旅鉄からの手紙

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中央東線

国蝶オオムラサキと雑木林

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中央本線で甲斐武田家ともゆかりが深い甲府盆地を松本方面へ抜けると、雑木林を思わせる木々を車窓だけでもあちこちで目にするようになる。小渕沢駅のある北杜市は、国蝶オオムラサキの日本一の生息地と言われている程、クヌギの木々などからなる雑木林があちこちで見られるなど緑が豊かである。

周辺を散歩している時にあの紫色に輝く優雅な蝶オオムラサキの舞いに自然に出会えるのが理想ではあるが、確実に見る為に小渕沢駅から中央本線で甲府方面に2つの目の日野春駅から徒歩10分程のところにあり、オオムラサキの保護や研究などが行われているオオムラサキセンターに息子を連れて行った。

私もよく蝉やトンボなどを捕まえ、カブト虫やクワガタなどを飼っていた小学生の頃は、昆虫図鑑を見る度に鮮やかさ明るい紫色の大きな羽根を持つオオムラサキにも憧れたものだ。大人になり帰省先の庭で、オオムラサキのような蝶が飛んでいたのを一度見かけたように思えたが、すぐに私からそのまま飛んで離れて行ってしまったために、本当にオオムラサキであったのかは定かではない。

オオムラサキが成虫になる期間、特に羽根が黒っぽいメスより鮮やかな紫色のオスが見られるのは本当に短い。確実に見られるオオムラサキセンターでさえ、オスの成虫がよく見られる7月でも少し時期がずれるだけでもオスよりも鮮やかさが劣るメスが多く見られたり、更に1~2ヶ月ずれると既に次世代の幼虫しか見られなかったりと、自分のスケジュールを調整しながら鮮やかな紫色のオオムラサキが見られるタイミングを計るのは難しい。

息子を連れて確実に憧れのオオムラサキのオスを一目見ようとオオムラサキセンターに行った。何匹ものオスの鮮やかさはまるで偽物の標本ではないかと疑ってしまう程、本当に華やかな青のような明るい紫色をしていた。保護の為に広さ1400?の鉄骨網張の施設にて、草木が生い茂る自然環境に近い環境で飼育されているとはいえ、やはり実際に見ると感動してしまう。羽根を閉じた状態で樹液を吸ったり休憩している事が多いので、羽根を広げた瞬間は本当に肉眼で見たりカメラに収める貴重なチャンスである。

オオムラサキの他にも、センター内の一角では世界最大のカブト虫ヘラクレスやアトラスオオカブトなどの世界のカブト虫やクワガタも飼われており、彼らの大きさから迫力を味わう事も出来る。センター周辺の自然の様子が動物のはく製などを使い展示してあり、それらの自然にまつわる数々の本も置かれていた。一緒に連れて来たうちの息子はオオムラサキの鮮やかさに感動した後は、他に訪れていた子供達と一緒にアトラスオオカブトのオス同士をわざと喧嘩をさせて

「のこった!のこった!」

など大きめな声を出してエキサイトしている感じで遊んでいた。

その間私は昔から人々がその間雑木林と共存してきた様子が書かれていた本にインパクトを感じていた。もともと雑木林は人の手によって作られた人工林で、自然を保護するためでだけではなく、燃料や肥料などの生産の場として人々は手入れをするなどして管理してきた。雑木林でよくみられるクヌギやコナラなどを薪や炭などの燃料で、そして落ち葉などは畑の肥料として利用していた。燃料や肥料を得るために人間は雑木林の適度な伐採や落ち葉の回収を行い。そして燃料や肥料になる木々がより良く育つ為にと「森」が手入れされた。人間によって手入れた「森」は様々な生物にとって居心地のよい場所となっていった。そしてクヌギの木にはカブト虫やクワガタなどが集まり、昆虫採集など子供達の良い遊び場にもなった。

近年都市化などの開発によりあちこちの雑木林が伐採され消滅し、また比較的緑が残る地方でも過疎化とエネルギーが木炭から石油や電気に変わった事による影響なのか、手入れする方々も減り放置によって荒れてしまった雑木林も増えた。人々が雑木林と共存する機会も随分と減った。雑木林の消滅や放置により失いかけている大切なものに気づき始めた一部の方々により、放置されていた雑木林にて再び手入れを始めるなど雑木林を復活させ保護する取り組みが、オオムラサキセンターや小淵沢駅のある北杜市も含めて全国の一部の地域にて行われていると聞く。雑木林と共存する知恵や習慣も我々の祖先が残して来た、お金だけでは簡単に買えない貴重な財産の一つである。あまり金欲などにとらわれ過ぎずに、我々の手によって子供達に人気のあるカブトムシやクワガタそしてオオムラサキなどの昆虫達も含めた雑木林という財産を彼らの未来に残すべきである。
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