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風流先生 6日目 初めての彼女の話
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風流先生 6日目 初めての彼女の話
登場人物
風流先生(58)
自宅の一室で生徒に勉強を教えてる塾講師。
高木結(ゆい)(20)
風流先生のところでアルバイトしている女子大生。
1.
今日は七夕と言うことで、私は浴衣姿で授業をした。
母が若いころ来ていた藍紺地に朝顔柄の浴衣だ。
先生も浴衣姿で私を迎えてくれた。
先生の家の庭に笹の葉が飾られ、見上げると天の川がきれいに見えた。
先生が星座早見表を手に、織姫と彦星を指さしてくれた。
「先週も話したけど、大学に入ってすぐに僕は入院してしまったんだ」
「せっかく入ったのに残念」
「肋膜炎って結構やっかいな病気で、だいたいは治るんだけど、体のだるさとか残っちゃって、完全に元通りになるまで少し時間がかかったんだ。だから、僕の大学デビューは実質2年からなんだ。2年の夏、当時よくつるんでた中学の友達の梅田ってのが、北海道に行こうって言い出したんだ」
「へえ」
「車で行って、ユースホステルに泊まろう、そうすれば女の子と知り合えるって」
「青春!」
「東北自動車道をひたすら走って、青函連絡船に乗って、北海道に上陸した。初めての北海道は、空も大地もでっかくて空気も気持ちよかった」
「いいですね」
「僕たちは計画通りユースホステルに泊まった。で、何日目かで浜小清水の原生花園ユースに泊まったとき、初めての彼女、松島規子さんに会ったんだ」
「またのりこさんですかw」
「のりこさんに縁があるね。彼女は、松田聖子に似てた」
「かわいい」
「旅先での出会いのいいところは、近くに一緒に行けるところがたくさんあって、しかもみんな景色がすごく綺麗だから、ロマンチックな雰囲気を作れるんだよ」
「でしょうね、うらやましい」
「僕たちは電話番号を交換して、東京で再会することを約束したんだ」
「東京の人だったんですね」
「実家は群馬のお茶屋さん。共立短大の2年で大学の寮に入ってた」
「最初のデートは由紀子ちゃんていう一緒に北海道に来てた子と二人で来て、僕たちは梅田と二人のダブルデートをしたんだ」
「ドラマっぽいw」
「で、何度目かのデートで僕たちは恋人になった。1983年の正月、梅田と由紀子ちゃんの4人で初詣に行こうってことになって彼女はうちに泊まったんだけど、寝過ごしてしまって、母親にすごく叱られた、若い娘さんを泊めるなんてってw。それから群馬の実家まで彼女を送っていったら向こうのお母さんはすごく歓迎してくれて、お年玉をくれたよ」
「お母さん、きっと先生を気に入ったんですよ」
「1982年の秋から彼女が地元の役所に就職が決まって帰ってしまうまでの半年は、すごく楽しかったなあ。ディズニーランドに初めて行った。たしか開園した年だったと思う。まだパスポートがなくて、チケットでアトラクションに乗った記憶があるよ、彼女、途中でチケット落としちゃって、すごく悲しそうな顔してた」
先生はまた、縁側から庭を眺めた。
「夜遅くに、よくうちに電話をくれた。当時はまだ携帯なんてない時代だから、寮の外へ出て公衆電話からかけてくれた。彼女はそれを『門越え』って言ってた」
「脱走犯みたいですねw」
「彼女が向こうに帰ってからしばらくは電話で話したりしてたんだけど、やっぱりだんだん気持ちが遠くになって、僕も勉強が忙しくなって、すれ違うことが多くなった」
「理系は勉強がたいへんそう」
「ある日、夜電話がかかってきて、同じ役所にいる先輩から付き合ってくれって言われたって言うんだ」
「何て言ったんですか?」
「いいんじゃないみたいなことを言ったと思う」
「はあ・・・」
「彼女は何て言うか、結婚願望みたいなものが強くて、友達が彼氏にプロポーズされたとか僕によく話してた。当時の僕はまだ学生だし、結婚とか全く考えられなかったから、結局それっきりになった。今でも松田聖子のその時期に流行っていた曲を聴くと、彼女を思い出すね」
「松田聖子で一番好きな曲は何ですか?」
「秘密の花園かな」
そう言うと先生は、スマホで『秘密の花園』を流した。
風流先生 6日目 初めての彼女の話 終わり
登場人物
風流先生(58)
自宅の一室で生徒に勉強を教えてる塾講師。
高木結(ゆい)(20)
風流先生のところでアルバイトしている女子大生。
1.
今日は七夕と言うことで、私は浴衣姿で授業をした。
母が若いころ来ていた藍紺地に朝顔柄の浴衣だ。
先生も浴衣姿で私を迎えてくれた。
先生の家の庭に笹の葉が飾られ、見上げると天の川がきれいに見えた。
先生が星座早見表を手に、織姫と彦星を指さしてくれた。
「先週も話したけど、大学に入ってすぐに僕は入院してしまったんだ」
「せっかく入ったのに残念」
「肋膜炎って結構やっかいな病気で、だいたいは治るんだけど、体のだるさとか残っちゃって、完全に元通りになるまで少し時間がかかったんだ。だから、僕の大学デビューは実質2年からなんだ。2年の夏、当時よくつるんでた中学の友達の梅田ってのが、北海道に行こうって言い出したんだ」
「へえ」
「車で行って、ユースホステルに泊まろう、そうすれば女の子と知り合えるって」
「青春!」
「東北自動車道をひたすら走って、青函連絡船に乗って、北海道に上陸した。初めての北海道は、空も大地もでっかくて空気も気持ちよかった」
「いいですね」
「僕たちは計画通りユースホステルに泊まった。で、何日目かで浜小清水の原生花園ユースに泊まったとき、初めての彼女、松島規子さんに会ったんだ」
「またのりこさんですかw」
「のりこさんに縁があるね。彼女は、松田聖子に似てた」
「かわいい」
「旅先での出会いのいいところは、近くに一緒に行けるところがたくさんあって、しかもみんな景色がすごく綺麗だから、ロマンチックな雰囲気を作れるんだよ」
「でしょうね、うらやましい」
「僕たちは電話番号を交換して、東京で再会することを約束したんだ」
「東京の人だったんですね」
「実家は群馬のお茶屋さん。共立短大の2年で大学の寮に入ってた」
「最初のデートは由紀子ちゃんていう一緒に北海道に来てた子と二人で来て、僕たちは梅田と二人のダブルデートをしたんだ」
「ドラマっぽいw」
「で、何度目かのデートで僕たちは恋人になった。1983年の正月、梅田と由紀子ちゃんの4人で初詣に行こうってことになって彼女はうちに泊まったんだけど、寝過ごしてしまって、母親にすごく叱られた、若い娘さんを泊めるなんてってw。それから群馬の実家まで彼女を送っていったら向こうのお母さんはすごく歓迎してくれて、お年玉をくれたよ」
「お母さん、きっと先生を気に入ったんですよ」
「1982年の秋から彼女が地元の役所に就職が決まって帰ってしまうまでの半年は、すごく楽しかったなあ。ディズニーランドに初めて行った。たしか開園した年だったと思う。まだパスポートがなくて、チケットでアトラクションに乗った記憶があるよ、彼女、途中でチケット落としちゃって、すごく悲しそうな顔してた」
先生はまた、縁側から庭を眺めた。
「夜遅くに、よくうちに電話をくれた。当時はまだ携帯なんてない時代だから、寮の外へ出て公衆電話からかけてくれた。彼女はそれを『門越え』って言ってた」
「脱走犯みたいですねw」
「彼女が向こうに帰ってからしばらくは電話で話したりしてたんだけど、やっぱりだんだん気持ちが遠くになって、僕も勉強が忙しくなって、すれ違うことが多くなった」
「理系は勉強がたいへんそう」
「ある日、夜電話がかかってきて、同じ役所にいる先輩から付き合ってくれって言われたって言うんだ」
「何て言ったんですか?」
「いいんじゃないみたいなことを言ったと思う」
「はあ・・・」
「彼女は何て言うか、結婚願望みたいなものが強くて、友達が彼氏にプロポーズされたとか僕によく話してた。当時の僕はまだ学生だし、結婚とか全く考えられなかったから、結局それっきりになった。今でも松田聖子のその時期に流行っていた曲を聴くと、彼女を思い出すね」
「松田聖子で一番好きな曲は何ですか?」
「秘密の花園かな」
そう言うと先生は、スマホで『秘密の花園』を流した。
風流先生 6日目 初めての彼女の話 終わり
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