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2日目。2
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バスを降りしばらく歩くと、紅葉の山々が広がり大きな湖とボートに乗る人、釣りをする人、散策する人々がいた。
迎えに来た彼のうしろを歩き、コーヒーでもと立て看板が置いている建物に入ると、2階に上がりテラスへと出る。2人掛けのブラウンのラタン編みのソファーの背もたれと座席が白いクッションになっていて、ソファーの前には同じ長さのガラスのテーブルが置かれている。テラスの柵はガラスになっていて、湖と紅葉を楽しめる。
「座っていて、今飲み物持ってくるから、何飲む?」
「カフェラテがあれば」
「分かった」
彼が店内に戻ると、ソファーに座り景色を眺めていた。
しばらくすると、彼がコーヒーとカフェラテが乗ったお盆を持ってきて私の目の前に置き、私の横に座った。
ほかほかと湯気が立ち上がり、カフェラテが入っている白いカップに砂糖を入れかき混ぜる。隣にある同じく白いカップには、ブラックコーヒーが入っている。
「健吾さん、砂糖とミルク入りますか?」
「いや、このままでいいよ、ありがとう」
彼の前にブラックコーヒーを置き、私は白いカップを両手で持ち上げカフェラテを飲む。
ふぅ、とひと息つくと、白いカップをテーブルに戻し、私の右横に座る彼の胸に身体を寄せた。躊躇う事もなく私の肩に腕を回し、身体を引き寄せる彼。
「…他の人にバレちゃうかな」
と独り言のように言う私に、
「ここは穴場だから…それに誰も2階なんてみないだろう」
私の髪を撫でながら、背中まで伸びる髪を弄る。
2人のひと時がまったりと過ぎていく中、もうすぐ集合時間になる頃がやってくる。
「…次の予定は何だっけ…えっと、お昼を食べてお土産屋さんを回ってホテル…でしたよね?」
「確かそうだね」
離れ難く動こうとしない私を咎める訳でもなく、変わらずに背中を摩る彼。
「そうだ、このまま帰ろう」
と急に言われ、顔を上げた。
「帰るって?」
困惑な顔をしていたのだろう、彼はフッと笑うと
「そのままの意味、体調不良の君を近くに居た私がホテルまで送り届ける」
そう言って私の顎に手を置き、顔を近づける彼の口づけを受け止めた。
タクシーで並んで座りホテルの名を彼が運転手に告げると、座席の背もたれに頭を乗せ窓の外を眺める。
「では、部長、すいませんがよろしくお願いします」
「いいよ、幹事の君は離れられないしね」
タクシーの窓を下げ、にこやかに幹事の人に告げる彼は、
気にしないでと頼もしく感じるが…
ーーうぅ…社員旅行なのに自分勝手な行動してるみたいで罪悪感半端ない
申し訳なさが、勝って黙っているとバスに乗り込んだ時からぐったりとしていたと認識されていた私は、幹事の方を向き
「すいません」
と久しぶりに出す声が弱々しくなってしまっていた。
「いいよ、ゆっくり休んで」
そう幹事の人が言うと、タクシーは出発した。
少し走り、角を曲がった頃に彼の手が私の右手に触れた。
前を見たまま指を絡め、無言のままホテルへと向かった。
自分の部屋に着くと、彼も入ってきて正面から抱きしめられる。
「まだ眠い?」
「少しだけ…でも今は幸せな気持ちが勝ってる」
彼の肩に頭をつけて胸いっぱい彼の匂いを吸い込む。
「それは…俺といるから?」
くくっ…と揶揄いを含み笑う彼に腹が立って、
「もちろん、そうだよ」
とぎゅっと抱きつく。
「光栄だなぁ」
と惚ける彼の声が頭上から私を包んだ。
少しの間だけ寝ていて、と告げた彼は連絡事項があると部屋から出て行った。私のルームキーを持って。
仕方ないのでまだ使われていないベッドに座ると、ベッドのスプリングが気持ちよくて、身体を横にしてそのまま気を失うように眠ったのだ。
カタッと音がして起きると、彼が私を眺めながらソファーで備え付けのインスタントコーヒーを飲んでいた。
「ああ、ごめん、起こした?」
「…いえ、今何時ですか?」
いつの間か、布団が身体にかけられていて、暖かくて眠ってしまっていたようだ。
「今は14時だね…起きれる?」
「はい」
ベッドから足を下ろし、靴を履くと彼の元へと向かい、手を差し伸べる彼の手を取り膝の上に座った。
横抱きで彼の腕の中へと入ると、彼の匂いに包まれた。
「このまま瑠璃は、具合悪くて帰る事にしたよ」
さらりと告げられた、決定事項に耳を傾ける。
「…私がですか?」
「そう、だから荷物を持って、私の部屋に…と思ったけど、誰かくるか分からないから邪魔されないように上の部屋を取ったよ」
くくっと笑う彼の顔は、どうも話が見えない。
「…上の部屋?」
「そう、私達が過ごす部屋」
そう言って彼は私の顎を上に向かせ、噛み付くようなキスで私の口内を暴れ回った。
迎えに来た彼のうしろを歩き、コーヒーでもと立て看板が置いている建物に入ると、2階に上がりテラスへと出る。2人掛けのブラウンのラタン編みのソファーの背もたれと座席が白いクッションになっていて、ソファーの前には同じ長さのガラスのテーブルが置かれている。テラスの柵はガラスになっていて、湖と紅葉を楽しめる。
「座っていて、今飲み物持ってくるから、何飲む?」
「カフェラテがあれば」
「分かった」
彼が店内に戻ると、ソファーに座り景色を眺めていた。
しばらくすると、彼がコーヒーとカフェラテが乗ったお盆を持ってきて私の目の前に置き、私の横に座った。
ほかほかと湯気が立ち上がり、カフェラテが入っている白いカップに砂糖を入れかき混ぜる。隣にある同じく白いカップには、ブラックコーヒーが入っている。
「健吾さん、砂糖とミルク入りますか?」
「いや、このままでいいよ、ありがとう」
彼の前にブラックコーヒーを置き、私は白いカップを両手で持ち上げカフェラテを飲む。
ふぅ、とひと息つくと、白いカップをテーブルに戻し、私の右横に座る彼の胸に身体を寄せた。躊躇う事もなく私の肩に腕を回し、身体を引き寄せる彼。
「…他の人にバレちゃうかな」
と独り言のように言う私に、
「ここは穴場だから…それに誰も2階なんてみないだろう」
私の髪を撫でながら、背中まで伸びる髪を弄る。
2人のひと時がまったりと過ぎていく中、もうすぐ集合時間になる頃がやってくる。
「…次の予定は何だっけ…えっと、お昼を食べてお土産屋さんを回ってホテル…でしたよね?」
「確かそうだね」
離れ難く動こうとしない私を咎める訳でもなく、変わらずに背中を摩る彼。
「そうだ、このまま帰ろう」
と急に言われ、顔を上げた。
「帰るって?」
困惑な顔をしていたのだろう、彼はフッと笑うと
「そのままの意味、体調不良の君を近くに居た私がホテルまで送り届ける」
そう言って私の顎に手を置き、顔を近づける彼の口づけを受け止めた。
タクシーで並んで座りホテルの名を彼が運転手に告げると、座席の背もたれに頭を乗せ窓の外を眺める。
「では、部長、すいませんがよろしくお願いします」
「いいよ、幹事の君は離れられないしね」
タクシーの窓を下げ、にこやかに幹事の人に告げる彼は、
気にしないでと頼もしく感じるが…
ーーうぅ…社員旅行なのに自分勝手な行動してるみたいで罪悪感半端ない
申し訳なさが、勝って黙っているとバスに乗り込んだ時からぐったりとしていたと認識されていた私は、幹事の方を向き
「すいません」
と久しぶりに出す声が弱々しくなってしまっていた。
「いいよ、ゆっくり休んで」
そう幹事の人が言うと、タクシーは出発した。
少し走り、角を曲がった頃に彼の手が私の右手に触れた。
前を見たまま指を絡め、無言のままホテルへと向かった。
自分の部屋に着くと、彼も入ってきて正面から抱きしめられる。
「まだ眠い?」
「少しだけ…でも今は幸せな気持ちが勝ってる」
彼の肩に頭をつけて胸いっぱい彼の匂いを吸い込む。
「それは…俺といるから?」
くくっ…と揶揄いを含み笑う彼に腹が立って、
「もちろん、そうだよ」
とぎゅっと抱きつく。
「光栄だなぁ」
と惚ける彼の声が頭上から私を包んだ。
少しの間だけ寝ていて、と告げた彼は連絡事項があると部屋から出て行った。私のルームキーを持って。
仕方ないのでまだ使われていないベッドに座ると、ベッドのスプリングが気持ちよくて、身体を横にしてそのまま気を失うように眠ったのだ。
カタッと音がして起きると、彼が私を眺めながらソファーで備え付けのインスタントコーヒーを飲んでいた。
「ああ、ごめん、起こした?」
「…いえ、今何時ですか?」
いつの間か、布団が身体にかけられていて、暖かくて眠ってしまっていたようだ。
「今は14時だね…起きれる?」
「はい」
ベッドから足を下ろし、靴を履くと彼の元へと向かい、手を差し伸べる彼の手を取り膝の上に座った。
横抱きで彼の腕の中へと入ると、彼の匂いに包まれた。
「このまま瑠璃は、具合悪くて帰る事にしたよ」
さらりと告げられた、決定事項に耳を傾ける。
「…私がですか?」
「そう、だから荷物を持って、私の部屋に…と思ったけど、誰かくるか分からないから邪魔されないように上の部屋を取ったよ」
くくっと笑う彼の顔は、どうも話が見えない。
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