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風流先生 8日目 作詞教室の話
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風流先生 8日目 作詞教室の話
登場人物
風流先生(58)
自宅の一室で生徒に勉強を教えてる塾講師。
高木結(ゆい)(20)
風流先生のところでアルバイトしている女子大生。
1.
「作詞家になりたいなんて思ったのが、僕の転落人生の始まりだ」
そう言って、先生は笑った。
今日の先生は、七輪でさんまを焼いている。
庭のイチョウの木が、葉を黄色く染めかけていた。
「作詞家なんてどうやってなるのかわからなかったから、僕はとりあえず学校へ行くことにした。ビクター音楽カレッジの作詞コース。ところが全く書けないんだ」
「何でですかね」
「詞だけじゃないけど、創作活動って多かれ少なかれ自分の心の中を覗き込む作業なんだ。ところがそれをすると、彼女から目を避けた自分の弱さばかりが見えてしまって、耐えられなくなったんだ」
「たいへんですね」
「まあ、そこでも、勇気を出してその弱い部分を見つめて、それを作品にすれば多少はよかったんだけど、それも出来なかった。まあ、本来、詩って言うのは愛してる人に向けて作るものだから、そういう対象がいない状態で作るのは、きついよね」
「そうなんですね」
「結局、納得できるものは生まれなかった」
「好きな人ができないときついんですねえ」
「でもね、学校で、友達がたくさんできた。そこは楽しかったよ」
「よかったぁ」
「学校が終わった後、みんなでカラオケに行った。表参道のカラオケスナック。みんな持ち歌を持っててさ、大嶽さんてコピーライターをしてた人妻の人は和田アキ子の『抱かれ上手』、桜子ちゃんて女の子は、彼女は同じクラスの工藤くんて男が好きで、毎回テレサテンの『愛人』」を歌ってたよ。『私は待つ身の女でいいの』ってところが気に入ってたんだろうね、工藤君に振り向いてもらえなかったから」
「先生はそこでは、好きな人はできなかったんですか?」
「徳弘って言う当時バスガイドやってた19歳の女の子が、僕のこと好きになってくれて」
「先生ってなんだかんだで、まあまあモテたんですね」
「でも、僕はその子のことは好きになれなかった」
そう言うと、先生は庭の紅葉(もみじ)に目をやった。
風流先生 8日目 作詞教室の話 終わり
登場人物
風流先生(58)
自宅の一室で生徒に勉強を教えてる塾講師。
高木結(ゆい)(20)
風流先生のところでアルバイトしている女子大生。
1.
「作詞家になりたいなんて思ったのが、僕の転落人生の始まりだ」
そう言って、先生は笑った。
今日の先生は、七輪でさんまを焼いている。
庭のイチョウの木が、葉を黄色く染めかけていた。
「作詞家なんてどうやってなるのかわからなかったから、僕はとりあえず学校へ行くことにした。ビクター音楽カレッジの作詞コース。ところが全く書けないんだ」
「何でですかね」
「詞だけじゃないけど、創作活動って多かれ少なかれ自分の心の中を覗き込む作業なんだ。ところがそれをすると、彼女から目を避けた自分の弱さばかりが見えてしまって、耐えられなくなったんだ」
「たいへんですね」
「まあ、そこでも、勇気を出してその弱い部分を見つめて、それを作品にすれば多少はよかったんだけど、それも出来なかった。まあ、本来、詩って言うのは愛してる人に向けて作るものだから、そういう対象がいない状態で作るのは、きついよね」
「そうなんですね」
「結局、納得できるものは生まれなかった」
「好きな人ができないときついんですねえ」
「でもね、学校で、友達がたくさんできた。そこは楽しかったよ」
「よかったぁ」
「学校が終わった後、みんなでカラオケに行った。表参道のカラオケスナック。みんな持ち歌を持っててさ、大嶽さんてコピーライターをしてた人妻の人は和田アキ子の『抱かれ上手』、桜子ちゃんて女の子は、彼女は同じクラスの工藤くんて男が好きで、毎回テレサテンの『愛人』」を歌ってたよ。『私は待つ身の女でいいの』ってところが気に入ってたんだろうね、工藤君に振り向いてもらえなかったから」
「先生はそこでは、好きな人はできなかったんですか?」
「徳弘って言う当時バスガイドやってた19歳の女の子が、僕のこと好きになってくれて」
「先生ってなんだかんだで、まあまあモテたんですね」
「でも、僕はその子のことは好きになれなかった」
そう言うと、先生は庭の紅葉(もみじ)に目をやった。
風流先生 8日目 作詞教室の話 終わり
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