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プロローグ
しおりを挟む「マリア・スワローズ!貴様との婚約破棄を言い渡す!」
華やかな舞踏会で響く、この国ーーアンジェラル王国王太子は声高々にそう宣言すると、オーケストラによる音楽も止まり、談笑していた人々も突然の出来事で戸惑い成り行きを見守る様に口を閉ざすとシーンと静まり返る会場
舞踏会の中心で友達と卒業の労いをしていた私、マリア・スワローズは驚きで目を見開き、王子を見ることしか出来ない
スワローズ公爵家の長女にして、アンジェラル王国王太子の筆頭婚約者候補であり、他の候補者数名と王妃教育を学んでいた
国王陛下と王妃のお気に入りで可愛がられていたが、正式な書面を交わした事はなく、あくまで候補だと思っていたマリアは困惑した
王妃教育の賜物で変な声は出なかったがまだまだ未熟者で、不意をつかれた感情が表に出てしまう
困ったように眉を下げ、大きく潤むエメラルドの瞳で王太子を見る彼女はキラキラと輝く銀色の髪を宝石を散りばめられた髪留めで緩くまとめ、耳と首元には代々スワローズ家に伝わる大粒のエメラルドの宝石が白い肌にアクセントをつける
胸元が大きく開いたプリンセスラインのドレスは、胸元からだんだんと白色からライトグリーン色のグラデーションに変わり、髪留めと、同じダイヤが装飾され見る者を魅了した
胸の膨らみを隠し、腰がキュッと締まっている彼女は学園卒業後この社交場に出てから憧れ羨望の眼差しを向けられていた
「…それは…どういう事でしょうか」
黙ったままでは、埒があかないと思ったマリアは王太子に問いかけた
返事をした事に満足しニヤリと笑うと王太子は「私は学園に入学してから真実の愛を見つけ愛を育み、ミナを妃として結婚する事を決めていたのに!貴様は私の愛しいミナを虐め軽蔑していたのではないか!」
ーー愛しいミナ…?
婚約者候補にもそんな名前の令嬢はいないし、誰のことか分からず視線を彷徨わせると、王太子の後ろにいる低い頭のピンクの髪は緩いウェーブが掛かっていて、庇護欲を掻き立てる雰囲気の可愛らしい令嬢がいた
さらに王太子の瞳の色ー金色のドレスを身に纏っていて、そういえば私が到着した時に王太子がエスコートしてると騒がしかったなと思い出した
「…王太子様…私はいいのです…王太子様と一緒になれれば…」
「…ミナ」
ウルウルと目に涙を溜め見上げる顔は、王太子様を見つめ2人の雰囲気を作る
ーー何これ…何を見させられているのよ
場が白け始めた頃王座から国王陛下と王妃の入場を知らせる音楽が鳴り始める
王座へ身体を向け頭を下げると追随する出席者たち
登場した2人は祝いの席だというのに、固い表情でお互いの手を取り座る
「めでたい席に出席感謝する、皆のもの頭を上げ共に喜びを分かち合おう」
よく通る威厳のある声が響くと、各々頭を上げ
招待客が成人する子供と一緒に国王陛下と王妃への挨拶のために移動を始める
マリアも顔を上げ、父を探すためキョロキョロとすると
「…話は終わってないからな」
と凄む王太子はミナを連れて人混みの中へいってしまったのだった
ーーそもそも国王陛下の側にいなくて良かったのかしら?
******************
婚約していないのに婚約破棄と、宣言された私は国王陛下の挨拶の後残るように言われお父様と城の控室に通され待つ
上品で豪華な室内にあるソファーに座りお父様と紅茶を飲む
しばらくすると、国王陛下と王妃、後ろには顔を真っ青にした王太子が入室した
「…国王陛下、王妃」
お父様が頭を下げ、それに私も続く
「この度は愚息が申し訳ない」
と開口一番に謝罪をする国王陛下
お父様は
「…我が娘はまだ婚約者候補だったはず、いつの間に婚約者になったのか教えていただきたい」
普段は温和な方の父が低い怒りを抑えて、王太子に鋭い眼光を向ける
私は一歩下がり手を前にして成り行きを見守る
「…それはっ…そのっ…父が」
普段物腰が柔らかいお父様とのギャップにしどろもどろになる王太子が国王陛下をチラリと見る
「これは意思の疎通が上手く…」
「…意思の疎通で、娘は大衆の前で傷つきました」
と国王陛下はフォローするが、お父様が遮る
シンっと静まり返る室内に、お父様はため息ひとつ吐き出し
「この騒動の解決を…そして娘のマリアの婚約者候補からの除外を望みます」
お父様が提案をし、国王陛下が了承し
私は晴れて王太子の筆頭婚約者候補から外れた
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