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フツメンと結婚したらストーカーだった件。

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昼田真希ひるたまき26歳
今日、私は結婚して山城真希やましろまきとなりました。


夫、山城慎二やましろしんじ30歳との出会いは、マッチング婚活アプリだった。

昔から結婚願望が強くて、早く結婚したかったのだけど、なかなかいい相手がいないし、仕事も忙しくなりこのまま結婚出来ないかも、と悲観していたら、親友のめぐみが婚活アプリやってみれば?と勧めてくれたのがきっかけだ。
登録完了後に表示された映画鑑賞趣味の似ている相手が、慎二くんだった。中肉中背で中小企業の社員だった。
ひと月アプリ内でやり取りして、会う事になって何度かデートした後に、プロポーズされトントン拍子で結婚が決まった。

「真希、段ボールはこの部屋?」
「あっ…うん、そう!」
入籍と同日に引っ越しをして、2人で住むマンションで荷解きをしている。
本当は婚姻届を出す前に、引っ越しをするはずだったんだけど、彼の予定と私の予定が合わなくて、結局入籍と同日になってしまったのだ。
引っ越し先のこのマンションは、私と慎二くんの職場からちょうど真ん中辺りで、値段も安く3LDKとオール電化の最新のキッチンに惹かれて住む事を決断したのだ。

「…ふぅ、一区切りついたから夕飯どうする?」
「そうだな…引っ越し蕎麦食べに行く?」
キッチンが片付いていない箇所を見つめ、慎二くんは外食を提案してきたので、あり難く頷く。
「うん、食品も買ってないし…外食行こう」
そう言って、軽く身支度を整えて2人揃って出かけた。



結婚して半年、順風満帆だと思っていたある日。

「おかえりなさい、ご飯にする?」
帰ってきた慎二を玄関に行き出迎える。
「…んっ?ああ、ただいま…ご飯にするよ」
ネクタイを緩め、心ここに在らずの慎二くんが私に鞄を渡した。
「…どうしたの?」
いつもとは違う雰囲気の彼に聞くも
「いや、別に…何にもないよ」
と洗面台に向かう彼の後ろ姿を見て、首を傾げた。

ご飯も食べ終わり、既に日課となっていた晩酌の準備を始めていたら、お風呂に入っていると思っていた慎二くんが私を背後から抱きしめた。
「っきゃっ…びっくりした…どうしたの?」
いつもはあまり接触して来ない彼の行動にびっくりしていたら、お腹に回る手に力が入った。
「…ん…別に」
肩に顔を付けて隠す彼の様子が、やっぱりおかしい…腕をあげて彼の頭を撫でる。
「…本当にどうしたの?…今日様子がおかいしよ」
じっと動かない彼が喋るのを辛抱強く待っていると、ふぅ、と息を吐いた彼が
「言うつもりは…無かったんだ、真希…いつ仕事を辞めるの?」
「仕事?どうして?」
仕事の事を言われるとは思っていなかった私は、素っ頓狂な声が出る。
「結婚したし、子供も欲しいって言っていたよね?」
ゆっくりとお腹を撫でる慎二くんの手つきが妖しい
「んっ…慎二く…ん」
「今日は、このまま、ね」
そう言って全てそのままにして、腕を引かれ寝室へと向かった。淡白な彼には珍しく、いつもよりも少しだけ前戯がねちっこかった。



*******************



仕事後、夕飯の買い出しをして帰宅した。
リビングに荷物を置くと、いつもは閉まっている慎二くんの部屋のドアが開いていた。
このマンションの間取りは3LDKで、私の部屋、慎二くんの部屋、2人の寝室に分かれていて、それぞれ持ち帰りの仕事をしたりテレワークをしたりするために設けた部屋だった。
個別に分かれた部屋で、私はプライバシーだからと慎二くんの部屋に入った事は無かったのだけど…

ーー昨日の様子おかしかったし…夜も…いつもとは違ってドキドキした

ポッと赤くなる頬に、ニヤニヤしちゃうのを叱咤し、そっと扉を開けると、6帖の部屋のカーテンに隙間があり夕陽が部屋を明るくしていた。
そろりそろりと部屋に足を踏み入れると、パソコンと机と椅子、壁一面の本棚に仕事用のファイルに自己啓発本、そして本棚の一角にあるDVD収納ケースと、背表紙に何のラベルもない青くて太いファイルがあった。
他はラベルがあるのに、と思い手に取るとファイルの間からハラリと落ちる写真。
床に落ちた写真を拾って見ると、

「!??何っこれ…!」

私の大学の卒業式の写真だ。しかも、カメラ目線じゃなくて友達と自撮り棒を使って写真のポーズを撮っている斜め後ろから撮られた、隠し撮りだ。
「見たの」
酷く冷たい声が聞こえて、振り向くと慎二くんが帰ってきていた。
「っ…慎二くん…これは…?」
無表情の慎二くんが怖くて、声が震える私。
「…その写真は、真希の卒業式の写真だよ…入り込むのは楽だったよ…スーツを着ていれば良かったしね」
「っ…どういう…事?」
「他の写真も見てみなよ」
と言われ、訳がわからないまま手元のファイルに視線を戻し、ファイルを開くと私の隠し撮りと思われる片面8枚の写真が全てのページに収まっていた。パラパラとどのページを捲っても、出勤途中のコーヒーショップでコーヒーを飲む姿、ただ歩く姿、前住んでいた部屋に帰る姿、買い物をする姿など、キリがない。しかも、そのファイルはおおよそ10冊ほどあり、ゾッとした。

「…何これ…私の…写真…だよね?」
「そうだよ、真希の写真だよ」
「何で?!どうしてっ」
ファイルを落としたが、構わずに彼を見た。
「何で…それは愚問だなぁ、ずっと好きだからだよ」
にこりと爽やかな笑顔を私に向ける慎二くんが、どこか知らない人みたいで後退る。
「…慎二…く…ん?」
「酷いよね真希はさ、俺の気持ち知っていて…出会い系を使うなんてさ」
一歩一歩進む慎二くんが、私に近寄り、私は一歩ずつ後退る。
壁に背が当たり、もうどこにもいけなくなると、私を囲うように立った慎二くんが私の髪をかき上げ耳にかける。
「でも本当に良かったよ、もし俺じゃなかったら…相手を殺していたかもね」
ふふっと優しく笑った彼の目が全然笑っていなかった事に気がついた。




くちゅっくちゅっと音がする。
貪る口は誰だろうと、ぼんやりと考えては舌を強く吸われる。
「んっんんっ」
顔の角度を何度も変えては、口内を暴れ回る彼の舌がねっとりと全てを舐める。
両手を壁に押し付けられ、ぴたりと密着する身体。
足の間に彼の膝が入り、ぐりぐりと蜜壺を服越しから刺激する。今までにない淡白だった彼との行為とは違う豹変に混乱する。
「っん…腕っ…離し…てっん」
「そう言って、さっき胸を叩いただろ」
そう、苦しくて息が出来ない程のキスに、息がしたくて胸を数回叩いたのが嫌だったらしい。
「っ慎二っくんんんっ」
私の抗議の声を口を塞ぎ封じ込める。
慎二はだんだんと私の両手をあげると、頭の上で左手でひとまとめにし、空いた右手でブラウスの上から胸を掴んだ。
強弱をつけて、ゆっくり揉んでは力一杯潰すようにギュッと掴む。色々な胸の形を変えていく動きに、嫌なハズなのに…
「んっぁ」
「気持ちいいの?」
首を傾け上がっている腕に顔をつける私の、無防備になった首筋に顔を埋め、舌を這わす慎二。
カッと赤くなる私の頬を、首を上下に舐める慎二がうっとりと眺めている事に気がついた。
「違っ」
「違くない…そう…今まで真希の好きな男に合わせていたけど、こんな可愛い真希が見れるなら、もっと早くにこうすれば良かった」
そう言って私の乳房の粒をぎゅぅぅっと摘む。
「っっつ!!」
急に痛みが全身を巡り身体を痛みから逃れるために屈めたいのに、手を掴まれたままで動けない。
痛みで涙がポロポロ溢れると、
「ああ、泣かないで真希…でも嘘はいけないよ」
顎を掴み上へと向けた慎二くんは涙を舐めとり、頬を撫でる。
「…真希は痛いのが好きなの?それとも気持ちいいのが好きなの?…………確認しないとね」


「くっ…んっ、あ」
蜜壺に入れてからずっと絶え間なく動き回る慎二くんの3本の指、かき混ぜたり、パラパラ動かしたり、クイっと折り曲げたりする度に蜜壺から溢れる蜜が、慎二くんの手や太ももに伝い、床に落ちる。
壁に背を預けたまま、同時に蜜壺を責める手と、乳房を舐められ吸われて噛まれ慎二くんの口の中で遊ばれる。
「気持ち良さそうだね、気持ちいい?」
耳を舐めながら問われ、否と答える。
「んっ…ん、気持ち、良くない…ぁっ」
すると指の動きがぴたりと止まり、じっと見られる。
蜜壺の中の指が動かなくなった事により、中途半端に昂られた身体が快感を求め、無意識に腰を揺らして指をきゅうきゅうに締め付ける。
「っん…慎二く…んっ」
「どうしたの?」
腰を揺らしてぐちゅっぐちゅっと蜜の音が聞こえるのに、動かない慎二くんを見上げた。
「っ…どうしてっ…止まるのっ」
「だって気持ちよくないっていったじゃん、真希には気持ちいい事だけしたい」
「っ…酷いっ」
潤む目で睨むと、低い声が返ってきた。
「気持ち良くないんでしょ」
「いゃぁ…動いてっ気持ちいい、気持ちいいからっ」
「……だから嘘は嫌だと言ったよね?」
ぐちゅぐちゅっと急にかき混ぜ始め私を責める彼。
「ああっぁぁっ」
背がのけ反り、突然再開した刺激が全身を突き抜け絶頂に達した。ぎゅうぎゅうに締め付ける指を慎二くんは抜き、カチャカチャとベルトを外し、下着から昂りを取り出すと蜜壺へ、ぬちゃぁ、と埋めていく。
「っっつ!!」
まだ快感で痺れている身体に、ミチミチと慎二くんの昂りが蜜壺に入っていく。
「っ…狭いっ…緩めてっ真希ぃ」
ズズッと蜜により滑らかに入る昂りを、蜜壺はぎゅうぎゅうに締め付け侵入を拒む。
「っ!無理っ…おっきいっ…ぁ」
ズンッと最奥まで一気に貫いた慎二くんは、腕を掴む手を解くと私の腰に移動した。上がりっぱなしだった手を下ろすと痛みが出たが、彼の首に腕を回し額を合わせた。
ちゅっちゅっと啄むキスが、舌を絡める濃厚なキスに変わるのに時間はかからなく、慎二くんの舌を求め積極的に絡めた。ズンッズンッとゆっくり打ち付ける腰の動きに、足を上げるとパソコンの置いてある机に当たる。足を机に掛けて固定すると、動きやすくなった彼の腰の動きが早くなった。
「あっ…あ、あ、ぁつ」
だんだん早くなる律動に、口づけの合間に嬌声が零れる。
「真希、真希っ」
余裕のない声に合わせるように、ガタガタッと机が揺れ、彼が私の肩に埋めると、ぐりぐりともっともっと奥へと入ろうと壁に押し付け、蜜壺内へ熱い証を叩きつけた。
「ぁぁぁぁあっ」
熱い証と私の肩に噛み付いた彼がくれた痛みに、頭が真っ白になって私も達した。



呼吸を整える間もなく繋がったまま、手を引かれ一度に離れた後くるりと身体を反転させられ、机に手をつけて背後から熱を取り戻した昂りが蜜壺に入ってきた。
「っっ熱いっ」
「好きだろっ」
休む間もなくお尻を突き出して、ぱんぱんっと肌がぶつかる音が響く。口がだらしなく開き嬌声が溢れて彼のくれる刺激に身を委ねたのだった。




どのくらい繋がっていたのかーー
気がついたら、床に仰向けになった私は、覆い被さる彼を抱き止めていた。私の蜜と白い証でぐちゃぐちゃに濡れた床が、冷たくて寒くなってきた。
「寒いな」
「…うん」
彼の肩に頭を預けると、彼の手が私の頭の下に入り頭を支える。頭を撫でられチュッチュッと髪にキスを落とす。
「…掴まって」
低い声が聞こえ、返事をせずに彼に抱きつくと、持ち上げられたので、彼の腰に足を巻き付けると、歩き出す彼が向かった先は、2人の寝室。
ベッドに降ろされ仰向けになった私の上に慎二くんが重なる。ベッドボードにあるエアコンのリモコンを付けた彼が、私の方へ視線を戻すと、頬に手を添えて親指の腹で目元を撫でた。
「愛してる、真希だけだ」
「…慎二くん」
「愛してるんだ」
泣きそうな顔の慎二くんに、胸が熱くなりドキドキする。
「…どうして…どうしてそこまで私…を?」
「真希は…覚えてないかもしれないけど、俺真希がバイトしてたコンビニの近くに住んでいたんだ」
「…大学生の時の?」
大学生3年の時、大学から数駅離れた所でコンビニのバイトをしていた。
「そう、そこで夕方見かける真希に一目惚れして…でも声掛ける勇気もなくて」
「それで…写真を…?」
「最初は真希を離れている時に見たくて、欲しかっただけだったのに、いつの間にか毎日撮らないと気が済まなくなった…そうしたら、真希と話したくなって…マッチングアプリを…真希と同じ趣味にしたんだ」
「じゃあ…映画鑑賞も嘘なの?全部?」
「それは違う、真希の趣味に興味が出て俺も観るようになった…真希のレンタルした物を中心に…だけど」


私のレンタルした物って…そう言えば大学の時はよくレンタルショップに行っていたなぁと昔を思い出していたが…
「…最近様子がおかしかったのはどうして?」
「………真希といると幸せ過ぎて、もっと一緒に居たくなった…残業あった日すら一緒の時間が取れないのに我慢出来なくなってきたから…さ」
「今繁忙期って言ったよね?」
「うん、わかっているけど、無理」
理不尽な事を言っているのを分かっている慎二くんは、私の肩に顔を埋めて、追及から逃げる。

「……言っておくけど、離婚はしないからね」
ムッと拗ねる声に、笑いが込み上げてきて、あははと笑ってしまう。
「…何」
更に拗ねた声で、私の肩から顔を上げ私を見下ろす彼。
「…普通は気持ち悪くて、離婚案件だけど?」
「それはない、だって途中からあんあん、喜んでた」
「っ!あんあんって!」
あからさまな表現に顔が赤くなる。
「愛してる、真希」
こんなに人から強烈な想いを告げられた事がない、私だけを愛してくれる彼の想いに胸がいっぱいになる。

私の方から彼の首に腕を回し、顔を引き寄せると、ちゅっと軽く触れるキスをした。


「…慎二くん……私も…愛してる」


目を見開く彼の顔が、じわじわと喜びの顔になり、ニヤリと笑い、手つきが怪しくなる。
「っ…慎二くんっ…もうったくさんしたっ」
慌てる私の額を合わせると、
「ずっと我慢していたんだ…前は一度に終わらせるの大変だったんだよ?」
そう言った慎二くんの瞳が仄暗く、陶酔していたのだ。






数ヶ月後ーー
妊娠した私が仕事をセーブして、自宅にいる時間が多くなると、家の中なのにカメラの設置が始まり、トイレにも付けようとした時には、流石に泣きながら「付けたら絶対に離婚する!」と訴えたら渋々諦めてくれた。


その代わり、と言って家の中に居てもパシャパシャ写真を撮らせてあげる事にした。

だって、


ーー真希を撮らないと落ち着かない

言われた時の真剣な表情が、すごくカッコよくて見惚れてしまったから。


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