旅鉄からの手紙

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磐越西線

SLばんえつ物語号~会津から越後へ~

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列車は喜多方を出ると会津盆地を阿賀川(阿賀野川)へと向かって峠越えのように山あいを縫って行く。郡山(福島県)と新津(新潟県)とを200キロ近くで結ぶ磐越西線の旅の前後半を分けるポイントとも言えるかも知れない。磐越西線は郡山から喜多方まで電化されているが、喜多方から新津までは非電化区間である。会津若松から新津・新潟方面への列車はディーゼルカーが多く、それによる旅も楽しめる。喜多方側から山あいを抜け一の戸橋梁を渡る。晴れていれば、少々遠目ながら優雅な飯豊連峰も鮮やかに望める一の戸橋梁は、新潟と会津若松間で磐越西線を走る「SLばんえつ物語号」など列車の写真のスポットでもある。

その「SLばんえつ物語号」号は1999年からのロングセラーとも言えるイベント列車で、毎年4月から11月頃までの土日祝日を中心に一日一往復運行されている。

「貴婦人」との愛称でも知られている蒸気機関車C57系がSLが活躍していた時代を感じさせるくらい、レトロな感じの普通座席の他にグリーン車、SLなどの鉄道グッズや新潟県を中心とした地元特産品などを取り扱う売店、子供達が遊べるフリースペースを含めた展望車など旅を楽しめるように様々な客車を牽引する。

磐越西線の別称「森と水とロマンの鉄道」らしく阿賀川を中心に川とその周りの緑や里の景色が緑の他に春は桜、秋は紅葉、ばんえつ物語号は殆ど走らないが冬には白の雪景色と四季折々楽しめる。

私にとってのベストシーズンは5月の下旬から6月の上旬までの梅雨入り直前の晴れの日である。エアコンが必要ないくらいの陽気で窓が開けられる。窓を開けて爽やかな初夏の空気に吹かれながら、車内から川沿いに初夏ならではの茂りたての緑をバックに、まるでぶどうのような紫の藤の花があちこちに咲いているのを花見ができる。前を走るSLや煙を眺めモーターやエンジンのない客車の軽やかな揺れを感じて、車内で販売されている新潟限定のビールを飲みながら出来る花見が堪らない。

時々遠くに優雅さと奥ゆかしさとを同時に感じる飯豊連峰も顔を出す。尾登駅、野沢駅、上野尻駅、更に上野尻のダムを過ぎると阿賀川旅のハイライトの一つとも言える「銚子の口」にさしかかる。ここでも林の合間から見られる川と奇岩を中心とした景色が秋の紅葉など四季折々変化を見せる。またここは川幅が急に狭まる箇所で、江戸時代を中心に日本海と会津地方を結んでいた米などの舟運の難所とも言われていた。徳沢駅を過ぎて最初の鉄橋(徳沢橋梁)で阿賀川を渡ると列車は新潟県に入る。新潟県に入り阿賀川から阿賀野川に名前が変わっても、引き続き銚子の口からの渓谷も続き水と緑の景色を楽しみながらの列車の旅が、越後平野に出る手前の咲花温泉の最寄りの咲花駅付近までしばらく楽しめる。

途中の津川駅では蒸気の補給で15分くらい停車し機関室の様子が覗けて記念撮影も出来る。水を石炭で燃やして蒸発させて列車を走らせる発想の凄さを改めて感じる。

津川駅付近では「津川」という文字通り、かつて「日本三大河港」称される程の「川港」が存在し、会津の西側の玄関口として、先述したように舟運の難所であった「銚子の口」を避ける輸送も盛んであった事からも江戸時代を中心に水陸における輸送の中継地点として栄えた。会津側からは会津特産品である米、会津塗、煙草、薪炭、木材などは会津街道(今の国道49号線)などの陸路から津川にて船積みして水運にて新潟へ阿賀野川を下り、逆に新潟側からは塩、海産物などの海の幸や綿布など川を上って来た他の地方の特産品が陸揚げして会津へ陸路を通り輸送した。 江戸時代を中心に最盛期には川港の船着場は150隻もの帆掛け船が発着し、船荷を積み下ろしする丁持衆が100人くらい働いていたという。川港周辺には船番所、藩の米蔵、塩蔵、蝋蔵、物産問屋などが立ち並んでおり活気に満ちていたという。会津藩にとっても運上金や塩の専売による収益金が得られることから経済上重要な港だった。明治以降でも磐越西線が開通し自動車輸送の発達するまで輸送の主役を担い、さらに下流のダムが建設されるまでは港として機能していた。途中下車して歩くと川沿いに川港の跡など史跡が残っており、当時の会津藩を中心とした営みが栄えていた頃面影を感じる事もできる。

郡山から磐越西線に乗り新津や新潟付近まで出た後に、美味しそうな魚や貝そしてイクラなど海の幸を目にした時には、内陸の会津地方は日本海から阿賀野川(阿賀川)によって古くから海と繋がっていたことを想像した。

私も何回か小学生に入る前の息子を連れてSLばんえつ物語号に乗った。SL(蒸気機関車)はディーゼル機関車や電気機関車とは違って、近づくと石炭を燃やした時に出る煙突からの排気の煙のみならず、機関車全体から「シーューシーュー」と大きな音を立てて機関車全体から水蒸気から熱気が伝わり生きているような生々しさ、言い換えれば生きているようにすら感じる。そして汽笛の音がびっくりする程大きい。

息子はその生々しい感じと汽笛の音の大きさに恐怖を感じていて、SLそのものには近づこうとしなかった。その息子がばんえつ物語に乗る目当てはSLそのものではなく、先述した子供達が遊べるフリースペースだ。そのフリースペースにはすべり台が置いてあるのみならずら若い女性のアテンダントさんが子供達と一緒に折り紙、工作、ぬり絵などを楽しんでくれる小さなテーブルのスペースもある。独りっ子の息子はそこで他の子供達と遊んだり、アテンダントのお姉さんに遊んで貰うのが嬉しくて楽しいのであろう。勝てばストラップなど景品が貰えるジャンケン大会などのイベントもあるし、先述したように子供達が遊べるフリースペースもあるし、子連れの旅にももってこいの列車だ。

車内には郵便ポストも設けてられており絵はがきなど旅のお便りも旅の現場に居ながらにして投函できる。

SLなどイベント列車が走る沿線には鉄道写真を撮るのが好きな撮り鉄などSLの写真を撮り見に来ている方々も多くそういう方々に向かって手を振りながらスターになったような気分も味わえる。もちろん私などの乗客ではなくSLそのものがお目当てなので勘違いしてはいけない。

うちの息子とよく遊んでくれたあるアテンダントのお姉さんに話しかけたが、彼女はアルバイトをしている学生さんであった。アルバイトと言ってもJRに所属されているのではなくJRにも人材派遣している新潟県内にある会社に雇われているという。

近頃、地方への旅にて若い女性の方に声をかけて旅の話になると必ずと言って良い程彼女達の行きたい場所で「東京ディズニーリゾート」の名前が出てくる。息子に良くしてくれたアテンダントの彼女もその一人であった。私が東京周辺ではあまり見ることができない残された自然を求めて地方へよく旅に行くように、彼女らも地方よりもモノや情報が溢れている東京周辺に憧れるのであろう。

地方から東京周辺などの都会への出る方や逆に都会から地方へ移住される方が多い中、私は家族を養いながらでは容易なことではないが、定住ではなく数カ月から一年単位で好きな場所を転々と旅をしながら生活するのが憧れである。
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