社員旅行は、秘密の恋が始まる

狭山雪菜

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2日目。3

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荷物をまとめ彼とエレベーターに乗ると、ホテル上部にあるエグゼクティブルームに案内された。

シンと静まり返った廊下を歩いた時から…赤い絨毯から柔らかい黒い絨毯に変わったフロアに着いた時から、緊張していた。
私のキャリーケースを引いて歩き進めて行く彼の背中を見る。

ーーもしかして私すごい人と付き合ってるのかな?

急に感じた格差に及び腰になる。
ルームキーで開けた部屋に着くと、数メートルの先に扉がある、5人は並んで歩けそうな広い白い壁と黒い床の廊下を歩く。廊下の途中に花瓶があり、ライトが当たり存在感が増す。廊下を抜け扉が開くと壁の端から端の一面の窓ガラスが、外の景色を一望できる。バルコニーには、丸い大きな露天風呂が備え付けてあり、温泉が張っている。室内に視線を戻すと窓ガラスの前に2人掛けのソファーと、丸いサイドテーブル、両端に1人掛けのソファーがある。窓とは反対側にあるのは、大きなキングサイズの白いベッドで、ナイトテーブルが両サイドに付いている。
彼が扉の横に私のキャリーケースを置くと、圧倒されている私の手を引き一緒にソファーに座る。
身体を寄せられて右上半身がぴたりと重なると、ハッと我に返った。
「すごいっ…本当…こんな部屋に泊まった事ない」
呆然と告げると、彼は微笑み
「嬉しいなぁ、初めてもらったよ」
とご機嫌に返してくれる、が
「…あの…なんか住む世界違う…本当に私でいいの…?私本当に普通だし」
彼と視線を合わせて、引き気味の私は本音が漏れる。
「…何、付き合う事後悔しているの?」
急に低い声になり何故か不機嫌になる彼に、ぶんぶんと顔を横に振る。
「違っ…私本当…なんて言えばいいのか…こんな部屋初めてだし…健吾さんは…普通かもしれないけど…多分つまんない女だよっ」
自分の自信の無さに声がだんだんと小さくなり、何を言っているか訳が分からなくなる。
そんな私の頬に手を添える健吾は、親指の腹で撫でる。

「まさか、やっと手に入れたんだ、絶対に手放さないよ……どんな事があってもね」

私にどんな価値があるのか、皆目検討もつかないが私でいいなら、いいのかと絆され始めた。

「…私でいいの…?」
「ああ、瑠璃がいい」
即答で私を選ぶ彼の顔に自分から近づき唇を重ねた。

彼の膝の上に乗り、頭を上に向かせ抱きしめ、彼の唇を求める。彼は私の腰を掴んだままされるがままになっている。
「んっんふっん」
舌を絡め歯列をひとつひとつ舌でなぞり、私の唾液を送ると、美味しそうに飲み込む彼。
ひと通り口内を堪能し唇を離すと、彼の瞼が開き視線を絡ませた。
「…もう、終わり?」
悪戯に目を細め、私の唇を親指でなぞる。
「ううん、でも…何にもしてくれないの寂しいの」
額を合わせ、はぁっと息を吐くと、ごめんね、と彼は私の唇を啄む。
「何時まで一緒に入れるの?」
ちゅっちゅっと啄むキスに、苦虫を潰した顔になる彼。
「…多分そろそろだな」
私のお尻を掴み持ち上げると、ソファーの後ろにあるベッドへと仰向けに倒すと覆い被さる彼を身上げると、舌を絡める濃厚なキスをされ、呼吸ごと奪われる。
「んっ…っ」
唇を名残惜しく離し、首に顔を埋める彼が首筋に舌を這わす。
「この部屋で待ってて…ルームサービスで好きなの頼んで」
最後に耳朶を舐める彼が、起き上がったので私も起き上がった。
「…他の人に目移りしちゃダメだからね…早く来ないと、鍵開けないからね」
離れるのが寂しくて、可愛くないことを言ってしまう。
振り返った彼が、フッと笑い私の腰を引き寄せる。バツが悪くて彼の胸に耳をつける。
「なら…早く帰ってこないとな、心配症の彼女が俺を締め出さないように」
顔を上げると、優しい眼差しで私を見つめ、軽くキスをして彼は部屋から出て行ってしまった。



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