魔王様の異世界逃亡生活

鳫葉あん

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魔王様と東の捕食者

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「シュトリ」

 嗄れた声。枯れ枝のように細い指が頭を撫でてくれる。それがシュトリは大好きだった。

「――の――――をお前に――」

 思い出す中でも古い記憶は所々が曖昧だ。
 それでも笑うと皺だらけになる顔はよく覚えている。
 その目がとても優しく、慈しんでくれていると気付いたのは大人に近付いてからだった。

「おとうさん」
「――んん、わかったか。大きくなったら取りに来るんだぞ」
「うん」

 何を言われたか。その時は覚えていたのかもしれない。忘れてしまった夢の中では霞がかってわからない。
 幸福だったこと。大切だったこと。楽しかったこと。ただそれだけは、いつまで経っても覚えていられた。



「……おと……さん」

 ゆっくりと瞼が開く。ぼやけた視界に見慣れた天井が映り込み、判断が遅れた。
 今は何時だろうか。セーレが起こしに来る頃か――日常の思考が巡り始めた所で眠る前の出来事を思い出す。
 シュトリは家出をして、新しい男を見つけて、人の世界に残るつもりだった。見慣れた自室で目を覚ますつもりはなかった。

「起きたかシュトリ」

 天井だけだった視界に男の顔が入り込む。ベッドに腰かけ、表情を変えずシュトリを見下ろすバアルを見て、シュトリは辺りを見回した。

「レジーは!?」
「連れてきた。今はヴィネが魔界について教えている」

 シュトリが体を起こすと背中に腕を回され、体を寄せる形になった。

「……魔界について教えるって、何で。私とレジーを人間界に戻して。私は魔王を辞める 」
「シュトリの護衛兼世話係。衣食住完全保証。シュトリの夫という地位も与える。そう言ったらあの男は即答したぞ」
「断る理由ないじゃん」

 バアルの自由な手がシュトリの服にのびる。脱がされていくそれに疑問符を浮かべ、何かと尋ねるシュトリに表情を変えないまま、バアルが答えた。

「我が魔王様に俺の愛が伝わっていないのは今回のことでよくわかったからな」

 愛と言われて首を傾げる。

「バアルが私に降ったのはベリアルと戦うのが嫌だったからじゃないの。セーレもヴィネも邪魔しないから、戦ってたら……東の国だけ焼け野原になったでしょう」
「それはある。あいつが大人しくしていたのは自国の保全のためだからな。それも……同じような国を、民を作り直すのが面倒なだけだ」

 だが、と続きを足される。

「魅了の効かない男が、平凡な見目の淫魔を抱くのは何故だと思う」
「ええ……気の迷い? そこから意外とハマった?」

 頬をつねられる。不正解だった。

「一目惚れだよ」
「……んんっ、ふ……」

 深く口付けられ、小さく喘ぐシュトリの衣服にバアルの手がのびる。ゆっくりと剥がされながら、口内を蹂躙される。
 歯列をなぞられ、逃げる舌を追われ、音を立てて唾液が吸われていく。息苦しさを覚えたシュトリの呻き声は無視され、男が唇を離す様子はない。
 
「魔王に担ぐだけなら従う体を見せるだけでいい。抱く必要なんてないだろう」

 ようやく解放されたシュトリが必死に息を吸う中、出来の悪い子供のように教えられる。

「魔王という象徴だけなら確かに誰でもいいだろう。だが我々が頭を垂れ恭順する者でなければならない。お前の姉は確かに美しいが、私は従おうとは思わない」
「……弱くてちっぽけな淫魔にだって、普通は従おうと思わないんじゃないの」
「そこが惚れた欲目だろう。それにお前はお前が思う程、粗末な存在ではないよ」

 慣れないストレートな言葉にシュトリの頬が染まる。

「なんか……ベリアルといいバアルといい……私のこと、好きみたい」
「好きだって言ってるだろ。ヴィネとセーレを思い出せ。あいつらはお前のこと大好きだって隠してないだろう」
「ヴィネは……王になれた恩義じゃない? 私がいなかったら筋肉(あに)達のどれかに決まってたと思う。セーレは幼なじみで、姉さんのこと好きなんだろうし、ポイント稼ぎだよ」
「……そうか。もういい」

 シュトリの身体が押し倒される。再びベッドに寝転び、見慣れた天井をバックにバアルの端正な顔だけが見えた。

「バアル?」

 呼びかけに応えることはなく、バアルの顔が近付いてくる。首筋に埋められ、肌を強く吸われる。大きな手が残っていた衣服も剥ぎ取っていく。
 何をされるかわかるし、拒むような性格でもない。大人しくされるがままに流されていると淫乱な身体は男の愛撫に悦んだ。
 乳首を撫でられればこそばゆさから笑う。ツンと立ち上がるそれを摘ままれれば痛みだけではない刺激に鳴く。
 音を立てて吸い付かれればそこから何か出てくる気さえする。
 吸い付かれながら淫茎を揉まれ、媚びた悲鳴を上げる。

「んぁ♡ あん♡♡ でない♡ なんにもでるわけないのにぃ♡♡♡」
「淫魔は他者の願望を自分に反映させるんだろう? 俺の望みを反映してここからミルクを出してくれよ」
「ポンコツだからむりぃ♡♡ んんっ♡」

 姉達のような力のある淫魔なら相手の望む姿形になれるらしいが、腕輪のないシュトリには無理難題だった。

「しょんなことぉ♡ できたらっ♡♡ あん♡ もっとはやくぅ♡ あんな森、出てるっ♡♡♡」
「それもそうか」

 力さえあれば姉の情けにすがるような暮らしなどせず、レジーとまではいかなくともシュトリを愛してくれる存在を見つけていたかもしれない――増長せず、ベリアルにも会わず、魔王になどなっていなかっただろう。
 ありえたかもしれないありえない姿を思いながら、鈴口を抉られたシュトリは無様な嬌声を上げて吐精した。手に向けて射たれたそれをバアルは徐に舐め上げる。
 淫魔にとっては主食であるが、そうでなければ不味いだけだろうそれを。バアルは美味そうに啜った。涎が垂れた。

「……おいしい?」
「苦い。シュトリのだから美味いけどな」

 お前も食べたいかと聞かれれば頷くしかない。シュトリにとっては主食なのだ。目の前の男のものはご馳走だった。


 シュトリの男達はみんな、立派なものを持っている。シュトリの口では咥えきれないようなものを懸命に舐めて頬張り、可愛がれば美味しい精液で返してくれる。
 男の気分を上げてやれば可愛がったそれでシュトリの中を満たしてくれる。男を迎え入れることしか考えてない孔を、よく育った肉棒でゴリゴリと抉り拓いてくれるのだ。

「んほぉぉぉぉぉ♡♡♡ おぢんぽっ♡♡♡ バアルのおっぎにゃおちんぽ♡ しゅきぃぃぃ♡♡♡」

 四つん這いになり、尻を高く上げたシュトリの腰が大きな手に掴まれている。パンパンと肉同士が打ち合う音を立てながら、シュトリのメス孔が犯されている。
 バアルの固く勃起した肉茎が粘膜を擦り、胎内器官を押し潰す。少しでも奥へ侵入しようと突き進む雄を、シュトリの身体は拒むフリをして迎え入れていく。
 押し出すような締め付けは雄の吐精を促している。より中へ突き進むために後退の素振りを見せる雄を、止めてすがるように強く締め付け、肉襞が中へ戻れと纏わりついてくる。

「バ……ル、出して……中、中にぃ……♡ 王様せーえきで……おなかいっぱいにして♡♡」

 ふりふりと尻を振って射精を促すシュトリに応え、射精の瞬間に胎の奥へ突き入れる。舌を突き出し、目を剥いて悦びの悲鳴を上げるシュトリの背中に口付けた。
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