
「う、うん!」
梟はその隙に、英玲奈の手を握って女子トイレを飛び出した。外にはまだマリコさんが彷徨いているかもしれないが、今はそんなことを言っている場合ではない。
――燕が体験した分がカウントされてるってなら、残りの七不思議は思った以上に少ないはず!なんとか、燕とコンタクトを取る方法はないのか……!?
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